このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています。
売買価格が1億円を超えるものを「億ション」というわけですが、その億ションにもランクがあります。筆者が勝手に決めただけの区分ですが、最近の価格高騰を踏まえて線を引けば3億円以上が「スーパー億ション」、それ以下が「億ション」となりましょう。
今は、サラリーマンでも共働きで世帯年収が2000万円以上という例は珍しくないうえ、住宅ローンの金利低下が手伝い、億ションを買える階層は増えています。
億ション一歩手前の購入者は、購入したマンションが値上がりして億ションになる期待を膨らましながらも半信半疑と見えて、よく尋ねられるのは「どのような人たちが買うのですか?」です。
億ションを買う人って、どんな人?これが今日のテーマです。
●億ションにもランクある
「スーパー億ション」でなく「億ション」にも、実はランクがあるように思います。億ションらしくない億ションがあるからです。具体の物件名をここで明らかにするのは憚りますが、極端な言い方を許してもらえれば「ありきたりのマンションの中の億住戸」というだけという例もあるのです。そう言えば、25年以上も昔、バブル期のことですが、「なってしまった億ション」とか「結果億ション」という表現が誕生しました。
建物は中級だが、地価の暴騰によって価格だけが高級マンションの代名詞・億ションと同じ1億円を超えている物件を揶揄した言葉でした。不動産インフレを象徴する言葉でもありました。
今、再び都内各地で販売中のマンションの中に「なってしまった億ション」が登場しているということなのでしょう。
一部の住戸に留まっているので、バブル期のような極端さはないものの、原価(土地と建築費)の上昇によって「なってしまった億円台の住戸」が増えています。
不動産経済研究所の調査によれば、2015年に売り出された首都圏の億円の住戸は、1638戸もあったそうです。
さて、「なってしまった億ション」に筆者が感じることは以下のようなものです。
➀ 室内の設備・仕様は標準を超える上級ではあるが、最上級とまでは言えない。
② 共用部も上級ではあるが、最上級でもない
③ 上階の「プレミアム」住戸などに限定されている
④ ブランド地の隣町であったりする
➄ 都心のブランド地ではないが駅前立地である
これに対し、そもそもの高級マンションというイメージに背かない億ションとは、どのようなものでしょうか?整理してみましょう。
➀ 社会的に特別な階層が、ステイタスシンボルとして好む邸宅地に立地する
② 特別な仕様で造られた外観や共用部を持つ
(5つ星の高級ホテル並みの仕上げ材やインテリア、オブジェなどで飾られている)
③ 戸数の割にエレベーターの数が多く、駐車場は全て地下自走式かタワーリフト式になっている
④ ドアボーイやバトラーが滞在し、高額な管理費が設定されている
➄ 水回り部分も含めて全体的に天井が高い
⑥ 室内の設備・仕様のグレードが高い
(リビングルームは飾り天井が施され、いかにもシャンデリアが似合うとか、トイレや洗面室の床はタイル貼りか、多くは天然石仕上げになっている、壁の仕上げも高級感と上品さのあるデザインにこだわっている、設備もハイグレード、建具は高級な天然木材、ドアハンドルの材質・デザインも一級品を採用など)
⑦専有面積は最低でも100㎡以上と広い
このように、高級な億ションとは、建物が高級というだけではなく、そこに高級住宅地や邸宅街といった立地条件の特別な価値が加わって成立するものです。
街で言えば、千代田区の番町、港区の麻布、青山、赤坂の3A地区や六本木、三田、高輪、白金など、渋谷区では広尾、松濤、代々木などが該当します。
●不動産コレクターという名の富裕層
ところで、世界には途轍もないお金持ちが存在しますが、彼らの多くが古美術品や宝飾品などを金に飽かせて収集し、コレクションとして持ち続けると聞きます。決して転売目的で購入するわけではないというのです。それを眺めて楽しむとか、保有する喜びとか、永久に仲間入りできない筆者なぞには分からない金持ち心理があるようです。日本にも、世界の中では桁が少ないというものの、特別な富裕層があります。
富裕層が求める対象物のひとつには不動産も加わるようで、名付けて彼らは「不動産コレクター」です。
高級・高額マンションの購入者の多くは、自宅以外にも複数の不動産を保有し、その維持管理だけでも多額の費用がかかるというのに、滅多に手放すことはないと聞きます。
地方や郊外の本宅、東京都心の別宅、子供用のマンション、軽井沢の別荘、ハワイのコンドミニアムといった具合に、何軒も家を持っています。
これらの保有・購入目的は自己または家族等の使用が中心であり、純粋の投資目的ではないのです。
都区内の高級マンション、中でもブランド地の億ション購入者には、この種の富裕層が何割かあるようです。最近は、ホテル代わりに東京都心のマンションを購入する外国人もあると聞きます。
●ストックされたままの億ション
富裕層と一口に言っても桁違いの差があるようなので、コレクション数も差があるのでしょう。中には、使わなくなったから売却するという人もあります。しかし、多くは売却に出さず、しばらく賃貸しておこうなどと、売り惜しみします。ブランド地の中低層ブランドマンションや、都心のタワーマンションでランドマークになるような物件は、ハイグレードであり、かつホテル並みのサービス付きといった価値あるマンションであるのが普通ですし、かつ稀少価値が高いので、手放すのは惜しいと考えるらしいのです。
購入時点でも、なぜ買ったか分からないような人がいると聞きます。購入目的が曖昧模糊としていると、担当営業マンは異口同音に語ります。「貸すか」と問うと「貸さない」と言ったり、「どうするかは後で考える」と言ったりするそうです。
信じられないかもしれませんが、億ションの購入者には、ある種のコレクション感覚の人がいるのということなのでしょう。そう考えるほかないようです。
買ったら、経済的に破綻しない限り手放すことはありません。売らなければ困るという事情にもない。だから、中古の流通もない。このような特殊な階層が集まる物件は、値崩れもしにくいのです。
何らかの事情で売却することになったとき、購入価格の半値になってしまったとしても痛みを感じません。
既に所有者は他界し、売却する人は相続人であったりします。無論、住宅ローンはないので、相続税の納付などの都合で売却を急ぐとき、少しくらい安くなっても問題はありません。
高級マンションの場合、景気動向や金融情勢に左右されない富裕層が需要の中心になるので、価格も比較的安定しています。
とはいえ、全く影響を受けないわけでもありません。上がり過ぎれば必ず調整時期がやって来ます。従って、タイミングが悪いと買い値を下回ることもあります。
しかし、再び上昇相場になったときは、ブランド立地の高級マンションの強みと中古の流通市場に出回りにくい、すなわち品数の少なさから買い値を上回る取引が成立するものです。
昨日、都心の有名マンションの売り情報をチェックしてみました。
港区と渋谷区では、「”青山パークタワー”」、「広尾ガーデンヒルズ」、「東京ツインパークス」、「恵比寿ガーデンテラス」、「白金タワー」、「赤坂タワーレジデンス」、「パークコート赤坂ザ・タワー」、「青山ザ・タワー」といった大規模タワーマンションを探索しましたが、「東京ツインパークス」と「パークコート赤坂 ザ・タワー」だけが例外で、他は売り出し戸数が1戸か2戸でした。
「パークコート赤坂 ザ・タワー」は三井リハウスのサイトに、何故か億住戸だけで7戸も掲載されていました。
千代田区の「平河町森タワーレジデンス」や大規模ではないですが、「ザ・パークハウスグラン三番町」、「番町パークハウス」などの番町立地の物件も1戸・2戸 でした。
例示はしませんが、首都圏各地の大規模マンションは、大体どこも5戸や6戸は同時期に売り出されているものが多いものですが、ブランド地の億ションの場合は上述のようにやはり売り出し事例は少ないのです。
尚、東京ツインパークスは、三井リハウスのサイトだけで1億円未満3戸、1億円以上の住戸が10戸も掲載されていました。理由は推察できるのですが、ともかくも、このマンションは最寄り駅が汐留か浜松町なので、他の12物件とは少し違うところでもあり、除外すべきなのかもしれませんが?
●億ション・スーパー億ションが教えてくれる教訓
億ションに限らず、人気があるマンションには、ウエイティングリストがあって売り物が出た瞬間に買い手が決まってしまうとさえあると聞きます。本当かどうか、その証を見る機会に恵まれませんが、ときどきご相談者から駅前の〇〇マンションが出るのを待っているのですが、中々売りに出ないので、もう限界です。そこで今こちらを検討しているのです」といったメールが届くことから、やはりそうかと思うときもあります。
都心のブランド地ではないので1億円を超えるものではないが、人気マンションは確かに存在します。
共通点は、地域一番の物件と言われる建物スペック、何より得難い立地条件にあります。
ここらは、あるマンションをモデルに筆者が想像たくましく描く優良マンションの姿です。
某駅から徒歩3分と近く、駅前ロータリー付近から見える位置にそのマンションはそびえています。近隣のマンションと較べると、ひときわ目立っています。
ほぼ駅前なのに閑静で緑も多い環境です。マンションの裏手は大規模ではないが公園が隣接しています。広めの歩道は緩やかな登り道。街路樹が美しい。
敷地のオープンスペースに無機質な灰色はなく、豊かな緑で覆われています。築後10年、敷地外周に植え込まれた樹木は大きく成長し、マンションの足元を包み込むかのようです。そばを通る人々の目にも優しい景観です。
ロビーは広く天井も高い。少し暗い照明が荘厳さを感じさせます。管理も良いらしく、チリひとつ落ちていません。
居住者は住み心地の良さから長く住んでいる人の多いマンションです。居住者の大半はサラリーマン世帯なので転勤で移住する人も多いが、売りにはかけず賃貸しながら保有を持続する。従って、売り物は滅多にないという状況にあると言います。
少し狭い部屋もあって、手狭感から買い替えて行く人もあるが、そんな部屋は瞬間的に買い手が決まってしまうらしいとのこと。価格も地域一番の高さだが、それだけの値打ちはあると信じられています。
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いかがでしょうか?筆者のフィクションですが、人気マンションは大体こんなふうではないかと思います。これからマンションを買う人は、多少高くても地域一番か二番になれるような物件を選ぶことができれば、手放すとき値下がりを心配しなくて済むかもしれません。
「手放したくない。売るのは惜しい。できたら住み続けたい」このような物件に巡り会えることを祈念して今日の投稿を終わりにしたいと思います。
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