首都圏・東京のフラット35利用者は、世帯年収の何倍の価格の新築・中古マンションを買っているのか、という話。
目次
年収倍率の経年変化(11~22年度)
10年前であれば都内の新築マンションでも5千万円以下で手が届いたのに、最近は8千万円出してもなかなか気に入ったマンションは見つからない。普通の会社員がフルローンで億ションを買って大丈夫なのか。何らかの目安はないのか。
じつは、住宅金融支援機構が毎年発表している「フラット35利用者調査」に掲載されている「年収倍率」(=マンション購入価格÷世帯年収)が参考になる。あなたが買おうとしているマンション価格にムリはないのかどうか、判断材料にされてはいかがだろうか。
首都圏|新築 6.2→7.5倍、中古 5.0→6.0倍
まず、首都圏で新築・中古マンションを購入した人の年収倍率の経年変化(11~22年度)を可視化してみよう(次図)。- 新築マンションの年収倍率(緑色実線)は、新築マンションのm2単価(緑色破線)の上昇に呼応するように、6.2倍(12年度)から7.5倍(22年度)まで上昇している。
- 中古マンションの年収倍率(橙色実線)は、中古マンションのm2単価(橙色破線)の上昇に呼応するように、5.0倍(12年度)から上昇し、18年度には6.0倍まで上昇するも、その後は頭打ちとなっている。
中古マンション購入者は、m2単価が上昇し過ぎると、専有面積を抑えたり、駅徒歩時間を妥協したりして、年収倍率を抑える(背伸びしない)、あるいは購入を諦めているのではないか。
東京|新築 6.3→7.9倍、中古 5.4→6.7倍
次に、東京(※1)で新築・中古マンションを購入した人の年収倍率の経年変化(11~22年度)を可視化してみよう(次図)。※1:年収倍率は東京都、㎡単価は東京23区のデータを用いた。
- 新築マンションの年収倍率(緑色実線)は、新築マンションのm2単価(緑色破線)の上昇に呼応するように、6.3倍(12年度)から7.9倍(22年度)まで上昇している。
- 中古マンションの年収倍率(橙色実線)は、中古マンションのm2単価(橙色破線)の上昇に呼応するように、5.4倍(12年度)から上昇し、18年度には6.5倍まで上昇したあと頭打ち。21年度から再び上昇し22年度は6.7倍。
中古マンション購入者は、m2単価が上昇し過ぎると、専有面積を抑えたり、駅徒歩時間を妥協したりして、年収倍率を抑える(背伸びしない)。
ただ、首都圏と違って東京の場合はm2単価がさらに上昇すると、年収倍率も上昇するのは新築を諦めて中古に流れてくる人の影響ではないか。
年収倍率の頻度分布(22年度)
さらに、年収倍率のどのあたりが多いのか、22年度の頻度分布を見てみよう。首都圏|新築「11.0倍~」突出、中古「5.5~5.9倍」最多
首都圏で新築・中古マンションを購入した人の年収倍率の頻度分布を次図に示す。- 新築マンションの年収倍率(緑色線)は、「11.0倍~」が突出していて全体の12%を占めている。次いで「8.5~8.9倍」が8.0%。
※「11.0倍~」のなかには、背伸びをし過ぎている人だけでなく、親からの支援や相続を受けた人たちなどが含まれている可能性があることに要留意。 - 中古マンションの年収倍率(橙色線)は、「5.5~5.9倍」が最も多く全体の7.4%を占めている。
東京|新築「11.0倍~」突出、中古「5.5~5.9倍」最多
東京で新築・中古マンションを購入した人の年収倍率の頻度分布を次図に示す。- 新築マンションの年収倍率(緑色線)は、「11.0倍~」が突出していて全体の13.6%を占めている。次いで「8.5~8.9倍」が9.3%。
※「11.0倍~」のなかには、背伸びをし過ぎている人だけでなく、親からの支援や相続を受けた人たちなどが含まれている可能性があることに要留意。 - 中古マンションの年収倍率(橙色線)は、「5.5~5.9倍」が最も多く全体の7.6%を占めている。
年収倍率11倍以上でまとめていてどの辺りが多いのかわかりません。一般的な最頻値の求め方として適切なのでしょうか。
例えば1.0刻みなら最頻値は11倍以上ではなく、平均値7.9に近い8.0-8.9の区分が20%弱になり、最頻値になるように思えます。
はるさめさん、コメントありがとうございます。
年収倍率のスライスレベルは、マン点が決めたのではなく、元データである「フラット35利用者調査」のデータがそのように設定されています。
ちなみに、投稿記事では「最頻値」には触れていませんが、中央値を記載しています。
たとえば、東京の22年度の新築マンションの年収倍率の中央値は、グラフに記載しているように「7.9倍」となります。