このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています
新築志向の強い国民と言われる日本人ですが、最近は中古マンションの取引が活発になりました。新築マンションの供給戸数が伸び悩み、価格が急騰したためです。
筆者は4年くらい前から中古マンションが伸びると見ていましたが、昨年は新築と中古の成約戸数はついに並びました。
(第26回「中古マンションの取引が引き続き活発」をご参照ください)
いずれはそうなると読んでいたのですが、読みの根拠は少しズレがあったように思います。 新築がないから仕方なく中古にしたという人のほかに、積極的に中古を探す人の比率が増えたように思うからです。
その根拠となる調査データも出ているので、近いうちにこの場をお借りして解説しようと思いますが、今日は中古マンション購入のメリットを、視点を変えてお伝えしようと思います。マンションを購入して何年か先に賃貸する可能性があるなら、価格の安い中古マンションを購入しておくと有利であるというお話です。
比較的新しいマンションでも、築20年を超えるマンションでも、賃貸したときの受け取り家賃は売買価格ほどの差がない。つまり利回りが良いのは新築より中古なのです。今日はこの点を掘り下げてみました。
●独身なので1LDKを買う。結婚したら手狭に。そのときは?
いずれ結婚したい。そのときに備えて2LDK以上のマンションを買っておきたいという人もありますが、意中の相手がいない人、もしくは女性単身者がマンションを購入するときは、1LDKでいいという人も多いはずです。少なくとも、筆者にご相談頂いている人たちは皆そうでした。女性が結婚すると、それまで住んでいたマンションを保有したまま、配偶者の男性が用意したマンション、もしくは共同で購入するマンションに転居することになるのでしょう。
男性単身者の場合はどうでしょうか?
結婚することになったら、当座は1LDKでも十分に暮らしていけるでしょうが、やがて妻の通勤便を考えて転居しようとなるかもしれません。
また、子供ができたので、小学校へ上がるまでに住み替えようなどとなるでしょう。
このようなケースでも、保有していたマンションを売却せずに保有し続けたいと考える男性は少なくないはずです。売却のタイミングとして良い環境にないので、当分は賃貸しておこうという場合もあるでしょう。
こうした状況を念頭に置きながらマンション購入の計画を立てるとして、その際に留意すべきポイントは次の二つです。
➀将来、売却が想定されるにしても、賃貸することになるとしても、都心に近いエリア、かつ駅近である物件を選ぶこと。
②新築マンションより中古マンションを優先的に検討すること
――この2点について補足します。
➀都心に近く・最寄り駅に近いこと
深い解説の必要はないと思います。この方が売りやすく、貸しやすいからです。都心に近ければどこでもよいのかと言えば、一概にそうと断定もできませんし、駅から近いという条件においても、目安は5分以内ですが、女性の場合は駅で降りて買い物をしやすい位置にあること、夜道が安全なルートであることなど、細かな条件が付加されます。
②購入価格の安い中古を狙う
新築が十分に買える資金力を有した単身者が増えています。筆者に届くメールの20%以上は単身男女ですが、年齢は幅が広く、20代後半で1億円の予算という人もあります。予算はともかく、40代以上の単身者も多いのです。どなたも予算に余裕があり、貯蓄を残して低金利の住宅ローンを積極的に利用しようという人が圧倒的に多くなりました。
また、新築マンションも買おうと思えば買えるが、敢えて中古を探しているという人も半分くらいあると感じます。
(個人情報は、男女・年齢、大体の住所までしか頂かないので、何回かのメールのやり取りの中から次第に分かる情報を元に筆者が感じ取る印象でしかないのですが、大きくは狂っていないと思います)
さて、中古マンションの最大の魅力は、価格が安いということにあります。中古でも付近の新築並みという高評価の物件もあるのは事実ですが、大半は新築に比べて安いものです。
中古選びも簡単ではありませんが、ここでは本題から外れるので後日とさせて頂き、前に進めて行きます。
一般論として言えば、中古なら予算を低く抑えられます。頭金も少なめにし、住宅ローンを多く利用したとしても、今の低金利なら毎月の負担額は少なくてすみます。しかし、新築なら同じエリアで探すと、頭金を増やしローンも多くという形にならざるを得ないでしょう。
実例を挙げてみましょう。場所は、新宿駅直通の地下鉄丸ノ内線「方南町」と設定します。
新築マンションは駅から1分の距離に「シティテラス杉並方南町298戸」が販売中です。予告広告の段階のため価格の記載はありませんが、54.68㎡の2LDKという住戸があります。下層部でも5200万円はするはずです。
一方、方南町で中古マンションを探してみると、「ライオンズプラザ方南町~新規リフォーム済み~築29年、方南町駅2分、50㎡3780万円」という表示の物件が出てきました。
リフォームの内容など詳細は不明なので、この中古が安いのかどうかの疑問は残りますが、ここでは無視して、単純に両者の価格差に注目します。
ここでは比較のために頭金を同じにして比較してみました。
・新築・・・頭金1000万円/ローン4200万円:この毎月返済額は112,778円
・中古・・・頭金1000万円/ローン2780万円:この毎月返済額は74,648円
(固定期間選択型35年返済のローン、10年固定の金利0.7%と仮定)
「新築が本当はいいのだが、頭金を1000万円出しても、ローンは4200万円も組まなければならないのか。 払えないこともないが(必要年収は返済負担率割合を25%と自分で線を引くと540万円)、中古の方がはるかに余裕ができるなあ!これだったら生活設計の選択肢が広がっていいかも」などと思い悩むことでしょう。
●賃貸に出すと・・・
50㎡台のマンションを賃貸に出すと方南町ではどのくらいの家賃が取れるのでしょうか?購入してから5年後に貸すと仮定しましょう。実例を探しました。
・新築は築5年となっているわけですから、その近辺を探してみました。募集事例で近いのは、「方南町駅 歩3分・築8年・5階・54.5㎡:172,000円」というものでした。
これを5年後の指標とすると、18万円以上で賃貸できそうです。
・例示の中古は5年後に築34年になりますが、これに近い事例は「方南町駅 歩3分・築30年・4階59.5㎡148,000円」というものがあります。
15万円くらいでは貸せそうです。
それぞれの購入額に対する表面利回りを出してみます。
新築で購入した物件:(18×12か月)÷5200万円=4.1%
築29年時点で買った中古物件:(15×12)÷3780万円=4.8%
やはり利回りは中古に軍配が上がりそうです。
(蛇足:もう少し差が出るのが普通なので、この中古はリノベーション費用をたっぷり取った高値の物件なのかもしれません)
次に毎月の収支(キャッシュフロー)を比較しましょう。
新築は、毎月返済11万2778円+管理費・修繕積立金1万6千円、合計で約12.9万円なので家賃収入18万円から引けば約5万円(年間60万円)の手残りとなります。
一方、中古の方は毎月返済額7万5千円+管理費等が2万円と多めに推定したとして9万5千の支出になります。家賃収入は15万円でしたから、手残りは5万5千円(年間66万円)となります。
キャッシュフローは、殆ど差がない試算となりました。
所有マンションを売却せずに賃貸する計画には、新たな買い替え先のローンとの二重払いに注意しなければなりませんが、借り手がなかなか見つからない、空くと次が決まるまで時間がかかるといった物件はストレスを溜めることになりかねません。
上記の場合、新築は年間の手残り60万円を毎月の必要額12.9万円で割ると家賃4か月分強に相当します。
中古は、手残り66万円÷9.5万円なので7か月分弱に相当します。
選んだ物件が適当でなかったのかもしれませんが、探していけば、新築と中古の差がもっと大きな例も見つかるかもしれません。
尚、家賃収入は、経費(金利や火災保険、修繕費、管理費、減価償却費など)を引いたものを所得として確定申告しなければなりませんが、給与収入などの多寡によって大きく変わるので、こでは無視しました。
今日の記事は、皆さんがマンション選びの際、頭の片隅に置いておかれると良いかもしれないと考え投稿しました。
●売却のことを考えると・・・
ここまで、「売却による損得の比較」はしませんでした。これは無視できないテーマです。この話は非常に長くなりますので、日を改めてさせて頂こうと思いますが、新築が有利で中古は不利ということはないとだけ述べて今日は終わりにします。・・・・・・・・今日はここまでです。マンション購入のお悩み・疑問にお答えするサイト・三井健太のマンション相談室では、人気一番の「住んで気づくダメ間取りと名作間取り50選」を進呈中です。
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三井健太はマンション研究家。マンション業界OBとして業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しています。また、個別の物件の価値判断やご購入における諸問題について個別のご相談を承っております。営業担当者には聞きづらいこと、聞いても立場の違いから客観的で信用できる回答を期待しにくいことなどに関しても秘密厳守でお答えしています。
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