このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています。
ほぼ5年おきに行われる「マンション総合調査」というものがあります。国土交通省の定期的な調査で、全国のマンション管理組合とマンション住人(オーナー)を対象に実施しています。
最近の調査(2013年)に、マンション住人の永住志向の高まりを表わすデータがあります。「いずれは住み替える」という人より「永住するつもり」と回答した人が多くなった(逆転した)のは、1999年の調査でした。
そのときの比率は前者が約30%で後者が約40%(特に考えていない・不明:30%)でしたが、2013年調査では17.6%と52.4%と「永住するつもり」が50%を超えたのです。
この調査の年齢別集計を見ると、年齢が高くなるほど永住志向が高くなる傾向にあります。これは想像通りでしたが、驚いたのは30代、40代の居住者でも「永住するつまり」と答える人が40%以上もある(30代=41.4%。40代=45.2%)ことでした。
●40歳の人が同じマンションに50年も住み続けるなんて
転勤のない会社に勤めていて、住居を変わる可能性がないので、永住するつもり。こう考える人があります。また、ここが気に入って長く住んでいるので、変わるつもりはありません。だから、この辺で永住できそうな良いマンションを探しています。このような考えの人にも時々出会います。このような考えを否定するつもりはありませんが、世の中・人生は想定外のことが起きてしまうものです。「まさか、こんなことがあるなんて」と驚くのが人の世ではないかと思います。
次のような例は驚くほどのことでなく、普通にあることですが、それでも想定していなかったという人は少なくないようです。
1)結果的に、子供が行きたい私立の中学から遠いマンションを買ってしまった。学校近くに賃貸マンションを借りて母子だけ住まわせる策も考えたが、負担が大きいので、結局は家族そろって住み替えることに。
2)転勤のない会社に長年勤務していたが、リストラのせいで関連会社に移籍。そこでは転勤が必須だった。5年経って、大阪へ転勤と決まった。子供がいないので夫婦で赴任地へ。築20年を少し超えたばかりのマンションだったが、賃貸が難しい立地だったので転勤を機に売却を決断。
3)気に入って25年住んだマンション。老朽化が進み、大規模な改修工事が必要になった。ところが、修繕積立金の残高が少なく、今回の工事に支出すると残高がゼロになってしまうことが判明。費用の臨時徴収や値上げ問題が紛糾して住民同士の関係がギクシャクしてしまった。妻はあらぬ噂を立てられたことが原因でうつ病に。結局、定年間際に想定外の引っ越しをする破目に。
上記のような「普通」のことでなく、ここに紹介できない「まさか」の出来事は世間にはたくさん転がっているはずです。
●マンションに永住はできない。そう思った方がよさそうだ
60歳で新築または築浅のマンションを買う人にスポットを当てれば、平均寿命90歳まで生きるとして、マンションの寿命はたっぷり残っているので心配はないでしょう。男性より寿命の長い女性はさらに10年生きたとしても、それまで同じマンションに住み続けることが可能なはずです。しかし、40歳の購入者を思うとき、「永住」の二文字は怪しくなって来ます。
新築で購入したとしても、90歳のときのマンションの年齢は50歳です。妻は100歳まで生きるとして、マンションの年齢は60歳に達します。築50年、60年のマンションにストレスフリーで住むことは難しくなってくる可能性が高いのです。
大規模修繕を定期的に実施しながら延命に努めて来たとしても、不定期の小修繕も繰り返され、満身創痍状態にいずれはなるのです。不具合がしょっちゅう発生し、維持管理に熱心オーナーも減り、マンションは老醜をさらけ出したまま辛うじて息をし、立っているだけといった姿に成り下がるかもしれません。
「建て替えの話題も出たがまとまらず、対症療法的に延命しているというふうである。空き部屋も目立つようになっているし、居住者の半分は賃借人である」。こんなふうになると、もはや残り少ない人生を静かに、かつ快適に過ごす館ではないのです。
空き部屋が目立つと述べましたが、なぜ空き部屋なのかというと、「高齢者施設に入ったため」が一番多い理由と考えられますが、その後を賃貸しようにも、借り手を探すのが大変だからであり、リフォーム代が嵩むので賃貸すること自体を止めてしまったという理由や、売りたくても買い手が付かないので空き家のままにしているといった理由が考えられます。
マンションの末路は、雨露をしのぐだけなら死ぬまで住み続けることはできるかもしれないものの、快適な老後の住まい足りえないかもしれないのです。
一戸建てなら自分の裁量だけで不具合を改修しながら快適さを維持することができても、マンションはうまく行かないことが少なくありません。費用負担で揉めることも大いに考えられます。改修か建て替えかの議論もやがておきますが、建て替えへの方向が大勢になったとしても、協議が整うのは、自分が死んだ後になると考えた方が当たっているでしょう。
永住のつもりが、住み替えを検討しなければならないとなったときのことを想像してみましょう。年老いてからの家探しと引っ越しのエネルギー消費は結構なものです。動く前に尻込みしてしまう人も多いでしょう。
このように考えて行くと、元気なうちに手を打った方が良さそうです。
●高齢者住宅への移住を想定したとき
永住するつもりでも、そうはさせてくれないのが人生だとしたら、やはりいつでも売却が可能な住まい・マンションを持つということが大事です。老後を豊かに送る、もしくは死ぬまでアクティブに過ごしたいとしたら、経済的な裏付けも必要になるはずです。それなら、家も資産の一部と考えておく必要がありましょう。高齢者住宅や施設に移住するにしても、経済力はないよりある方がいいに違いありません。選択肢も広がるはずです。
二束三文でしか売れないマンションを持ってしまった人はお気の毒ですし、住宅ローンがまだ長く残っているようなタイミングで売却しなければならない事態となったとき、売却代金の全部が銀行返済に消えてしまうようなことになっては、これも不幸なことです。
その意味から、将来できるだけ良い値で売れるようなマンションを選択することが重要なのです。「永住するのだから売ることはない。売らなければ損も得もない。資産価値なんて気にすることはない」などと考えてはいけないと筆者は思います。
マンション選びは「住み替え・買い替え」を前提とすべし、これが変わらぬ主張です。
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