このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています
いくつかの新築マンションの広告で「二重床・二重天井」の断面概念図を見つける回数が増えています。一瞬「そんなの当たり前じゃないか」と思うものの、その狙いや背景に気が付きます。売り手の意図をご紹介しましょう。
●耐震性・耐久性のまやかし
同じようなことで、「鉄筋は壁に2列のダブル配筋です。他社はシングル配筋です」という記述も実に多く見られます。現在、ほぼ全部の新築マンションが、ダブル配筋で、シングル配筋などというマンションはないと言っても過言ではありません。
それなのに何故あえて当たり前のことを物件サイトで図解してまでアピールするのでしょうか?
「だから安全です」や「だから地震にも強いです」が説明の続きです。これは、免震構造・制振構造でないことの言い訳なのかもしれません。
意地悪な見方をすると、免震構造や制振構造でないことを隠すテクニックとも言えるのです。
●天井高2500ミリは当たり前
天井高を「一般マンション2400ミリ・当マンション2500ミリ」というのもときどき見かけます。これにはどのような意図が隠されているのでしょうか?2500ミリは昔なら特筆ものだったかもしれませんが、今は2500ミリの天井高など普通なのです。それでも、それを敢えて表示する。そこにはどのような狙いが隠れているのでしょうか?
ある業者に質問してみました。すると、「当たり前のことを当たり前に表示しているだけだと思いますけど」との答えが返って来ました。
「あーなるほど。それもそうだな」と得心するしかなかったのですが、実はその物件は際立つ特長がなく、他にアピールするものがないのです。どれもが普通なので、その普通を何項目か取り上げるしかないのです。
しかし、当たり前のことでも、ことさら「2500ミリの高さによって、開放的な住空間が生まれます」などと説明されると、何か特別なことのように聞こえてしまうものです。人間心理を巧みに利用する。そこが売り手の狙いなのでしょう。
●直床構造が増加中という背景
もうひとつ、本来当たり前であるはずの「二重床・二重天井」を表示した物件も時々見かけます。今日も次のような記述を発見しました。「コンクリートスラブと床仕上げ材の間に空気層を設け、配管や配線を床コンクリート内に可能な限り埋め込まない二重床・天井構造を採用。配管などの交換や修理がしやすく、リフォームへの対応も容易になります。将来のことにも配慮した仕様にしました」などと説明書きが添えられています。
当然の、基本的な設計に過ぎません。とりわけ、「配管や配線を床コンクリート内に可能な限り埋め込まない」の記述は、笑ってしまいそうなほどです。なぜなら、埋め込みマンションは何十年前の設計なのですから。
ともあれ、当たり前のことを特別のことのように語っています。
これは、直床マンションが増えていることへの対抗策として敢えて差別感を狙ったものと言えるかもしれません。
直貼りにした方が安くできるから採用しているわけで、高級マンションではありえない構造なのです。
直貼りでない物件が二重床構造のメリットを当たり前でも図解し強調するのは、安さを武器にして商戦に勝とうとする直貼りマンションへの対抗策なのです。
話題は飛躍しますが、長谷工コーポレーションが施工を担当するマンションがやたらと目立つことにお気付きでしょうか。首都圏の新築マンションの30%弱が同社の施工によると言われます。この現象は、建築費高騰と深い関係があると考えられています。
品質はともかく、長谷工はコストダウンの技術・手法にかけては日本一と言われ、各デベロッパーは長谷工に頼まざるを得ないのです。建築費の予算超過に悩まされ続けている各社の苦悩が推察できる現象とも言えます。
長谷工頼みは、それだけが理由ではありませんが、その話は別の機会に書きます。
当たり前のことを当たり前に書いてある。それは批判の対象にはなりません。肝腎なことは、このマンションは他と比べてどこが優れているのか、どこが違うのかに焦点を当て、冷静に比較対照してみることなのです。
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