このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています
マンションの資産価値を考えるとき、言い換えると、将来自宅マンションを転売するとき、駅に近い方が有利に決まっていると考える人は大半でしょう。
そのとき、「駅から5分なので価値がある」と思い込んでいる人があります。これは正しくもあり、正しくはないのです。その理由を説明しましょう。
日比谷線「小伝馬町」駅 徒歩4分・銀座線・半蔵門線「三越前」駅 徒歩11分・ 日比谷線・都営浅草線「人形町」駅 徒歩9分・JR総武快速線「馬喰町」駅&都営新宿線「馬喰横山」駅 徒歩3分・都営 浅草線「東日本橋」駅 徒歩6分・JR総武快速線「新日本橋」駅 徒歩9分
これは、現在販売中の日本橋アドレスにある新築マンションの「物件概要・交通」欄に記載された駅名です。全部で6駅もあります。路線の違いも分別すれば、数えきれないほど多数の駅を利用できる、大変便利なマンションであることを表しています。
これほど多いのは日本橋界隈だけですが、都心では3駅・4駅が徒歩10分以内にある例は少なくありません。よくご存じの通りかと思います。
最寄り駅から徒歩5分以内の物件は都心では少しも珍しいことではありません。
これが同じ都区内でも世田谷区辺りになると、徒歩で行ける最寄り駅はひとつでしかない物件が普通になります。たまに二つある物件を見ると、どちらの駅からも徒歩10分前後と近くないケースが多いようで、都心との違いは明白です。
●キーワードは「差別感」
勘違いしてはならないのです。マンションの資産価値を考えるときの考え方は、他の物件より我が物件がどれほど優れているかという観点が必要になるわけで、言い換えれば「差別感」がはっきりしているかどうかです。駅から徒歩5分内にいくらでもマンションが並ぶ中では、5分の我が家は「普通」であって、特別なものではいわけです。
勿論、その駅から10分の位置にある物件よりは優位に立てるわけですが、大多数の5分マンションとの競争では勝てるとは限らないのです。
都心を出ると、また郊外では駅のすぐ近くまで住宅が迫っていたりするため、マンション開発が困難です。駅に近い所に既存のマンションが少しは見えるものの、商店街と一戸建てが大半であるといった街があります。そんな駅ならば、5分以内のマンションは稀少価値があることでしょう。
●どこが差別化策なのかと尋ねましょう
新築マンションの販売事務所・モデルルームへ行ったら、忘れずに尋ねることとして「このマンションはどこが差別化されていますか?」と聞いてみましょう。答えが「3重・4重のロックをかけた高いセキュリティです」とあったら、他のマンションはそうでないのかと疑ってみましょう。都心はたいてい3重以上のロックをかけていますし、防犯カメラも漏れなく設置されているものです。
「2550の天井高」との答えだったら、「他社さんは?」と追加質問を浴びせましょう。今は殆んど2500以上です。2550はいくらか優っていますが、大きな差異とまでは言えないでしょう。逆に「2550ミリは二重床構造ではなく直貼り構造だからではないのか?」と疑った方が良いかもしれません。
「管理費が安いです」との答えだったら、「なぜ安いのですか?」と追及しましょう。
「ハイグレードの仕上げになっております」との答えだったら、「他社さんより上級ということですね?どの辺でしょうか?」と確認しましょう。
駅近であるにしろ、そうでないにせよ、都心は大差ないのです。駅近ということだけに囚われず、総合的に価値判断をしなければなりません。
●都心で差別化できる立地とは?
駅から5分は差別化にならないということを言って来たわけですが、では何が差別化になるのでしょうか。駅に1分とか2分ならどうでしょうか? 近ければ近いほど差別感が出て来ますね。中でも駅前や駅直結が抜群の差別感をもたらすことでしょう。建物が古くなっても駅が移動しない限り、その価値は錆びつかないはずです。
しかし、そのような物件は滅多に供給されるものではありません。
最近の駅直結マンションを拾ってみましょう。
1)Brillia Tower 池袋=地下から直結(2015年2月竣工済み)
3)プラウドタワー大泉学園(2015年3月竣工済み)
4)キャピタルゲートプレイス(2015年7月竣工済み)
9)パークタワー新川崎(2016年竣工済み)
5)シティタワー国分寺ザ・ツインウエスト(工事中)
6)クラッシィハウス湘南藤沢(竣工予定2018年2月)
7)THE千代田麹町 TOWER(竣工予定2018年12月)
8)グレーシアタワー二俣川(竣工予定2018年3月)
9)プラウド府中ステーションアリーナ(竣工予定2017年4月)
こうやって並べてみると随分ありそうに感じますが、これらの戸数を全部足しても、首都圏の年間供給戸数(約40,000戸。3年で約12万戸)の3%にも届きません。
ここに駅から3分以内の物件を加えたら。ひょっとすると10%くらいになるかもしれません。
そうであるとしても、広さや向きや予算などの条件に合うものを探していくと検討対象になるのは限りなくゼロに近づくに違いありません。
尚、言うまでもないのですが、駅近の利便性の反面「騒音」や既存ビル密集のせいで居住性が劣る物件もあるので、駅近が絶対というわけではありません。
●立地以外の差別化策は?
マンション業者も、できたら駅に近い用地をと、取得条件に掲げて探しています。しかし、現実は駅から遠い土地も取得せざるを得ません。駅前に空地はないからです。都心で駅近が売地として出て来るのは、老朽化したビルや広いとは言えない駐車場などが相続対策などで放出されるときですが、それが多いのは日本橋のような古い街ということになります。しかも、貸しビル業を営んでいる大手不動産業者(三井・三菱・住友など多数)が所有する大きな古いビルを手放すことはないので、手放すのは大半が老舗とされる個人企業です。それらは狭小です。最近目立つ日本橋の新規供給マンションの大半が小規模なのは、このためです。
さて、駅から少し距離があっても都区内ならば、不便で仕方ないなどという物件はないので、建物で差別化を図ることとなります。デベロッパーは何を考え、どこで差別化しようとするのでしょうか?
何もしなくていいのは「ブランド」です。〇〇社の商品(物件)というだけで差別化されるからです。
しかし、ブランド力のある企業同士の競争になる場合もあります。従って何もしないということは現実にはあり得ません。
では、どこをどう差別化するのでしょうか? 室内の設備・仕様でしょうか?外観デザインでしょうか?間取りでしょうか? 共用施設でしょうか? 中庭などの空間デザインでしょうか?高さでしょうか?
こうした項目の一つ一つで創意工夫を行っているのは確かですが、単にグレードを上げればいいわけではありません。工夫をすればするほどコスト、ひいては分譲価格という壁に跳ね返されてしまうという現実もあります。最近の「田の字間取り」ばかりという実態はコストの壁が作り出したものです。
筆者の実務経験から言うと、差別化は永遠のテーマであり、同時にコストとの戦いでもあるのですが、燃える課題でもあり、やりがいを感じた仕事でもありました。
とまれ、ふたを開けると各社どの物件も似たり寄ったりの企画になってしまう現実があります。結局、差別化をしたつもりでも差別化になっていないことが多いのです。
マンションの価値は立地条件が全てみたいに言う人が少なくありません。筆者も立地条件がとても重要と考えています。しかし、建物価値によってもマンションのトータル価値は変わって来るのです。「帯に短し、たすきに長し」という現実を前にして、解を求めて行く買い手の作業は易しくはないはずですし、悩ましい日々ではないかと思います。
勉強すればするほど混迷の度を増すという人も多いと思います。
ここで具体的な物件を教材にして解説することはできませんので、個別にご相談いただくほかないのですが、今日はいつも差し上げている「未公開資料」のご案内をして終わります。
初心者向け、上級者向けと混在しているのですが、どれでも何度でもご要望いただけますのでご利用いただければと思います。(多数あるため一部割愛しました)
請求NO.1/ 「宣伝にマイナス情報は載せないもの。都合の悪いことは言わないもの 」
請求NO.6/ 「危ない中小・売れ残っても安心な大手デベ 」
請求NO.7/「買えない族の典型はこれだ 」
請求NO.8/ 「勉強不足の営業マンに騙されるな 」
請求NO.9/ 「先行き不安で決心がつかない。そんなときの考え方」
請求NO.10/ 「独身女性がマンションを買うときの重要ポイントはここだ」
請求NO.11/「資産価値の落ちないマンションの探し方 」
請求NO.12/ 「過ぎたるは及ばざるがごとし・見過ぎは禁物という理由」
請求NO.13/ 「超高層マンションは危険が一杯!? 」
請求NO.17/「モデルルームと実物とのギャップに失望しない方法」
請求NO.22/「初めてのマンション購入で失敗する人はこんなタイプ」
請求NO.23/「家の常識・それ本当?全30項目」
請求NO.32/「モデルルームで貴方は値踏みされている」
請求NO.37/「勉強のし過ぎで買えなくなる罠」と「その脱出法」
請求NO.38/「超高層マンション下層階の値打ち」
請求NO.41/「一生独身の場合、住まいは購入か賃貸か?」
請求NO.44/「高層階は子供の成長に良くない」
請求NO.46/「マンションの価値「幹線と枝線の差は大きい」
請求NO.49/「マンションの最後はどうなるの?」
請求NO.50/「値上がりマンションに学ぶマンション選びの秘密」
請求NO.51/「新築を上回る価格の中古」となる条件と背景
請求NO.55/「新築と中古 縁・出会いに大きな違いあり 」
請求NO.56/「マンション営業のウソを深堀りする」
請求NO.57/「売れ残り物件に価値はあるか?」
請求NO.58/「マンション選びの法則12か条」
請求NO.59/「買いたい時と買い時の不一致を解消する」
請求NO.60/「マンションの寿命・人間の寿命」
請求NO.61/「郊外で値上がりしたマンションの実例に学ぶ」
請求NO.62/「しまった待てばよかったと思わないために」
請求NO.64/「業者が売主のリノベーション中古は割高」
請求NO.66/「マンションのブランドランキング」
請求NO.67/「タワーマンションの危うさ」~規約・眺望・資産価値~
請求NO.68/「買い手が落としがちの重要な質問集」
請求NO.69/「マンションの立地条件 判定理論」
請求NO.72/「中古マンション購入のチェックポイント」
請求NO.74/「マイホーム実現を阻む5つの性分」
・・・・・・・・今日はここまでです。マンション購入のお悩み・疑問にお答えするサイト・三井健太のマンション相談室では、人気一番の「住んで気づくダメ間取りと名作間取り50選」を進呈中です。
◆三井健太のマンション相談室◆
三井健太はマンション研究家。マンション業界OBとして業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しています。また、個別の物件の価値判断やご購入における諸問題について個別のご相談を承っております。営業担当者には聞きづらいこと、聞いても立場の違いから客観的で信用できる回答を期待しにくいことなどに関しても秘密厳守でお答えしています。
別サイトのブログ「マンション購入を考える」も是非お目通し下さい。500本以上の記事があります。
★第三者の公平な目でマンションを評価する「マンション無料評価サービス」
筆者は、ご検討中マンションの価値を客観的に評価し、適正価格かどうかの判定を含めてレポートにしてお届けしています。※ご検討住戸の階・間取りタイプ名・専有面積・価格・管理費をお知らせ下さい。中古物件の場合は、物件の掲載WEBサイトのURLをご記入いただくだけで結構です。
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