このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています。
1階住戸しか残っていないというようなタイミングにおいて、それを検討していて踏み切れないという人へ、また、子育ての都合から1階が良いと判断して前向きに検討する人などへ、本稿が少しでもお役に立てれば幸甚です。
●売りにくい1階住戸。そのわけは?
インターネットの掲示板から拾ってみました。(その1)台風の際に床上浸水しました(泣)。少し離れたところに川があるのですが、そこへつながる排水管がオーバーフローしてしまい、お風呂から水が逆流してきました。
もうね、これは経験してみないと実感わかないでしょうけど、すんごい修羅場ですよ。家の中が完全に川状態。
その後も大雨が降るたびに庭や玄関に土嚢を積み、会社も早退しなければいけなかったり、精神的に疲れはてて手放しました。
幸い、なんとか売りぬけましたが、普通はまず売れないでしょうね。
首都圏はコンクリートが多く、この異常気象続き、都市型災害はこれからも増える一方です。
あと湿気がすごくて押入れや畳がしょっちゅうカビってました。 除湿器なんてあっという間に満水ですよ(笑)
(その2)今ひとつの所:我が家は全員、朝早く家を出て夜帰宅するオトナばかり;平素の眺望などは気にしない生活です。広い空や遠くの山が見たかったら、旅行に出かけます。
でも、家にいる時間の長い方や、ときおり公道からテラスを興味津々に見下ろしている通行人の視線に耐えられないようなタイプの方には向いていないかも。
(その3)都市型洪水対策も計算しつくされているので(友人の一級建築士に確認してもらいました)大雨も安心、カビもゴキブリもついぞ見かけません。
口コミはこのくらいにします。
普段でも1階住戸は特に売りにくいことから、マンション不況の折には、マンションメーカーも随分知恵を絞ったものでした。
和室があれば掘り炬燵を設けたり、畳1枚を電動で持ち上げて収納スペースとしたり、オーディオルームなどとして使える地下室をつくったりしたものです。中には、核シェルターになる部屋をつくった例もありました。また、北側の玄関を勝手口にし、南の庭側に表玄関を設けたタイプもありました。
庭に離れの部屋を設けたユニークなプランもありました。
そんな中で今もポピュラーな形態が、「専用庭付き住戸」や「専用駐車場付き住戸」などです。一方、定番になりかかって、その後消滅したのが、「掘り炬燵付き和室」と「深さ1メートル余・広さ4.5畳余といった大型床下収納付き住戸」でした。
1階住戸は何故売りづらいのでしょうか?以下のようなデメリットがあるためと考えられます。
1)寒い・・・1階住戸は断熱材を入れて対策しているのですが、サンドイッチ住戸(上下左右にお隣さんがある家)のような効果は出にくいのです。
2)防犯面の不安がある・・・防犯センサーを窓に取り付けてあるので、外部侵入があれば直ちに防犯ベルが鳴り響き、管理人や警備員が駆け付けるようになっていますが、戸締りの心配が少ない上階とでは心理的負担の差は小さくないのです。
3)プライバシーの確保が難しい・・・庭側に垣根を設けていますが、人通りのある道に面しているような位置関係にあると、いつも覗かれる心配をしなければなりません。
4)日当たりが悪い・・・前方にアパートなどの既存の建物があるケースでは、接近度合いによって日照状態が懸念されるのです。
5)眺望がない・・・もう語るまでもなく、遠くを見渡すことができる1階住戸は傾斜地に建つ特殊なもの以外ありえません。
●1階住戸の付加価値となるもの
少し重複しますが、売りにくい1階の弱点を長所で補うべく登場した数々のアイディアを整理しておきましょう。1)専用庭+テラス
レ・ジェイド武蔵野レジデンスの新築物件HPより
(画像:グランドメゾン鳥飼テラス=福岡市 新築物件HPより)2)床下収納
ご承知のようにマンションの床下は、1階住戸を除いて下の階に他人の家がありますから、収納スペースを設けることは殆んど不可能です。しかし、稀に設置できるケースがあります。それは下の階の天井が深い場合です。深いと言っても、せいぜい50センチ程度です。それ以上深く取ることはコスト面で困難だからです。採用する例はレア中のレアです。
以前、全階のキッチンに床下収納というプランに遭遇しましたが、見せてもらって失望しました。無理をしてつくったもので、何と缶詰・ビン詰が1段の高さで入る程度の深さ(約8センチ)しかなかったからです。まあ、ないよりはマシという程度のものでした。やはり床下収納を設けられるのは、1階住戸に限られます。
(画像出典:LIXIL製品カタログ集)
3)地下室
かつて、写真のような体ごと入って出し入れできる深い床下収納付きマンションがありました。深さ140cm程度のカプセル型もありましたが、製造を中止したとのことでした。ワインセラーとして使っている例(画像出典:iemo株式会社)
4)掘り炬燵
和室付きのマンション自体が少なくなっていますが、冬は第2リビングとして家族団らんにうってつけではないでしょうか?(画像出典:iemo株式会社)
5)専用駐車場
前面を公道が通っていて敷地に余裕があれば、専用の駐車場スペースが取れます。買い物帰りはキッチンから直接出入りができる下図のようなプランは悪くないと思うのですが、駐車料金が高いためか人気はもうひとつとも聞きます。(画像出典:SUUMO関西)
(画像:株式会社住まいの研究室)
6)離れ付き(画像は半地下物件のものです)
離れ付きは少ないこともあってか、最近(2015年)マスコミも取り上げたと記憶しています。(画像出典:三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上鷺宮」の物件HP)
●プラスとマイナスを天秤にかけて判断する
以上のように、プラスアルファの価値を設けることが可能な1階住戸なのですが、昨今のデベロッパーは商品企画に対する情熱を失ってしまったかのようです。推測ですが、コスト削減が大きな課題として立ちふさがり、建築費のネゴシエーションを懸命にやっても予算を超えてしまうため、最後はあれをやめよう、これも削ろうとなってしまうのでしょう。
1階住戸の付加価値で最後に残るのは小さなテラスと専用庭だけ、それが最近の現実なのです。
付加価値が少ない1階住戸が価値あるものと意識されるとしたら、結局は価格の安さのみです。
売主デベロッパーも、そこは心得ており、1階住戸の価格は上階より大きく下げるのが普通です。ところが、そうしても1階住戸は不人気で、いつまでも売れずに残ったりします。
それは、買い手が住戸同士の比較作業の過程で対象外にするか、対象に上げても「やっぱりやめよう」になるわけで、「これだけ安いなら魅力だよね」などと迷わず買ってくれる人がいなかったことの証左と言えます。
つまり、安くしたにも関わらず残ったのは、市場に割高と判断されたことになります。
売主は、仕方なく値引き販売に踏み切ります。
意中の物件をお持ちの方は、こうした動静を観察しながらタイミングを見ながら決断なさるとよろしいでしょう。一度は1階住戸に関心を示し、売り手(営業マン)に印象を残す、先方の記録にも残しておければ、価格を引き下げるときは真っ先にメールが来ます。「キャンペーンのご案内」とか、「モデルルーム1階住戸××㎡〇〇万円」などと。そこまでチャンスを待つのも一手です。
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