このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています
筆者に届くご相談メールには、揺れ動く心境が行間から感じ取れるものが圧倒的に多いのですが、最近その中で特に目立つのが「2020年まで様子を見ようかとも考えています」です。
言うまでもなく、価格上昇が激しいため、「高値掴み」をしてしまうのではないかという懸念を抱いていることに理由があります。
今日は、マンション購入のタイミングについてお話ししたいと思います。
●マンションを買いたいと思い始めるきっかけ
マンション購入のきっかけとも動機とも言えるものとしては、結婚、子供の誕生、転勤、子供の進学、子供の独立、定年といった人生の転機やライフステージの転機が挙げられますが、もう少し噛み砕いて列挙してみます。1)賃貸マンションに住んでいるが、契約更新で値上げ通告を受けた。
2)子供ができて手狭になったので引っ越しを考えたが家賃が高く、これだったら買った方がいいかもと思った。
3)頭金を援助するから家を買いなさいと親から電話がかかって来た。
4)結婚するに際して賃貸を探していたが、不動産屋さんが買うことを勧めてくれた
5)新聞広告やポストに投函されたチラシが目に留まった。
6)知人がマンションを買ったことを転居通知で知った。
7)安普請の賃貸マンションに住んでいたが、地震の揺れに怖い思いをした。丈夫な分譲マンションに住みたいと思った。
8)2階の居住者がうるさいので遮音性の高いマンションに住みたいと思った。
9) 知人が海外転勤中のマンションに安く住まわせてもらっていたが、転居するにあたり、同等の賃貸マンションを探したものの、家賃が高く、買う方が良いと気付いた。
10)共働きをしている間に住宅ローン控除を二人分使えば得だと知ったので。
11)持ち家の人の中では、同じマンションの売り出し価格をチラシで知り、「結構高く売れるんだ。うちも〇〇〇万円くらいで売れるかも」と思ったことがきっかけだった人や、「このマンションを買いたい人がいます。お知らせ下さい」という仲介業者のチラシに触発されたという人もあります。
12)社宅の解体計画のために転居を迫られ、急きょ行動を開始したという例もたまに聞きます。
もっと実例はありますが、90%くらいはこの中に入るのではないかと思います。
●買いたい時の市況
買いたいときに価格も金利も高かったという記憶をお持ちの人も多いはずです。会社までもっと近い場所にマイホームを買いたかったが、予算が届かず仕方なくここ(郊外)を買ったという先輩も多数あるのです。筆者も最初に購入したときの住宅ローン金利は住宅金融公庫で5.5%でしたし、銀行ローンと併用する必要もあって確か8%を超えていたと記憶しています。
次に購入したときは、元のマンションを高く売ることはできたものの、次の新築物件の価格は大きく跳ね上がっていました。しかし、買い替えは我が家の事情で「待ったなし」でした。
このように、買いたいときの環境が絶好だとは限らないのです。
また、あるときマンションデベロッパーの役員だった知人から新築マンション開発の苦労話と企画に当たっての知恵と工夫、その結果誕生した優良なマンションについて熱く語る話に引き込まれて、つい買う気になったことがありました。それが思わぬ売却利益をもたらしたのです。
前者は、買わなければならない家庭内の事情によるものでしたが、現在の市場と同じようなときで、少ない中から偶然見つけた良いマンションでしたが、他に匹敵するようなものは全くなかったことに加え、残戸数が2戸しかないと聞いて、慌てて申込金を入れて部屋を抑えたことを思い出します。
そのとき所有していたマンションは、びっくりするほど高く売れそうでしたが、購入マンションもそれ以上に高く値付けされていました。
後者は、全く買う気がなかったにも関わらず、いつか都心へ住み替えたいと、心の奥に仕舞っていた願望が知人の話によって刺激された結果の買い物でしたが、いま思えば、そのマンションはとても安かったのです。
都心なので、それなりの価格ではあったのですが、値上がりトレンドを描く手前の時期だったからです。
●買いどきに買いたいと思わなかったと悔やんでも仕方ない
家は買いたい時、買わなければならない時に、都合よく安値である確率は低いのかもしれません。ライフステージと購入時期とは無関係ではありません。結婚、子育て、転勤、定年、子供の独立などとマイホームの購入や売却は密接に関わっています。
高度成長期に社会に出た人、バブル期に就職した人、バブル後のデフレ時代に少年期にあった人、高金利時代にマイホームを買った人、バブル時代に郊外で買うしかなかった人、低金利のローンでマイホームを買えた人、バブル後に都心でマンションを買えた人など、例を挙げればキリはないですが、それぞれの人生は経済や社会構造の変化など、時代背景によって良くも悪くも影響を受けるのです。
人生のイベントの中でマイホーム購入は重みあるものですが、タイミングが悪いとしても、それを不運と嘆いたり恨んだりしても仕方ないことです。つまり、5年前に買っていたらなどと考えても、死んだ子の年を数えるようなものなのです。
過去には、高値で買ってしまったために売るに売れず苦しんだ人もあったでしょう。売れた場合も、その損失額が半端なものではなかったという人もあるはずです。
しかし、経済的には損失だったとしても、そこに住んでいた時間は、大きな「精神的利益」を得て余りあったはずです。
幸福はお金で買えるものばかりではありません。また、幸福をお金に換算することはできないと思います。
そこに住んで得られる幸福感や、住まいの満足感を「使用価値」としましょう。「使用価値」は、個人の価値観や家族の事情などによって幅があるもの、その大きさは他人には測り知れないものがあります。
つまり、場所を含め、快適な暮らしができそうなマンションであるなら、どんなに高額であっても、また値下がりして経済的な損失を被ったとしても、その決断は間違いでないことが多いのです。
●「高いけど買うことにしました」のお便りに拍手
歴史を振り返ると、マンション価格は上下動を繰り返して来ました。突き詰めると、物の値段は需要と供給の関係で決まって来るもので、材料費が上がった、人件費が上がったなど、供給者側の事情から値段を付けても、買い手の購買力がついて来なければ需要は減退し、売り手は値段を下げるほかないのです。
マンション価格もバブル経済崩壊後に大きく値下がりしましたが、2000年頃に底を打ちました。その後、2005年頃から再び上昇、2010年にはまたまた値下がりに転じ、最近は2013年に急転、前年比8%も上がりました。2014年以降、2016年まで上昇トレンドは続きました。
では、今後の見通しはどうなのでしょうか? 多くの業界人が言うのは2020年までは下がることはないというものです。
とすれば、価格が低下し、買いやすいレベルになるのは早くても2021年以降、2022年か2023年頃となるのです。
そう聞けば、「そんなに待てない」と感じることでしょう。それぞれの購買動機から見て自然な想いです。
しかし、もっと早い時点で値下がりに転じることはないのでしょうか? 絶対ないとは言い切れないはずです。
価格が下がっても金利が上がるかもしれません。住宅減税などの支援幅が狭くなっている可能性もあるのです。
このようなことを深く掘り下げて行くと、購買環境の変化を予測するのは簡単でないことに気付くことになります。としたら、あまり先行きを考え過ぎても仕方ないというのが結論です。
5年も6年も待てない事情があるなら、高い物件でも買ってしまう選択は悪くないのです。
「思い立ったが吉日」「善は急げ」の格言を思い出してみて下さい。
このような結論に達した人は、「高いけど買います」そう言って決断されました。そのことに拍手を贈りたいと思います。
※最後に:買いたいときが買いどき
「買いたいときが買い時」という考え方もあります。お金儲けの才能に恵まれた人や賭け事が得意な人が世の中にはたくさん居ると聞きます。筆者の身近なところにも、その種の御仁がいます。
未来やチャンスなどを読む才能に恵まれた人はともかく、そうでない人は今のような時期にどこへ拠り所を求めたらいいのでしょうか?
考えるほど混乱するばかりという人も見られます。また、急がないとますます高くなるという焦りが先走り、現場の営業マンの口車に乗せられてしまう人もあるようです。
こんなときは、「買い時はいつか」を考えない方が良いかもしれません。買い時は貴方にとって常に“今”だからです。
見学したとき、この場所、このマンションに住みたいと感じた、その気分を大事にすることですね。
「買いたい」そう思ったときが買い時というわけです。そう考えれば後悔せずに済むことでしょう。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。
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