第20回 湾岸エリアが供給過剰?でも心配は無用?

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五輪関連で人気急上昇の東京湾。中でも選手村が徒歩圏にある中央区晴海エリアや競技施設に近い江東区有明、豊洲などでは大型マンションが次々に売り出されました。

 

1棟のマンションで1400戸を超えるものを筆頭に、大型タワーマンションばかりでした。

こうした動向を見て、湾岸エリアは新築マンションの供給が過剰ではないかという声も聞こえて来ます。今後も大量供給が続くという情報を聞きつけてか、購入を既に決めた人も先行きを案じているようです。

 今日は、マンション供給の地域的な偏りの問題について触れてみようと思います。

 ●湾岸エリアの大量供給計画は本当か?

どのような調査方法か明確ではないのですが、湾岸エリアでは、2020年までに少なくとも10,000戸、最大30,000戸のマンション供給計画があるのだそうです。

 

湾岸とは、江東区の豊洲、東雲、有明、中央区の勝どき、月島、晴海など、港区を含めると芝浦や海岸といったアドレスになりますが、このうち晴海にはご存知「オリンピック選手村」建設用地があります。

 

選手村は23棟の中高層マンション5600戸が建てられる計画で、このうち賃貸用1500戸を除く約4100戸がオリンピック終了後に民間企業に譲渡され、分譲マンションとなりそうです。

 

現状、広大な空き地になっている有明方面では、住友不動産などが所有する土地があり、商業施設・マンションを含む複合計画が進行中と伝わって来ます。

 

仮に向こう5年で20,000戸くらいが供給されるとしたら、年平均は4,000戸ですが、これは23区の最近の年間供給戸数(2011年~2015年平均)約21,000戸の20%を占めることになります。湾岸エリアだけで20%というシェアは23区の中で突出した戸数となります。

 

ちなみに、過去5年の江東区と中央区全域の戸数でも、20%に達していない(18%)のです。

この実績から推せば、確かに供給過多と言わざるを得ないのかもしれません。

 ●湾岸エリア以外で供給がなければ、需要は湾岸に向かう

言うまでもなく、人の好みや条件は様々です。

タワーが嫌だという人(湾岸はタワーマンションが殆ど)、埋め立て地は怖いという人、中央区はいいが江東区は嫌という人、豊洲はいいが有明は嫌だという人、有楽町線はいいが大江戸線は不便だという人、実家が西の方なので東京の西部エリアを望む人、長らく内陸部で暮らして来たので、湾岸エリアは馴染めないという人等々。

 

しかし、好むと好まざるとに関わらず、湾岸は新築マンションの供給の中心になることが確実です。内陸部にはマンション建設に向くまとまった土地が少ないからです。

 

湾岸は、倉庫や配送センターなどの広い敷地が多いので、おそらくは大規模マンションが大半で、付加価値の高い物件が供給されることとなるでしょう。また、競争の激化から、一段と差別化策を講じることとなり、価格も抑制気味となる期待を持てるかもしれません。

 

筆者は、決して湾岸エリアをお勧めするものでもありませんし、タワーマンション推奨派でもありません。しかし、今後も内陸部で需要に見合うだけの供給が行なわれるかというと、こちらは難しいと言うほかないのです。

(次回その説明をしようと思います)

 

既に湾岸エリアで購入した人・居住中の人に、供給過多によって自宅マンションの価値が低下するという心配は当たらないと伝えたいのです。

 

無論、売却のタイミングや短期的な市況の変化などで価格の上下はあり得ることをお断りしておきます。

 ●豊洲の街は10年で人口が3倍に増えたが、どこから来たの?

近年「キャナルシティ」として人気となった豊洲は、10年で人口が10,000人から30,000人に膨張しました。

 

倉庫跡地などを中心に、次々と分譲・賃貸マンションが建てられ、新住民がどこからか移住して来ることとなりました。

 

正確なデータは持ち合わせていませんが、豊洲のマンション購入者は地元江東区民、近隣区民が中心ではあるものの、首都圏広範に散らばっているという情報です。

 

普通、マンションを購入する人は、現住所に近いとか同じ沿線にある、親族が近くに居るといった何らかの地縁性によって物件を選択する傾向が強いのですが、豊洲を選択した人の多くは全くの無縁だったと聞きます。

 

多いのは江東区であるとしても、その比率は30%程度で、残りは他区・都区外なのです。10年間に増えた2万人の内、14千人は外から来たのです。

 

その人たちがなぜ豊洲を選んだか、豊洲の将来性に期待したのか、既に表し始めた美しい街並みや新設ショッピングモールの存在などに魅力を感じたためなのか、あるいは現住所の周りに適当な物件がなかったからか、理由は様々ですが、知らない街に移住して来た人が多数いたというのは事実です。

 

豊洲に限りません。25年前にはIHI(旧・石川島播磨重工業)の工場だった中央区の佃島には、高級タワーマンションが林立していますが、ここ住む人の前住所は広く拡散しているに違いありません。

 

芝浦に飛ぶと、山手線の田町駅から徒歩10分ほど歩いた所に芝浦アイランドがありますが、ここは製糖工場や、都電の車両工場と操車場、東京都下水道局のポンプ場、都営アパートなどがあった場所でした。再開発され、今は大規模なタワーが4本(内2本が賃貸)建ち、全く別の美しい世界に生まれ替わりました。

 

田町駅の内側(西)に目をやれば、三田綱町などの高級住宅街や慶応義塾大学の三田キャンパスなどがあり、好イメージのエリアですが、外(東)は、どちらかと言えば運河と倉庫街のイメージを持っている人が多かったに違いありません。

 

そんな場所だったせいか、芝浦アイランドは価格を抑えて販売されました。1700戸もの数を地元民だけで売るのは困難と見たからです。実際、環境に抵抗感があった人も多かったと聞きます。しかし、購入を見送った人は後悔したそうです。こんなふうに変貌するとは思わなかったというのです。

 

この開発計画で、マンション販売事業は成功裏に終わりました。方々からたくさんの人がやって来て大量に購入してくれたからです。

 

このような実例を挙げるとキリはありませんが、東京は面的な移動距離の長さは仕事で経験済みという人も多く、東京都民が埼玉県に移住したり、神奈川県民が東京都民になったりというのは歴史上も普通のことと言えるかもしれません。

 

思い起こせば、筆者も横浜、川崎、世田谷、渋谷、大田と引っ越しを繰り返して来ました。住み慣れた街を離れることに抵抗はない方でした。生粋の江戸っ子ではないからでしょうか?

 

いずれにせよ、希望するエリア、慣れ親しんだエリアを飛び出せる人は都区内、周辺地域にたくさん潜在しているのです。

 

港区の内陸は無論、渋谷区、目黒区、世田谷区、大田区の一部、あるいは杉並区などには緑が多く閑静な住宅地と言われる街がたくさんありますが、そこにマンションを建設できる広い敷地は少なく、駅単位で見れば200戸を超える大規模マンションは数年に一度の割合でしか見られないようになりました。

 

いくら待っても、近隣で新築マンションが売り出されることがないと嘆くことになってしまったというわけです。

 

こうした背景からみて、湾岸エリアのマンション供給が過剰となっても、全東京的に見たら、決して過剰ではないと分かりますただし、価格が上がり過ぎれば買ってくれる人は減り、新築マンションが大量に売れ残ったり、中古市場に滞留したりすることがないわけではありません。

 

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