一昨年から昨年にかけて新聞など多くのメディアで『標準管理規約』の改定案が話題になっていました。『コミュニティ条項』が削除という改定がなされてしまうと、管理組合は夏祭りや忘年会などへの拠出ができなくなるという誤った記事などもでていて、混乱を招く可能性が高いことから、この改定には反対する立場から、最終的に16の管理組合(総戸数は1万戸以上になります)で意見書を提出して、その一部が国交省のコメントなどに反映されました。
その意見書のとりまとめをした、梶浦明裕弁護士が、それを膨らませて本にされました。今日からアマゾンで売っていますので、「管理組合とコミュニテイ活動」に関心のあるマンション管理組合に関わる全ての方にお奨めします:
『マンションとコミュニテイ活動
法的には夏祭りも忘年会もできます
平成28年標準管理規約改定によるコミュニティ条項削除を受けて』
長い表題ですねぇ・・・これ全部タイトルになるみたい。
もともと kindle で売っていたのですが、ソフトカバーの本の形でも入手できるようになりました。 おのおのAmazonでの購入はこちらから可能です。
ソフトカバーの”紙”の本はこちら
kindle での購入はこちらから
<2冊ももらっちゃいました>
著者の方による説明
(本そのものの写真とともに許可を受け転載します)マンション管理組合は夏祭りや忘年会などのイベント(催事)を含む「コミュニティ活動」をすることはできないのか。
国土交通省が平成28年3月、マンションのルールである「管理規約」を作る際に参考とされ、モデルにもなっている「標準管理規約」を改定し、コミュニティ条項を削除した。これに伴い、コミュニティ活動について否定的な新聞報道がなされた。
しかし、法的な結論は「できる」以外にはない。
本書の特徴は2点。
1点目は、マンションとコミュニティ活動の問題についての結論と理由を、マンション管理の現場の皆さんが知りたいと思われる項目ごとに整理し、かつ、区分所有法に馴染みのない皆さんにも分かりやすく解説した点である (Q&A方式を採用)。
2点目は、マンションとコミュニティ活動の問題(さらには管理組合が行い得る業務の内容=区分所有法第三条の「目的」の解釈)についての法的論考を裁判例と各種論文等を踏まえて追求し、筆者の見解を明確に示している学術論文である点である。
はるぶー書評
弁護士の本気の文章をまとめるとか、コメントするには100年ばかり早いので、ここはこの本にも少しだけ関わった私の雑感:今回改正されたのは”標準管理規約”で、別にその元になる区分所有法などの法律が変わったわけではありません。区分所有法には、”規約で別途の定めをすることを妨げない”との記載が無数にでてきますから、その規定のある条文(規約留保といいます)についてはその条文に対応するマンションの規約が法律の延長戦上としての働きをします。分かり易くそのマンションの規約は区分所有法の一部ですといってもよいかも。
一方で、”標準”管理規約は、現行の法律に無矛盾に作成された一つのひな形に過ぎません。法律とは異なり、既存のマンションがそれに準拠して自身の規約を書き換えるかどうかは任意ですし、あるマンションの規約を変更するためには、全戸の3/4以上の賛成を総会で集めなければなりません。
いくつかの大手の新聞に”標準管理規約”が変わったから、もう来年の夏からは”夏祭りができない”(?!)という記事が載ったのは明確に間違いだったわけです。
私が、この本に関与したのは、理事会などで話題になった場合に使いやすいようにとの実務的な立場で、ちょっと意識高めの理事の方が手にとったときの敷居を低くするという部分だけです。このまんまでは私のレベルではついていけない・・・とか読んでコメントを送っただけですが。
結果として、Q&A形式のサマリーが先についた上で、その回答への法律的な理由などの詳細解説は別途のところに飛ぶことで、理事会役員にとって最も気になる部分を先にもってきているほか、では実際によくある「自治会費訴訟」など、管理組合がコミュニティ関連の拠出を行った結果として、裁判で負けた例などをとりあげて、どこに問題があったのか、裁判になっても負けないように進めるにはどうしたらいいかという部分などが詳述されている部分は、とても読み応えがあると思います。
Kindle 版のほうがかなり安いですし、携帯にいれて持ち歩けますから、理事長さんなどの個人的な研鑽目的であればkindke 版で全体を読むのにお奨め。
一方で、「コミュニティへの拠出」の問題で悩む理事会でポイントを絞っての回し読みをする目的には、今回紙の本としてでたものがお奨めかなと思います。
<目次はこちらです(これまた著者許可済み)>
〇コミュニティ関連の拠出や、全戸徴収などで裁判になった事例が網羅されていて、組合が裁判で負けた事例では、どこがよくなかったのか? どうしていれば負けずにすんだのか。
【”自治会費訴訟”は過去には、むしろ平均を超える運営をしている管理組合理事会が「標的」にされた例が多く、わずか数千円のためにどうみても数百万かけて戦っているなど、メンツの闘いになっている例が散見される】
〇では”改定後”の標準管理規約に準拠した原始規約をもった組合では、はたしてコミュニティ関連の拠出は可能なのか?否か??
【今後分譲されるマンションでは準拠してくるものと思われる】
明快な回答は本にでています。是非ご一読をお奨めします。
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
まず第一に管理組合におけるコミュニティの定義が曖昧で、管理組合における資産管理・住生活秩序維持を遂行するためのコミュニティ形成と、町内会・自治会における相互扶助・地域社会形成のためのコミュニティ形成とが、マンションの場合はごっちゃになってるような気がします。点と面の違いかと思います。
弁護士が書いた本なら法的根拠の裏づけが明確になるので、これから買って読みます。読後感は読み終わってからです。
あるマンションが、管理組合が自治会町内会的な機能も兼ねるか、あるいは別別に組織するか、はたまた住民に地区の町内会に勝手に個人加入しろというかは、マンションの”自治”の問題であって、もともと区分所有法は、最大限それを尊重できるように”規約留保”は多数とりいれて作ってありますね。
本を読んでもらえばわかりますが、もともと改定標準管理規約には、国交省コメント部分に、”今のまま規約を改定しないでコミュニティ拠出を行うと” ”過去の判例などから” 違法である可能性があるとのコメントが書かれるところでした。 そんな判例は存在しないというのも6つほどの判決が何を判示しているかを含め詳述されています。
逆に自治会が別にあるなどで、1円も管理費からはコミィニティには金はだしたくないという場合にはどうすればいいかのヒントも本の中にあります。単に改正標準管理規約に準拠しただけではそこまでは言えない根拠など。
ま書評への感想ですから是非読んだ上で。
読みましたが、読破した人は何人?法律書に近いので読むのかなりしんどいです。
それはともかく、やはり「コミュニティ」の考え方の問題ではないかと思います。
区分所有法第3条規定の管理組合構成必然性を考えると、
■組合員は管理規約・総会/理事会決議を遵守し、集合住宅の適正な維持管理に協力しかつ規律と秩序のある共同生活を営む。
■理事会は組合員との意思の疎通を図り、管理組合業務の執行機関として精励し業務を遂行する。
が組合員と執行機関理事会のミッションですが、管理組合におけるコミュニティ形成とは「管理規約・総会/理事会決議を遵法するための執行機関理事会⇔組合員の縦の繋がりの形成」ではないかと考えます。
その観点から見ると「横の繋がり」に重点を置いた夏祭りやクリスマス会や忘年会の催事で「縦の繋がり」が本当に強化できるのか?は甚だ疑問です。
むしろ「執行機関理事会と組合員間のシームレスな意思疎通を図り、組合員の管理組合業務に対する意識と関心を高め遵法させる啓蒙活動」が管理組合のコミュニティ形成の原点ではないかと思います。
夏祭りやクリスマス会や忘年会が出来る出来ない、管理組合が自治会費の徴収が出来る出来ないの議論以前に、管理組合の原点に立ち戻り「管理組合のコミュニティ形成とはいったい何なのか?」を考えた方が良いと思います。
この原点議論が疎かにされてるきらいがあります
それは法律家の仕事ではないですよね。
”祭りだのクリスマス会”だのの費用を、”管理費から拠出するのが” 違法か否かであれば
まぁ決着がついたわけで、後は、組合の自治範囲ですから、やりたければ払えばいいですし、
完全独立な自治会があって、そこに任せたい、変な支出はしたくないという場合には、
この本にも書いてある通り、その旨を明示的に自分のマンションの規約に書きこめば
これはこれで有効になります。
これとは別に私自身の考える”コミュニティ論”はそのうちなにか書いていこうかなと
思います。うちのマンションが、”コミュニティ委員会”を立ち上げて、自治会から一部の
コミュニティ活動を受託で受ける方向にするんでいるのとは別に、私自身は、管理組合
あるいは自治会による”中央集権”的な大きな祭りなどの開催に役員の大きなリソースを割く
ことには否定的です。 自分の思っている通りに規約を書けるとは限りませんよね。
法務担当としては、理事会の多数に従うのみです。ちょっと疲れる(やりたくはない)
規約書き換えを延々を準備中です。