2つほど私かな?ってな質問が来ていました。より短い”管理組合の法人化のメリット”ってのは書き出すと結構長編になってしまいそうなので、こちらから。割と例が具体的でお急ぎかもしれないので。
質問は…
差出人: ちんさん
メッセージ本文:
こんにちは。はじめまして。
いつも楽しく拝読させていただいております。
マンション購入にあたり、色々なモデルルームを見てみたり、色々な記事やブログを参考にしたりしているのですが、どうしても何が正しいのかわからないことがございます。
直床と二重床についてですが、あるところでは『二重床の方が遮音性にすぐれている』。またあるところでは『直床の方が遮音性は高い』などと書かれています。
配管などの埋め込みによる直床・二重床のデメリット・メリットは納得できるのですが、 遮音性のみについて考えると実際どうなのでしょうか?
小さな子どもがいるので、将来のリノベーションなどよりも、とにかく遮音性を重視したいと考えています。
今考えているマンションが、『スラブ厚220mm以上の直床使用』との事なのですが、このスペックの遮音性が実際どんなものなのかもご教授いただけると幸いです。
結論から言えば
小さなお子さんの歩行などによる下階への生活音の遮音について気にされているのであれば、重量衝撃音の伝搬について気にされていることになりますが、少なくとも”直床”であることによって遮音が劣るということはありません。ほかの条件が気にいっているのであれば、「直床」であるから購入をやめるといったものではありえませんので、安心して購入に進まれたらよろしいかと思います。
220mmのスラブ厚だから安心という場合には、それが中まで全部コンクリでできているのかボイドスラブなのか(同じ厚みだと少し遮音性が劣ります)を確認しなければなりません。中実スラブであるなら、平均以上を期待してよい仕様レベルかなと思います。
なお今は床方式によらずに、スラブの中に配管が埋め込まれているような設計は通常はありません。
実は全く同じ躯体に対して、標準的な仕様で設置された直床と二重床の場合、「直床で施工したほうがやや遮音面では有利である」というのは、現行のマンション設計者の間では、定説ではないかと思います。いろいろな建設会社が、”直床に匹敵する遮音レベルを確保可能な二重床の施工方法”みたいなレポートを最近だしてきています。
ある一定以上の坪単価のマンションであれば二重床を採用することを否定するものではありませんが、今ではモデルルームの販売担当者でもよほど不勉強な人でなければ、”直床は二重床に遮音で劣る”とは説明していない筈ですが、一度”誤解”が広がるとなかなか是正されない典型例な気もしています。
以下のように常識って人は少数派です。実際に体感としても二重床は直床より不利ですね。私は今は二重床に住んでいますが過去には直床の経験もあります
https://twitter.com/haruboo0/status/837796713645539328
<少なくとも二重床は遮音上直床より不利というのは常識にはなっていないようですね>
そもそも二重床が多数派なのは首都圏だけ
タワーのように純ラーメン構造を採用していて梁の太さを非常に太くしないといけない場合にはその影響を避けるためもあって、3mをかなり超えるような大きな階高(スラブから上の階のスラブまでの高さをいいます)を確保することが必須なために、ある意味“自動的に二重床”となってしまいます。タワーの場合だけはどこであっても直床は少数派となりなります。一方そうではない通常のマンションの場合(14-15階程度のものが多数派かな)数年くらいまえに調べたことがあるのですが床を二重化する割合が大きい(それでも過半数ではありません)のは実は首都圏だけで、関西や中部地方では直床で施工する例が圧倒的です。”首都圏”でも二重なのが過半数なのは実は東京都だけじゃないかと思います。都内でも住友さんなんかは都心でも割と最近まで直床がごく普通でしたしね。
では関西や、中部地方のマンションでは圧倒的に高率で上下階の騒音問題が発生しているかというとそんなことはありません。もちろん床も天井も二重であるということには、主に意匠面で室内空間をすっきりさせやすいという面でのメリットはあります。一方で、リフォームが容易だからという話を聞くとどうかなぁ・・・と疑問も。
床を二重化させると、そのコストのほかに、同じ室内空間を確保するという仮定のもとでは、上とのスラブ間隔を大き目に確保しなければなりません、この両方でかなりのコストアップになるために、どうしても直床で作った場合と比較するとお値段がちょっと高くなります。これを正当化したいあまりに、二重床のメリットを強調しすぎていたり、直床Disりに走りやすいのか、二重床以外はダメみたいな喧伝のされかたをしてきたのは問題かなぁと。
全国的に、大規模マンションの土地持ち込みでの特命受注をうけて多数のマンションを建てているマンション専業の大手ゼネコンさんが、割とマンション”ヲタク”的には好まれない、割と階高圧縮ぎみであるとか、壁が二重である(戸境の壁を二重にするメリットはあまりありません)といったコスト削減系の仕様を採用していて、直床も標準仕様としてきたために一緒くたに嫌われていることもあるかなと思っています。
普及版の二重床は、直床には少し遮音が劣る
これは10年ちょっと前くらいまでは、実際にそう思われていたわけなのですが、主として首都圏で活躍する住宅評論家さんに直床嫌いの人が多かった過去をひきずっているような気がしています。建築士資格をもった評論家さんでも、意匠設計が専門の方は、構造や、設備は専門からは少し離れますし、構造・設備面の進歩は日進月歩なので現場を離れて10年も経過すると、直床だと、住宅内の給水が一度天井を回す鳥居型配管になるから、ウォーターハンマー現象が起こるからダメなんてへんてこなことを書いていたりします。(今主流のさや管ヘッダー工法の場合にはかなり不適切)
「二重床は遮音性が高い」と言う話は正しくありません。
むしろ品確法での評価基準では、同じスラブ厚であれば、とんでもなくお金をかけた遮音方法を採用しない限り、1段劣った評価をつけなさいということになっています。
ブログ 『マンションを考えるヒント』を書かれている現役の設計者の高橋健介さんのブログの記事に明確かつじっくりとまとめられているので、どうしてそのような誤解が広がったのか、また実際のところはどうなのかについてはこちらをご覧ください。
… このブログでは、よく世の中に出回っている誤解”15階建てマンションは必ず避けて14階を選ぶべき”が間違いであることも論拠をしめして書かれていて、とても理系的なので私は愛読させていただいています。
直床・二重床については20編ほど書かれていますが、とりあえずはこのあたりを読めば雰囲気はわかるのではないかと思います。【高橋様には引用を承諾していただきました】
『二重床と直床の遮音性(誤解の理由と遮音の歴史)』
http://mansionnavigate.blog.fc2.com/blog-entry-53.html
『CASBEE(建築環境総合性能評価システム)の記述』
http://mansionnavigate.blog.fc2.com/blog-entry-60.html
<高橋さんのブログから:
子供の足音などは、重量衝撃音となり乾式二重床はほぼ一律マイナス評価。スプーンを落とすと聞こえるから柔らかいものを敷けとかは軽量衝撃音。
実は、梁に囲まれた”スラブ”の面積を小さくするのが大事だったりしますが、小梁を入れると見た目は悪化します>
直床 .vs. 二重床 の問題はそのうち続編でも
二重床なら、水回りのリフォームは容易という誤解、単に部屋数を変える(分けるくっつける)リフォームでも安くはならないこと
床方式よりも遮音に影響が大きいもの
そもそも上の生活音が聞こえないということは起こりえない
など、気が向いたら続編にしますね。
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
最近、首都圏で直床の物件を契約した者です。
坪単価も高く、その他の仕様は満足いくものだったのですが、直床だけ残念に思っていました。
市場でのイメージはともかく、機能上は二重床と比べて全く劣ることはないと知ることができ、すっきりしました。
直床は ”遮音は変わらないかむしろいい” だけで
機能上全く劣らないとは書いてないですよ。。。
例えば直床はバルコニーにでるとこの掃出し窓が段差なくでられるように
なってなくて最近のでも少しサッシの下はしが上がっていて、部屋からみたら
掃出し窓が浮いているように見えたり
Optionで石貼りとか、タイル貼りとかは選べなかったりはしませんか?
また多くの直床を手掛ける会社のうち一社が、非常に柔らかくて歩くと
ぐにゃっとする感じの床材を使う傾向があって(別でそうでないのも
あるのですが)私はそれは好きではありません。
直床であることの直接のデメリットはこれくらいなのですが、どうしても
”直床”であることを利用して、マンションの階高を圧縮する方向にコストダウン
を測るデベも多くて、そのパターンでは、北側の拠出の窓の上や、玄関の上に
大梁が以外な低さで圧迫感をもって迫ってきたりします。
。。。。私は割と背が高いので、玄関が低いのはいやなんでwすよね。
で、こんなブログは書いていますが、うちは二重床二重天井です。
二重床にもいい点はあるんですが贔屓の引き倒しはよくないよねとも
二重床に慣れてる身にとっては、新築マンションの内見時の直床を歩くと、クッション材のためフワフワした感じがして違和感を覚えたことがあります。直床は長谷工施工のマンションに多いですね。
はるぶーさん、
意図をきちんと理解できていなくてすみません。
二重床には二重床なりの、直床は直床なりのメリット・デメリットがあるということですよね。
私も直床のフカフカ加減は違和感あります(入居予定のはそうです)。慣れるのかな、とは思いますが…
ともあれ、参考になりました。
ありがとうございました。
以下のように丁寧にご連絡を頂きました。
回答が役にたったようでよかったです。
差出人: ちんさん
メッセージ本文:
はるぶー様
このたびは投稿させていただいた疑問に、わかりやすくお返しをいただき誠にありがとうございます。
大変参考になりました。
今考えている物件を購入することに決めました。
こんなに早くお便り返しをいただき大変助かりました。
本当にありがとうございましたm(_ _)m
そもそも長谷工は何故二重壁にするのでしょうか?
床と同様壁も二重にすればその分コストも上がる気がして、、、(素人で申し訳ないです)
直床直壁二重天井が一番快適性とコスト削減を追求できるのではないかと思ってしまいます。
あまり上手でない職人さんが作る場合を想定して、床側は重力を利用して水平に施工できるのですが、
壁を垂直に施工して、そこに壁紙を直貼りできるようにするにはかなりの技量が要ります。
多分壁が2重にしたほうが容易に精度が出しやすいんだと思います。
遮音で不利になるほか、家のスパンを両側で食いますから内法が小さくなる分損なわけですが、
一方で、湿式の壁に直接クロス貼りする場合と異なり、施工後の収縮などによるトラブルは
でにくくなります。 クレーム数の低減を最重視するなら、二重壁にも利点が皆無というわけでも
ないのかもしれません(私はでデメリットが大きいよ考えるので嫌ですが)