このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています
最近50㎡台の比較的コンパクトな都心マンションに、単身やDINKSなどではなく、3人家族で住む人が増えているという話を聞きました。1LDKでも50㎡以上あれば、子供が小さい内なら4人でも十分住める広さです。子供が成長したら改装して、もう1部屋くらいは設けられないこともありません。
しかし、本来は広い住まいを望んでいるはずです。その傾向は本当だろうか?そんな疑問を抱きつつも、原因と背景を考えてみました。
●コンパクトマンションは仮の住まいか?
マンション市場の過去を振り返ると、昔は先ず2DKを購入し、何年か後にそれを高値で売却して3LDKに、そのまた先は「夢の庭付き一戸建て」に。そんな設計図を描く人が多かったものです。ところが、あるときから「新婚夫婦でも最初から3LDKを求めるのが当たり前に」なって行きました。
頭金ゼロでも住宅ローンが利用可能になったこと、そこに金利の低下が重なって若年層にも少ない負担で3LDKが買える状態になったこと、住宅資金贈与の特例措置ができたことなどからでした。
ただし、立地条件に関しては高望みを捨てる必要がありました。都心・準都心で購入できる人も当然いましたが、金融機関や商社、その他の一部優良企業に勤務する高給取り、または親からの多額の贈与を受けられる層に限られており、一般的には、「郊外の3LDKマンションはニューファミリーと呼ばれる階層が購入する」というトレンドができあがったのでした。
ところが2010年ごろからでしょうか、東京では新たな潮流が生まれました。3LDKではなく、1LDKや2LDKの比較的コンパクトな都心のマンションを購入する単身者ならぬニューファミリーが少しずつ目立つようになっているからです。
都心は高いので、広さや間取りを妥協するということになるわけですが、こうした需要がどのくらいに広がったかは今のところはっきりしないものの、少なくとも筆者に購入相談や物件評価をお寄せ下さる人たちの中で目立つ存在になっているのは確かです。
このような選択をした人たちに、昔のような「値上がりしたら売却して広いマンションにステップアップすればいい」という考えが根底にあるかというと、そこまでの明白な狙いはどうやらないようです。
とはいっても、資産価値の高い物件を選んでおけばツブシが利くだろうという思惑があるのは間違いありません。いずれ手狭になったら広い家を探せばいい、当分は間に合う。このような考え方をしているのです
都心に購入すれば利便性を享受できるのは言うまでもないわけですが、東京都心には子育てにも悪くない環境が整っています。公園などの遊び場所だけでなく、保育所や託児所といった共働き世帯を応援する施設が多いことや幼稚園・小学校などの選択肢が広いことなど、教育環境の良さが後押しになっているようです。
この現象は、リーマンショック(2008年)以降、郊外で手ごろな3LDK以上の物件供給が大幅に減少したということとも無縁ではないでしょう。気にいったファミリー物件が見当たらず、あれこれ迷っているうちに都心のコンパクト物件に辿りついたという経緯があったのかもしれません。
2011年3月の大地震で帰宅難民になった人たちを見て、職住近接の住まいを求める潜在ニーズが加わったとも考えられます。
こうして、「ダウンサイジングで都心住まい」というトレンドが強まったのです。
●一番の要因は価格の急騰にある
しかし、この背景には、やはり2013年以降の価格の急騰があると考えます。2LDKですら手が出ない価格になったので仕方なく1LDKを検討するということになった。その声を直接聞いたことはありませんが、仕事の関係で遠くは困るという人が少なくないのは確かです。特に、女性の方にその希望が強いのは各種の調査で明らかです。DINKSの場合でも、愛する旦那のために早く帰って食事の用意をしたいからかもしれませんし、待ち合わせしてアフターファイブを楽しみたいからかもしれません。
また、子供ができたときのことも考え合わせると、仕事を止めると決めていない限りは、都心に住み続ける方が何かと便利と考えているからにほかなりません。
女性は結婚したら「退社」するのが当然のように言われていた時代には、ニューファミリーが郊外に住むのも自然な流れであったように記憶していますが、最近は結婚後も働き続ける人、結婚しない人も増え、晩婚化が進み、住宅ニーズはすっかり変わってしまった感もあります。
しかし、ワンルームではなく、できたら1LDKが欲しいという単身者は多く、つまり、例え一人でも買うときはワンルームでなくひと回りか二回り広い住まいが欲しいという傾向もはっきりしています。
ファミリー層も、できたら70㎡以上の3LDKが欲しいと言います。妥協しても2LDKを望んでいるのです。今後マンション価格が落ち着いてきたら、もっと言えば価格が下がるか、購買力が伸びるかすれば、やっぱり広い方がニーズは多いに違いありません。その意味で狭いマンションは不利と言えます。
しかしながら、絶対数で需要の多い都心部の物件なら心配はいらないと考えます。都心には単身需要も膨大ですし、DINKS層の当座の住まいとしても一定の支持は得られるに違いありません。ワンルームはつぶしが利かないことが多いですが、1LDKならどちらにも支持者は多いのです。
夫婦共働きが一般化している昨今、二人分の世帯年収は高く、都心の6000万円以上でも届いてしまうのです。1LDKに親子3人の是非はとかくも、都心居住のニーズが多いのは確かです。
いずれにせよ、マンションの価値は物件固有の条件で格差ができるものです。駅近であるか、人気の街・エリアであるか、建物全体の差別感はどうか、ブランド価値はあるかなどの観点で比較し、多少高くても価値ある物件を選択することが大事です。
都心以外の物件でも基本は同じですが、資産価値を軽視しないならば狭くとも都心マンションは安全と言えるのです。
3LDKに拘泥せず、2LDK、極端には1LDKまで検討範囲を広げてみるのも悪くないと思うのです。マンションの価値は、ほぼ立地で決まるので、そこを念頭に置きながら検討されることを付言します。蛇足ですが、1LDKを検討なさるときは間取りがポイントになるかもしれません。
・・・・・・・・・・・・・今日はここまでです。
◆三井健太のマンション相談室
三井健太はマンション研究家。マンション業界OBとして業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しています。また、個別の物件の価値判断やご購入における諸問題について個別のご相談を承っております。営業担当者には聞きづらいこと、聞いても立場の違いから客観的で信用できる回答を期待しにくいことなどに関しても秘密厳守でお答えしています。
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