管理ネタで私単独でのご指名でのお便り返しです。駐車場の区画の一部にEV充電施設がついているが、他に比較して月+1000円アップの料金設定は安すぎないか?というもの。
「駐車場の料金設定」そのものが、どうあるべきで議論すると衒学的な論争になりかねないところに、さらにEV分がついてます。理事会や組合ごとの考え方の差が出やすいものなので、ハルブー某がこう言ってるからではなく、理事会で”自分たちの言葉で根拠が説明可能”で極力ほぼ全員が納得できるようにお決めください。【Disclaimer終了】
目次
質問は
差出人: 悩める理事
誰に答えて欲しいですか?
はるぶー
メッセージ本文:
月額利用料金設定に付いてのご相談です。
駐車場に電気自動車用のEV施設が付いた区画がありますが、現在はまだ利用者がいません。現在の利用料金は月額駐車料金+1,000円となっています。
理事会では安いので改定した方が良さそうだと話し合っているのですが、適正料金が分からず困っています。
管理会社もEVは新しい施設で、比較物件がなく分からないとの回答。
周辺マンションも導入例がなく、やはり適正料金が分かりません。
1,000円が安い根拠もあるわけではありませんが、維持費だけで考えるとあまりに採算は悪いですし、電気代も上がっているのが実情です。
EV施設の利用料金は皆さんどのように決めているのでしょうか?
どうぞよろしくお願いします
料金設定は”その組合”の決め事
『悩める理事』さん質問で気になるのは、”他の皆さん”に合わせようという姿勢が見え隠れしていること。駐車場を使う1名と、その他全員間でなにが公平なのかは”その組合の決め事”で事情は組合ごとに違います。なにか設定を変えるなら、理事会も、総会も過半数で決まることですから他を調査するとか、値段妥当性を計算してみるとかは無論よろしいですが、理事なりオーナーなりの圧倒的な多数が納得できる理屈をつくらないといけません。
+1000円する”前”の駐車場の値段設定に、確たる数的根拠も多分ないのでは? 駐車場の料金設定は、近隣相場程度で決めるのが普通で、決して駐車場に関わる必要コストを積算してそれに合わせて決めているわけではありません。場所によらずメンテコストは変わらないのに駐車場代は大きく立地で異なるので、都心では組合の収益源、郊外では赤字の原因になりがちです。
例えば機械式と自走式が混在した駐車場であれば、組合にお金がかかるのは圧倒的に機械式ですが、利便性に勝る自走式のほうが高く料金設定されているのが普通。駐車場の料金(例え1区画でも)を改定すると、駐車場内での場所や、そもそもクルマをもっているかどうかで、マンションを2つに割った論争をひき起こしかねないことから、私のマンションでは消費税率連動以外では過去に料金を弄ったことがありません。
たかだか1区画であり、現在そこに契約もないということから組合の財政に与える影響は今のところ0です。よほど理事会に喫緊のテーマはなくて暇だとかでなければ、他の案件から検討した方がいいかなで私なら検討の優先度は最低として、そもそも理事会で議論しないかもでたった今「悩む」ほどの大問題なのかどうかです。
なので以下は全部蛇足。
”理屈を考える”参考になれば。
とはいえ相場をきいてみた・・・
そのEV施設だけで何kWh使ったか計測可能な測定が可能であれば、マンションの電気代単価から従量で課金すればいいだけですが、殆どのマンションでは共用部全体で使った電気の量がわかるだけで、EV区画はおろか、駐車場全体で使った電力量も測定はできません。定額で設定するなら、その車が月に何キロ走って充電するのかの仮定も必要になるわけですから、充電でアドオンされる”妥当”な金額を決めるのは至難です。実際に、Twitterで訊いてみてもとても広い範囲に回答はばらけています
スムログに質問が来てるのですが、駐車場にその区画だけ充電可能なEV充電施設がついていて、普通の駐車場区画にたいして割増しの月額低額の料金設定になっている場合、月にいくらの設定ですか?
— はるぶー🍡は㍇ヲタクで善意の「組合の豚」 (@haruboo0) June 26, 2023
※後述の通り、+1000円で充電し放題はあまりにEV車のオーナー側に有利な条件ですし、一般的な傾向でも”下限”に近いので、少し値上げしておきたいは、今誰も契約していないわけですから考え方としてあり。
EV車の1月の平均的な充電量
クルマにもよりますが、EV/PHEV(プラグインハイブリッド)車は、補助金を利用しても値段はガソリン車より高くなるし、ガソリンスタンド並みの時間で瞬間に充電終了とはいきません。純経済的には”電費がいいこと”がEV車の最大の取り柄のようなところがあります。なのでEV車のオーナーは割とクルマでの遠乗りのおでかけが大好きな傾向はあるように思います。実は私もそうです。普通のEV車の「電費」は、1kWh充電するごとに6km程度走れる程度。クルマの保険の会社の発表では会社ぶよっても変わりますが国内の自家用車の平均的な走行距離は6-7000km 程度なので(通勤に使ったらこんな距離で済まないがあくまで平均)1月500-600km。
つまり、いつも自分の区画で充電していたらざっくり100kWh/月程度が平均的な走行距離のEV車の充電に必要な電力量です。
EV車がガソリン車に比較して有利ってHPだと年1万キロ程度での計算もEV車の宣伝でよくみかけます。この場合は月800km なので1月の充電は130kWh程度かなと。
せめて充電時間に比例して課金できるシステムだと1時間いくらで沢山使う車とそうでない車で料金を変えられますが、駐車場にいつでも充電可能な固定の200Vコンセントが戸建てのように生えている場合には、それができないのが難しいところ。
ではマンションの共用部の払う電気代の単価は?
これは、マンションの受電の会社や契約方式によって大きく異なるので、最低でも過去2年分程度の毎月の電気代の伝票をみて、使った電気量と料金から1kWhあたりの単価を計算する必要があります。高圧の契約は、基本料金の割合が高く1年で1番沢山電気を使った30分でその先1年の基本料金が決まるのを考慮しますが、ここでは省略。直前の私のブログも参考にされてください。ここ2年毎月のように電気代は激変してきました。
『管理組合の立ち上げ前に、電気代高騰で管理費値上げってあり?』
https://www.sumu-log.com/archives/56679/
昨日東電の8月の電気代も発表になったので図は張り替えておきますが、過去3年で最大で1KwHあたり17円も毎月激減してきました(下の図)。今年に入ってからは政府補助が時限付きでついているのも(高圧を仮定して)反映すみ。
今年秋まで限定で、1kWh あたり、小規模マンション(低圧の契約)は-7円/中ー大規模マンション(高圧の契約)は-3.5円/超大規模マンション(特別高圧の契約)は0円の政府補助がでているほか、昼と夜・季節で異なる料金での契約(東電の場合:季時別高圧)をしているマンションも多く、以下はあくまでも、平均的(通常の高圧の契約/政府補助のない場合/今年春先の価格)な1kWhあたりの典型的な単価は、30円近くになっているマンションが東電の営業地域では多いはずです。
(私のマンションはかなり特殊な契約に加え夜のみEV充電を行っているため20円程度。この程度にはマンションで変わります)
これをEV車の1月に使う平均的な電気量に掛け算すると、そのEV区画があることで管理組合が追加負担する電気代は、1月あたり、3000ー4000円ということになり、受益者負担で追加料金を設定する場合の”下限”目途になるかと思います(充電設備そのものの初期投資回収などは考慮してていないため)。
電気代相当分は受益者負担は妥当か
EV車のオーナーは、モールにでかけると思わず0円充電の区画を探してお買い物をしながら充電が趣味みたいな人も多く、あんまり電気代単価を高くすると、例えマンション内にEV充電施設があっても使ってくれないとかにもなりがちですが、だからといって電気代だけで赤字で事業継続するものでもないでしょう。最低でも、組合の払う電気代程度はその区画の利用者から払ってくれという受益者負担の考え方で、私だったら料金設定するかなと思います。
私のマンションでは、”私自身”が施設導入の後でEV車のオーナーになったということから、ズルして安く設定していると言われたらおしまいですから(現在8名ほどのEV/PHVのユーザーがいますがその方たちも併せ被弾では申し訳ない)”マンションが払う電気代だけでは組合が絶対損しない”料金設定であることを最重視して単価を設定しています。
施設を無料設置する会社(WeCharge :大京への全区画サービス実施の記事)の場合、1kWhあたりで40-50円に設定されている以下の記事が参考になるかもしれません。しかしこの値段でEV車にこの後ろのコネクターから充電するユーザーいるかなぁ(テスラのスーパーチャージャーより高いけど)
EV充電器をマンション全駐車区画へ設置可能に。大京
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1407768.html
EV区画追加分を数字で規約固定しない工夫も
電気代の単価は、わずか2年ほどの間で1kWhあたり17円も急騰したあと、今は政府補助のせいもあって少し落ち着いてきています。電気代が激変するものだというのは、管理組合を運営している側としてはこの2年ほどで痛感したわけです。駐車場料金のうち1区画だけが+1000円/月なわけですが、多分+1000円だというのは細則などに料金が数字で書かれていて、変更は総会の決議案件である可能性が高いのではないかと思います。
電気代は激変する性格が強いことから、うちは料金設定は電気代に合わせて”赤字にならないように”理事会が定めてよいとして細則上決めうちの数字とはしていません。全ての料金設定中これだけです。改定されるならこの点も工夫される余地があるかもしれません。
次回もまだまだしつこく電気代ネタで ”補助金100%でもなかなか管理組合理事会がEV受電施設の導入に踏み切れないわけ”です。(読む人いるんか・・・)
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者のマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
いつもながらの理路整然とした記事、次の投稿も楽しみにしております。
(読む人いますよー!)
どうも。”理事会”の人って理事長限定くらいだと1000人に一人
くらいしかいないのですが、少数読者向けのシリーズも懲りずに
書いてまいります。
弊マンションがまさに月+3,4千円設定でEVを利用しています。明らかに支払った金額分の距離は乗れていないのですが、定額なので多少のマイナスは目を瞑ってありがたく利用させていただいております。
が、同時にいつ電気代高騰を理由に値上げされないかとビクビクもしています。もっともらしい理由で総会決議に挙げられてしまうと少数のEV区画利用者は値上げに太刀打ちできませんね、、
いくらに設定するかは組合の決め事なのである意味理事会が提案して自由
(うちは外部会社に課金も依頼しているので、その会社との契約として1kWhあるいは時間あたり単価は
規約細則には書いていませんから、コミッション率で割り戻して理事会決議で自由に変更できます)
だとは思うのですが、少数の利用者を優遇でも狙い撃ちでもない妥当な料金設定をしているという
数的根拠は理事会は説明できる必要はあろうかと思います。