のらえもんxはるぶー対談その3「令和版7000万の壁? enecoQの評価って?」

スムログにたくさんお寄せいただく読者様からの質問のうち、未回答のものを編集部にてピックアップしてお送りしてきたのらえもんさんはるぶーさんの対談のフィナーレです。それではどうぞ!

目次

  1. この座談会に参加したメンバーは?
  2. 対談
  3. 最後に

この対談 に参加したメンバーは?

のらえもんさん

マンションアナリスト、ブロガー、インフルエンサー。マンション購入ということに真正面から真剣に考えたブログを足掛け10年も運営しました。忙しくなりすぎて更新が滞りがちですが、スムログも引き続きがんばります、よろしくお願いします!
運営ブログのらえもんブログ

はるぶーさん

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

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対談


令和版7000万の壁?

のらえもん
はい。じゃあ次「トミカ」さんから

ペンネーム:「トミカ」さん

【質問】はるぶーさんの2014年のブログで、実需でローン組んで買う層には7000万の壁があるという記事がありました。これを2022年でアップデートしたらどうなりますか。
というのも、私その層の30代サラリーマンで、知り合いのペアローン実需層も数年前は6000~8500万くらいの物件を購入する夫婦が多かったのですが、最近会社の後輩複数名が1億~1億2000万物件を購入したことを知り、少しびっくりしています。いずれも20代後半(1人だけ前半の独身中国人)で、配偶者もサラリーマンです。援助は特に受けていないそうです。この間、我が社の給与水準はほぼ変わっていません。
このグロス価格が徐々に波及するなら、今のうちにまだ安いファミリータイプ買おうかと思いますが、どうでしょうか。

のらえもん
はるぶーさん責任とってくださいよ!
はるぶー
「7000万円あたりに壁が意識されていた」っていうのは私がよく見ていた当時の湾岸あたりで間違いなくそうだったんですよね。例で言うと、ザ東京タワーズとかは角部屋の方が中住戸より坪単価が安かった。絶対7000万を越さないように。あとは芝浦アイランドのケープタワーなんかもそうでしたよね。

角が 100m2で7000万程度までにつけていたので、確かに「壁は昔あった」んですよ。でもいま首都圏のマンションの平均が 7000万を超えちゃってますから、そこに壁があると言っても確かにね。みんな普通に 8000万とか 9000万で買えるようになったのか?私よくわかんないからちょっとのらえもん先生の見解を聞きたいかなってところですよね。
のらえもん
低金利が更に進行したのと、夫婦正社員の共働きが増えてるんです。1人5000万円ずつ住宅ローンが組めるのだったら、1億円のマンションが買える。 1000万円貯金があって更に 1000万円の援助を親から受けたら1億2000万円の物件だって買えます。
会社の若手、20代後半から30代くらいの女性に聞くと、もうみんなフルタイムで働くつもりでいます。

夫婦正社員の共働きで合算


はるぶー
なるほど。
のらえもん
一生働く気でいる。子どもが出来たらもちろん預けて外に働きに行く覚悟を決めている。昭和の「サラリーマン夫に専業主婦」というモデルケースの方が少なくなったんですよ。
はるぶー
そうか。仕事辞める気がなくなって、「保育施設とか使いながら頑張って一生働くぞ」っていう人が増えてきたのは事実だと思うんですよ。
のらえもん
「家のために働く」という悲壮感はなくて、もはや「フルタイムで働かない選択肢が無い」って感じ。昭和の価値観と令和の価値観は全く違うんです。
はるぶー
多分そうでしょうね。逆に言うと今ってどうなんだろう。その昔は「値段が1割上がると買える層は1割細る」みたいな話って良く言われたことなんだけども。

昔7000万を超えそうになってた時期、どんどん値段が上がってきた時は、普通に80平米ぐらいあったのを「なんとか面積を少し狭めにして70から60平米台で凌いでる事例」が増えてきてました。

そういった形でなんとか「坪単価は上がっても”グロス価格”はあんまり大きくしないように」って意識は今でも一応あるんだと思うんですよね。今ってどっかに壁があるんだろうか?無いんだろうか。1億から上とか。
のらえもん
壁っていうよりも「エリアの壁」っていうのは意識されてると思いますよ。「このエリアで 7000万円で買う人がいるかどうか?」とか。
はるぶー
中古だったら1000万安くて、ちょっと地区の中心から外れたら更に1000万安いとか。中古でちょっと不人気地区だったら 5000万だけど、豊洲の真ん中のタワーだったら 7~8000万とか。いろいろ中古とも含めながら見ていって全体として相場が形成されていってるっていうのはあるので、ま今は「7000万が壁」と言っててももう「過半のマンションがそれを超えちゃってる時代」ですから。「あのこれは10年前の話ですね。」というしかないですよね。

理由は「明らかに夫婦とも働くようになった」っていうのと「金利が下がった」っていうこと。さらにあともう1つ、30歳ぐらいでも「技能給みたいな形で非常にスキルのある人」に対してはメリハリがついてきてるってこと。

日本人全体の給料の平均値は下がってるけども「30そこそこぐらいで1000万以上もらってる人」が増えてきてる。昔はそんな待遇あんまりなかったんだけど、今は「しっかり給料払わないと他の会社に取られちゃう」みたいになってる。

「スキルのある人に対しては、若くてもちゃんとお金を払うようになってきてる」っていうのは大きいと思うんですよ。マンションを買う人は基本は若いんだから。




enecoQの評価って?

のらえもん
次は「もうすぐ春ですね」さんから。

ペンネーム:「もうすぐ春ですね」さん

【質問】もう間も無くプラウドの引き渡しを控えております。
そこで気になったのがenecoQの評価についてです。
マンション一括で電力を購入しててインターネットとセットになってるくらいの認識なのですが、果たしてどこまでメリットがあるのでしょうか。
一括だからお安くなるという理屈なのですが、縛られるデメリットも大きく感じます(通信キャリアとのセット割なども今は多いですし)
あと本当に安くなるの…?品質は問題ないの…?等も疑問です。

他デベのマンションでも同じようなものがあるのか分かっていないのですが、このようなサービスの評価について教えて頂けると幸いです。
営業に聞け!ということかなとも思うのですがあまりデメリットの説明もなく、ネットでもあまり評判がHITせず気になっています。
よろしくお願いします。

のらえもん
これ複雑になりそう…一括受電の話ですが、いかがでしょうか?
はるぶー
「需要増やLNGの在庫不足」で日本卸電力取引所(JEPX)での取引価格が跳ね上がって、「自前で発電能力をもたない新電力」が逆ザヤになって大赤字を出したのが、昨年の1月。倒産とか撤退が相次いで「共用部の電気を新電力で契約しているマンション」も影響を受けました。

最近電気代がずっと上がってきているから、「少しでも安く」と管理組合も望むわけですが、「自前で安定的な発電能力をもたない会社相手の契約」はリスクが大きいですね。
のらえもん
ちょっと前、JEPX連動プランで契約していた人の電気代が大変なことになって大騒ぎでしたね。
はるぶー
高圧一括受電はそれとは違って「マンションまるっと電気を一括契約(高圧契約)」し、その電気を低圧に変換して各戸にも配るものです。契約相手は関東なら配電網も含めて東電ですから、新電力と違って「もともとの電気を誰も売ってくれない」というリスクはありません。

高圧と低圧の電気代の差は、過去50年以上とかの長期でいつもコンスタントなので、それを利用している高圧一括受電は、電気代の変わり方も元の電気会社と同じになる(燃料調整費が上がれば一括受電の値段も上がる)一方で、JEPXの値段が高騰したからといって会社が破綻するということはありません。

デメリットは「マンション全戸で同じ会社と契約しないといけない」ことです。ご指摘の通り通信キャリアとのセット割引は難しくなります。そして全戸に「今の電力会社との契約を解約してもらう承諾」をとらないといけません。小売り自由化のあとではこれは特に至難です。

メリットは、電気代に換算するとだいたい月1,000円ぐらい浮くことですね。

私のマンションも一括受電なのですが、500戸ちょっとで1戸あたり月1,000円、年だと1万円ちょい、東電と契約しているよりも「マンション全体としての電気代」が安くなってます。

ただ、それをどう分配するかっていうのが実は難しい話なんです。「その家の電気代に戻してあげるタイプ」と「共用部の総取りタイプ」の2つがあるんですが、「各々の家に返しても大変な苦労の割に1円にもならない」から、理事会発案の導入ではたいてい「共用部の総取り」にするんですよね。

大きなマンションだと共用部分はもともと高圧で受電しているので、移行しても安くはなりません。「移行の結果安くなった専有部全戸の恩恵」をかき集めて共用部の電気代の割引に充てていることが多いわけです。

逆に最近の新築で多い設定が「その部屋(専有部)の電気代が安くなるタイプ」で「割引が5%くらい付く」っていうもの。購入検討者に対して「管理組合にお金が入ります」って言っても「なにそれすばらしい!」って刺さらないから新築での導入だと「部屋の電気代に直接還元」しているパターンが多いんですよ。
のらえもん
ちょっと話を整理しましょうか。前提として「マンションに変電所が付いてる」んですね。マンションが電気を高圧一括契約して、それをマンション内の変電所で低圧に変換して各戸に配ってる。まとめたから戸当たり月1,000円くらい安くなるけど通信キャリアとのセット割はやりにくくなる。そして安くなった分は、「理事会発案だと共用部」、「新築だと各戸5%割引」になることが多い。
はるぶー
規模によって受けている電圧とかは違いますが、ある一定規模であれば「変電施設を収めた部屋」はマンションに必ずあって、首都圏だと大抵は「東電借室」なんて名前がついてます。

なので他社への乗り換えは大変です。変電施設そのものの交換になっちゃうので、一旦契約すると10年から15年は変えられないです。1年2年で解約されちゃうと変電施設の交換費用で完全な赤字になっちゃうんですよね。なのでかなり高額の解約ペナルティをつけるのが普通です。

新築で一括受電を導入することが多いのは、「初期費用を建築コストにまぶすことができる」のと「始めから全戸の一括受電契約の承諾が取れている」ということが理由です。

既存マンションでも頑張ると「住戸の電気代1割引き」はいけるから、本当は新築でも「最低1割引きくらいはいける」はずなんですよ。でも実際の割引率は 5%くらいしかない場合が殆どです。

差の5%はつまり「誰かが抜いてる」んですね。最近もうマンション売っても儲からないから、「少しでもどこかからいただこう」という形なので、契約している人も「損はしてないんだけど、デベにかなり抜かれてますよ」っていうのがまあ実情だと思います。
のらえもん
ここまで話しますかね?
はるぶー
「東電など元の会社と比較して5%引き」っていうのは、個人でも結構いける割引率なんですよ。携帯やネットの会社と同系列で揃えるとかすれば、5%割引は自分でも達成できちゃう。魅力的な割引率とはもう言えないです。
のらえもん
それいっちゃいますか(笑)。enecoQってのはどこの会社でしたっけ
はるぶー
野村系ですね。
のらえもん
野村系ですね。「プラウドのみ 」ってことですよね?なるほど。それにインターネットも一括で付いてくると。
はるぶー
なるほどね。一括受電の最大のデメリットは他の会社には絶対変えられないことですね。
のらえもん
そうですね。自分で東京ガスの電気に変えるとか au でんきに変えるとか。そういうのができなくなったことですね。
はるぶー
だから、自分で探しても「そうそう簡単には勝てないぐらいの割引率」がなければ「みんなが納得」はしないんですよね。
のらえもん
うん、そうですね。
はるぶー
で、それから比べると新築での導入事例に対しては、「自分で交渉して持ってきたのに比べると割引率が少ない気がするね」っていう感想を持っているわけです。
のらえもん
わかりました。ありがとうございます
はるぶー
一方で確かに「何も意識させないで自動的に安くなってる」わけで、「安いっていうのは嘘じゃない」わけです。しかもそれがいわゆる「新電力系とかで卸市場使ってるところ」と違っていきなり、1kWh 100円とかで電気を買わされる心配はないわけですよ。

安心は安心ではあるので、まあ「高圧一括受電が入ってたからそのマンションは買うのやめとけ」とかそういう世界では決してありえない。
のらえもん
もう1つ。「新電力だと品質は問題ないの?」という疑問の質問については。
はるぶー
新電力でもなんでもどこが作ったかと関係なくって、太陽光メインの会社とかなら「曇っただけでその時間は発電は全滅」ですよ。市場で買ってくるしかない。ただ「送電網は東電のものを使ってる」わけで、地震とか広域の電力の不足で停電する時は「どのみち全戸落ちる」からリスクはほぼ同じだと思います。
のらえもん
補足すると、みなさんのお部屋に配っている電線は首都圏だと「東電パワーグリッド」が管理して供給しています。この送電線は一本ですから、通る電気に東電の発電所、新電力の発電所、JEPX から買ってきた電力なのかの色はありません。つまり、「契約によって品質の差はない」ってことです。
はるぶー
うん、元々東電だったほら、この間、福島の方で地震があってやべえやべえとか言ってたから停電になりそうになってるとか。あれもでかい電力会社ですが、それ同士がお互い同士でやった合弁会社から買ってたりするわけですから。「東電なら全部自前」というわけでもない。どのみちやばいっちゃやばいし、やばくないっちゃやばくないです。
のらえもん
ということで、以上です。はるぶーさんありがとうございました!
はるぶー
できるだけ単独指名の質問には答えるようにしていましたが結構溜まってましたね。お返事が遅くなりましたが、まとめてお便り返しができてよかったです。
のらえもんさんまとめ役ありがとうございました。

最後に

全3回でお送りした、のらえもんさんxはるぶーさんの対談コンテンツはいかがでしたでしょうか。スムログ読者さまのご相談にお答えする対談コンテンツ、次は誰の対談になるでしょうか?どうぞお楽しみに!

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