なぜか私あてには重ための質問が回ってくることが多いのですが、理事長をクビにしたいというご相談。
スムログブロガー中では理事会ネタはまぁ私に回答せよと振られることが多いです。回答も長くなるので、前後編にします。
質問は..
質問者のお名前は多分実名かなと思えたのでAさんに代えています。
差出人: Aさん
メッセージ本文:
うちのマンションは輪番制の理事長です。それなのに3年やり続けて、来期もやるらしいのです。役員交代の名簿には理事長の名前はなく、理事だけの交代でした。一度揉め事がありその件が決着着くまでと、ズルズル4期連続で勝手にやってます。今年こそはやめさせたいのですが、どのような手続きが良いですか?
理事の方と知り合いなので聞いてみると、春の総会も理事会抜きで、管理会社と理事長だけで日程、議題を決めて後から話しがあったと言っています。女性ばかりの理事で圧迫感のある人物なので、みなさん何も言えません。
管理会社と癒着しているのか、何度も廃案になった工事を来期でもやろうとしています。この人物を承認しない正しいやり方を教えてください。
総会までには理事長の交代をさせたいです。総会では3年間の理事長の悪事を追及したいと、有志で考えています。
お答えする前に
質問に書かれている情報だけでは正しく回答することは不可能です。Aさんのマンションの規約規定に関わる言及がないためです。その指摘と私がお奨めと思う方法までを本ブログで前篇とします。理事長を解任したり、あとは次期理事長選任でほかの人にするなど、ある特定の人物の理事会内での影響力を小さくする方法の一般論については後編で扱いたいと思います。コメントなどを、ここのコメント欄につけてくれれば、それは私にしか見えないまま確認可能ですから、もう少し正確にコメントできるかも。
私は、過去8年理事会で、理事長ではありませんが、財務・営繕に関わるポジションはずっろ継続してきていて、多分あと2年やるのもほぼ確実です。理事会に自分は入る気はないのに特定の人物だけ引きずりおろしたいというのが感じられる人にはかなり冷たい答えかもしれません。
誰かを理事長から引きずりおろそうとするからには、Aさんが代わりに理事長をやる覚悟は「当然」あるわけですよね??
この手のお家騒動は、組合にかなりの傷を残します。理事としての泥沼の地位確認訴訟に勝訴して、理事長になってみたら、誰も理事会にでてこないので必ず流会する理事会を手に入れたとかな実話も知っています。こうなると何も決議できないから理事長になった意味皆無ですよね。大前提として、Aさん本人がこの理事会の傷を解決される覚悟はあると仮定して回答させて頂きます。
規約・細則の理事/理事長の選任や解任規定はどうなのか?
今回の質問で一番不思議なのは「輪番制の理事長」という部分です。輪番で理事を選ぶマンションは珍しくありませんが、『理事長が輪番』ってのは過去に私は聞いたことがありません。【101号室が一期の理事長?】もともと輪番制は、立候補だけでは理事が埋まらない場合の必要悪として導入されている場合が多く、少なくとも理事選任の場においては、立候補者がいればその人が優先して採用される運用のマンションのほうが多数派です。
明確に、規約・細則など理事会の決議より上位の規範に、立候補は認めない・理事の多選の連続年数には上限を加えるなどの明文規定がない限りは、理事会が次期理事会役員名簿を通常総会の最終議案に上程して、それが過半数決議で総会で可決されてしまえば、その理事(理事長ではないです)の正統性に疑義有りで争うのは困難でしょう。
理事をどう選び、その中から理事長をどう選ぶは管理組合ガバナンスの根幹部分で、規約中に一切規定がないはありえません。うちは輪番制だというのが、たまたま過去にその例が多かったから..理事長が4期目になるから…という理由で理事長が次の期に理事にでてくるのを食い止めたいというのはちょっと困難です。
例えば私のマンションは、明確に立候補は輪番に優先する規定を役員の選出細則においているので、例えば来期私が理事に立候補しますが、”理事になるのを止める”方法は、改選される人数13名を超える14人の立候補者を出した上で、さらに互選の会で私を落とす以外では存在しません。多選の禁止規定もなく何年でも”理事”をすることは可能ですが、理事長のなり手は少なくて、過去8年で理事長は5人が入れ替わりで勤めました。
正しく運営されている理事会では、基本なんでも理事会で決めないといけないわけで、実際には理事長は理事会では1票をもっているだけです。決してそんなにうまみのあるポジションではないので、やりたがる人は少ないのが通例です。
”標準管理規約準拠”の規約の場合
一定レベル以上のマンション管理組合だと理事の選任ルールは細則を規定するなどで自分でカスタマイズして明文化しているのが普通です。一方でごく一般的なマンションだと「標準管理規約」という規約のひな形に準拠した規約が初期設定(原始規約といいます)されて、そのままずっと使っていることも多いです。もちろん、Aさんのマンションの規約・細則に定めがあればそれが優先します。ここでは質問には何も書かれていないので、”標準通りである”と仮定しましょう。標準管理規約通りなら選任の規定は、
-理事と監事は総会で選任される
-総会で選ばれた監事を除く理事の互選によって理事長は選ばれる
-役員は再任を妨げない
であるのが普通で、選び方が立候補・輪番など具体的な選任方法には規定がないケースの方が多数派です。
重要なポイントは”理事長”は総会で選ばれているのではなく、理事であることが総会で確定したのちに、監事を除く理事のみの”互選”で選出しなおさないといけないというのが標準管理規約通りなら決まりになっていることです。
日本の総理大臣も選挙ではなく議会で選ばれますよね。理事長は間接的に選ばれることから、その人事をなんとかしようという場合には、ある人物が理事長になることを止めたいという人が、”理事”として互選に参加できることが決定的に重要です。
Aさんは今理事ではありません。誰を”理事長”にするかの互選には参加できないことになり、これはとても不利です。どうみてもまず理事にならなければ互角には戦えないわけです。
輪番だからダメだと言っても、上記のように総会ー互選を経て決まってしまうとその正統性を争うことは困難です。一方で、理事にはなっても構わんから、理事長にはしないというのが目標なのであれば、理事会の過半数をその人物への反対派で押さえれば、ある人を”理事長にしない”とことは可能です。
<区分所有法・管理規約で中級以上な人はもれなく
持ってる逐条解説本2冊。うちは組合で買いました>
”総会で暴れる”のは逆効果
工事の中には、法的に必然(必須)の工事もあり、”同じ工事を毎年やろうとしている”だけでは、”管理会社と癒着している”証拠とはなりません。過半数支持が確保できないから工事はずっとできていないわけで、きちんと民主的に暴走?は止められているわけですから、理事長が手続きに従っていないわけでもないようですので、書かれている範囲ではどこにも”違法性”は感じられないです。まさかAさんと反りが合わないから理事長をクビにしろは無理でしょうし。管理会社に工事を発注するのはごく普通にあることです。それが異常に高額であり、かつ理事長がペイバックを貰っている証拠がなければ「癒着がある」と発言するのは極めて危険です。その具体的な証拠を提示できなければ、公の場の発言なら逆に名誉棄損で訴えられるかもしれません。
質問の内容だけで”理事長”を解任するのは難しく、例えば管理費の不正流用の確実な証拠でももっていない限りは、理事会の中に入ってもいない人が理事長相手に勝負を挑んでも勝ち目は少ないと思います。このパターンでは負けると自分はマンションにずっと住んでいることができなくなる位の覚悟は必要です。余程のことでない限りは総会などの公式の場や文書など証拠に残る形での”癒着”などの発言はやめておかれたほうが吉だと思います。(実はうちのマンションでも一人マンションをそれで出ていくことになった人がいます)
おすすめは..
書かれている質問の文章から、Aさんは個人訴訟でヘビーに裁判を闘って勝ち抜けるだけの区分所有法・規約などへの知識はないことが分かります。本気で問題があるとお考えで解決したいならお奨めしたいのは、”暴れる前に”お金を払ってプロの弁護士に相談することです。正義感から総会を炎上させてみたところで、案外住民の過半数の賛同というのはとれないものです。なにか総会で怒っていたちょっとおかしな人だと思われてしまう可能性は高いです。
”理事長”をどう選ぶかについては、”理事の互選”の可能性が高いので、総会などで大暴れして、この人たちは変な人なので理事の候補にはしませんとかで排除されてしまう前に、黙ってそっとまず理事に立候補して、まずは理事になってしまってから行動を起こしたほうがはるかに有利です。有志の方も他に何人かおられるようですし。
さらに、理事長が過去に不適切な行いがあったで証明しようとするなら、役員でなければ十分な情報に触れることができません。工事一つとっても、例えば相見積などの詳細情報の全てを理事会は全住民には通常公開はしていません。持ってる情報量は桁違いに理事会に所属している側が有利です。
私のような中級クラスではなく、マンションの組合関連のシビアな訴訟を多数扱ってきた弁護士・マンション管理士の桃尾俊明さんのブログのほうがここは参考になるでしょう。
「ゴジラに学ぶ管理組合における戦い方」
http://momoo-law.hatenadiary.jp/entry/2016/08/28/004903
を是非、総会などで暴れてしまう前にご覧ください。
既に長いので、「Aさんの主張に正統性があるとして」(この部分は私にはわからない)どうしたら理事長ってクビにしたり、次期理事長になることを止められるかという話は続編に続きます。
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本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
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