「モモレジのちょっと得するマンション選び」第15回です。
第10~12回で「階による歪み」、第13~14回で「方角による歪み」について言及しましたが、今回からいよいよ「間取りによる歪み」です。
スムログを始める際に私は別に「間取りの人ではない(笑)」と申し上げているように特別スムログでは間取りをクローズアップするつもりはなかったのですが、価格の「歪み」を語る上で「間取り」は切っても切り離せないものですので、やはりここはしっかりとお伝えしようと思う次第です。
※画像に意味はありません。画像がないと寂しいので。
ついに先月より着工された馬車道駅直結の横浜北仲タワープロジェクトです。
何度見ても最高の立地だ・・・。
汽車道側となる北側は低層階でも素晴らしい眺めでしょうね。
地上200mの58階建総戸数1,100戸超が予定されており、分譲住宅の他、スーパー・カフェ・レストランなどの商業施設、さらに高層階の一部ではオークウッドによるサービスアパートメントが展開されます。
住みたいわぁ・・・。
さて、間取り編第1回となる今回は基本中の基本、角住戸と中住戸という視点から価格の歪みを考察してみます。
昨今の新築物件は角住戸とは言え面積をかなり絞っているものも多く、同物件内で階数を下げれば中住戸と同じ価格帯で角住戸に手が届くケースも少なくないですし、角住戸にするか中住戸にするかで非常に悩ましい思いをしたことがある方も少なくないのではないでしょうか。
では、この角住戸と中住戸、例えば全戸南向きの物件において南東(南西)角住戸と南向き中住戸の単価差はどのぐらいが適正なのでしょうか???
むろん、物件によって視界条件や日照条件は様々ですし、同じ南向きでも中住戸と角住戸で位置がズレている分視界も変わってきたりするので、なんとも言えない面はあるのですが、昨今の物件の傾向から言うと大手デベ系の物件だと中住戸と比べ角住戸の単価は「0~+5%」ぐらい、中小デベ系の物件だと「△3%~0%」ぐらいとなっているケースが多いように思いますね(私の感覚ですのでご了承下さい)。
エリアにもよりますが、近年のマンション価格の高騰で中小デベにとって売りづらい6,000~7,000万円以上が中心となるような物件では中住戸よりも専有面積が広くなることが多い角住戸はグロス価格を伸ばせないという状況があり、中住戸よりも単価安となっているケースを結構頻繁に見かけるようになりました。
・中住戸67㎡5,980万円(坪単価295万円)
・角住戸73㎡6,380万円(坪単価289万円)
みたいなケースですね。角住戸の方が約2%単価安となっています。
ちなみに、上記の大手デベと中小デベのケースを補足しておくと、希少性の高い立地の物件や物件内でもNo.1と言えるような条件の良い角住戸においては、中住戸との単価差がもっともっと大きくなることが少なくありません。
エリアNo.1物件の中で最も条件の良い住戸を想像していただくと分かりやすいでしょうか。そういった住戸は地縁のある方や超富裕層(外国人投資家含む)などが金に糸目をつけずに欲しがることが多く価格はあってないようなものなのでデベロッパーも足元を見た価格設定にするのが定石だからです。
パークコート青山ザ・タワーは凄く極端なケースになりますが、角住戸の単価は中住戸の単価に比べ4割ぐらい高かったですね・・・。
というわけで、昨今の中住戸と角住戸の単価設定の傾向について述べてきましたが、問題はその「歪み」をどう見つけるかですね。
前述の大手デベ物件と中小デベ物件の差、もしくはエリア有数の物件なのかどうかなどを勘案して妥当な単価差を見積もってみることも1つの方法ですが、物件属性による影響も大きいので数多くの物件を見た経験がないと判断するのは困難でしょう。
そこで、その代わりに今回私が提案するのが、専有面積に占める居室畳数割合から角住戸と中住戸の価格設定の歪みを見つける方法です。
本ブログでは時たま計算しているのでご存じの方も多いかと思いますが、70㎡の3LDKの居室畳数の合計が「11.6畳(LD)+3.3畳(キッチン)+6.0畳+5.3畳+5.0畳=31.2畳」と仮定すると、居室畳数割合は「31.2畳×1.62(畳を㎡に換算)÷70㎡=約72.2%」と計算出来、これまで数多くの住戸で計算してきた経験上、3LDKの中住戸の平均はこの72%前後となる可能性が高いと思います。
一方、角住戸の場合は中住戸よりも間取りのバリエーションが豊富、つまり、廊下の長さのバラツキが大きいので平均で語るのはあまり適切とは言えないのですが、田の字ベースでない(廊下が一直線ではない)一般的によく見られるような角住戸でおおよそ70%ちょっとになるケースが多いのです。
そもそもの面積にもよりますが、2%違うということは1.5㎡ほど異なるということであり、坪単価330万円水準の物件においては150万円の差になるわけですから場合によってはかなりの歪みを発生させていると言えるのです。
大手デベ物件を仮定して考察してみましょう。
・中住戸72㎡5,980万円(坪単価275万円)
・角住戸80㎡6,780万円(坪単価280万円)
角住戸は中住戸に比べ2%弱ほどしか単価高となっていないですし、眺望日照等の諸条件に大きな差がなければおそらく角住戸から売れて行く可能性が高いお値段設定です。
しかしながら前述の居室畳数割合を考慮してもう少し踏み込んで分析してみてはいかがでしょうか。
75㎡未満の角住戸のケースではけして面積にゆとりがあるわけではなく中住戸同様に玄関廊下を一直線として居室畳数割合を高めていることが少なくないので単価水準に大きな差がなければ角住戸の優位性は変わらないのですが、80㎡クラスになるとほぼ例外なくしっかりとした廊下が設計されることとなるので居室畳数割合を考慮すると全く異なる印象となることが少なくないのです。
例えば上記のケースにおいて中住戸は平均よりも居室畳数割合が高く73%、角住戸は平均よりも低く69%と仮定するとどうでしょうか???
中住戸は72㎡×73%=約52.6㎡が居室面積となるのに対して角住戸は80㎡×69%=約55.2㎡が居室面積となるに過ぎません。
専有面積には8㎡も差があるのに居室面積の差はたったの2.6㎡(畳数にすると約1.6畳)に過ぎないということになります。
むろん専有面積内の重要な部分として洗面浴室や収納などもありますので、居室畳数割合だけを考慮して単純に割安と考えることは出来ないのですが、その他収納などにも大差がないようであれば価格が歪んでおり中住戸に優位性がある可能性が高いでしょうね。
上記の例は角住戸が80㎡を越えていることで数字上のインパクトがあり、それがリセール時の好結果につながる可能性があることも否定出来ないのですが、リセールの際は青田売りと異なり実際の室内が吟味されるわけですから実際にLDに入った際に「LDが72㎡の中住戸と大差ない・・・」「大差ないのに数百万円も高いんだ・・・」みたいに思われてしまうことも往々にしてあるわけですよね。
何が正しいかは簡単には言えない論点とはなりますが、いずれにしろ青田売りのケースでは各居室の畳数を詳細に吟味・比較することが非常に大切なのは言うまでもありません。1畳が100~200万円の世界なのですから・・・。
なお、中住戸と角住戸の「面積差」がどの程度かという点も単価設定に大きな影響を及ぼすことにも注意するとよいかと思います。
こちらで書いています。
⇒ちょっと得するマンション選び(第8回)専有面積の差により発生する歪み
次回も「間取りによる歪み」について考察します。
乞うご期待!
こちらもどーぞ。
間取りだけでなく、価格の傾向や価格の歪みを記述し、累計2,050棟4,500室超達成。
毎日読んだら少しずつ相場感が育まれるはず(笑)の本ブログ。
⇒マンションの間取りや価格を言いたい放題!
※「沢山持ちたい様」よりお便りをいただきましたが、プライベートな内容を含んでしまうこと、また、沢山持ちたい様ご自身の状況を鑑みてお答えする必要があると思うので、メールでやりとりさせていただきたいと思います。本ブログ(PCサイト)にメールフォームがございますのでご希望であればそちらからご連絡いただけますでしょうか。