マン点流!不都合な真実(太陽光発電、導入・非導入マンション)

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東京都が2025年4月から新築戸建てなど、延べ床面積2,000m2未満を対象に太陽光パネルの設置を義務化したことで、その是非を問う様々な意見が出ている。

太陽光パネルの大半が中国製であること(人権とサプライチェーンの問題)、使用後の廃棄物処理の問題、災害時の危険性等々。

新築マンションの大半は「延べ床面積2,000m2未満」を超えているので、太陽光パネルの設置義務から免れている。

とはいえ、太陽光発電の導入を謳う新築マンションは少なくない。太陽光発電を導入する新築マンションとは……。

23区新築分譲マンション「太陽光発電」導入状況(実績・予定)

東京都が公開している「マンション環境性能表示の一覧」に掲載されている23区の新築分譲マンション全584件(23年1月23日現在)を対象に、太陽光発電の導入状況(実績・予定)を確認してみよう。

横軸に工事着手時期、縦軸に総戸数として、全584件につき太陽光発電導入の「有」「無」に区分して描いたのが次図。

総戸数が500戸を超えると、太陽光発電を導入していないマンションのほうが少ない

マンションの事業規模が大きくなると、太陽光発電に係る建設費用インパクトが小さくなるので、「なんちゃって太陽光発電」(後述)を導入しやすくなる。

「太陽光発電」導入状況
さらに、太陽光発電の導入率(導入済・予定マンションの占める割合)の推移を把握すべく、年度別に集計したのが次図。

太陽光発電を導入するマンションの割合は年々減少している。

東京都はあの手この手で太陽光発電の導入を促しているが、笛吹けども踊らず、2021年度に工事着手する分譲マンションの太陽光発電の導入率は1割を下回っている。

太陽光発電の導入率

なんちゃって太陽光発電(10kW未満)

23区の新築分譲マンション全584件のうち、太陽光発電を導入済・予定の137件(全体の24%)の発電容量を見てみると、興味深い傾向が読み取れる(次図)。

「発電容量10kW付近に張り付いているグループ」と「総戸数に比例して発電容量も増加しているグループ」があるのだ。

総戸数×発電容量
なぜこのような違いが出てくるのか?

平たく言えば、「なんちゃって太陽光発電」を導入するマンションとそうでないマンションとの違いである、とマン点は考えている。

以下に理由を述べる。

発電容量10kW未満の太陽光発電は「家庭用」で、10kW以上は「産業用」。家庭用は、余剰電力を高く買ってもらえるが、買取期間は10年。一方、産業用は、家庭用よりは安いが全量買い取りで、買取期間が20年と長いことに加え、スケールメリットも期待できる。

東京都は延べ面積2,000m2以上の新築マンションには「マンション環境性能表示」を義務付けている。10kW未満の太陽光発電を導入すれば、5つある評価項目のひとつ「再エネ設備・電気」の項目で二つ星が得られる(10kW以上であれば三ツ星評価(満点)を得ることができる)。

だから、取りあえず10kW未満の太陽光発電を導入しておけば、二つ星評価が得られるうえに「このマンションは太陽光発電で共用施設の電力を賄っているんですよ」と販促にも使える

問題は耐用年数が過ぎた後の扱い。取り換えるほどの経済的なメリットが得られるのかどうか。撤去・廃棄処分するにしても費用が掛かる。

太陽光発電の導入を見送る理由

23区の新築分譲マンション全584件のうち、太陽光発電を導入しない446件(全体の77%)の「太陽光発電の導入を見送る理由」もまた興味深い。

「太陽光発電の導入を見送る理由」として次の5択から選ぶことになっている(複数選択可)。
  • 日照が確保できない
  • 敷地内に設置場所を確保できない
  • 費用負担が大きい
  • 新設時は見送るが、将来対応をする
  • その他
太陽光発電を導入しないマンションの半数近くが「費用負担が大きい」という経済的な理由を掲げていて、また、半数が「新設時は見送るが、将来対応をする」とも答えている(次図)。

新築分譲マンションなのだから、分譲後にマンション管理組合が新規に太陽光発電を導入するにはハードルが極めて高い。事業者が東京都に忖度した回答としか思えない(笑)

※東京都の「建築物環境計画書制度」によって、延べ床面積2,000m2以上の建築物の新築・増築・改築を行おうとする建築主には、「積極的な配慮」が求められ、太陽光発電を含む「再生可能エネルギーの利用に係る検討」が義務付けられている。

太陽光発電の導入を見送る理由
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一級建築士/マンションアナリスト/長寿ブロガー(19年超)

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