第57回 老後はマンションか一戸建てか

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このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

 

勉強家の読者の皆さんは、昨今の一戸建て(建売住宅)がマンションより安いという報道をご覧になっていることと思います。

 

駅から近いマンションと駅からバスに乗る一戸建て、あるいは眺望に優れ、管理人とコンシェルジュから各種サービスを受けられるマンションと、狭小敷地で眺望も日当たりも良いとは言えない建売住宅、長持ちするマンションと耐久性で劣るかもしれない木造家屋、こう書くとマンションの方が優れているように思われるかもしれませんが、一概にそうとも言えないのです。

 

マンションでも駅から遠いものも眺望が良くないものがあるわけですし、耐震性能が「1」のマンションに較べ、同「3」の優れた一戸建てもたくさんあるのです。

 

ともあれ、全てのマンションとすべての一戸建て(建売住宅)をそれぞれ一緒くたにして1戸平均価格を算出してマンションが一戸建てより高いと称しているのです。

 

この比較が果たして、どれだけの意味を持つのか、筆者は疑問を持っています。

 

ともあれ、長年マンション住まいだった筆者が一戸建てに住むようになって10年、再びマンション住まいに戻る計画を立てている今、改めて「老後の住まいはどちらがいいのだろう?」そんな思いに至っています。

 

●マンション価格が急騰した原因

さて、管理費と修繕費が毎月の固定経費として出て行くマンションと駐車料金も要らない建売住宅といったふうに対比して行くと、どちらが優れるとは言えないのであり、最終的には価値観や人生観の問題に関わって来るのではないかと思います。

 

同じ予算で探したとき、東京圏ではマンションの予算でマンションより床面積が広い家が買える状態にあるという現在、それならマンションをやめて一戸建てに目を向ける人たちが増えても不思議ではありません。

 

マンション用地は一定の広さが必要であるし、駅から遠いマンションは売れないので駅に近く、かつ都心からあまり遠くないことなどと要件が一戸建てより厳しいので、入手が難しいのです。マンション向きの優良な土地は、嫁一人に婿10人となるので、買収価格も高くつきます。これに対して建売住宅用地は、売地も多く取得競争の緩いケースが多いので、安く取得できるのです。

 

最近5年ほどの用地取得の世界では、マンション用地が急騰し、建売住宅用地は横ばいが続いているのです。そして、価格はとうとう逆転したというわけです。これは新築住宅の話です。

 

 

●老後は一戸建てという人の考え

一方、中古住宅になると、マンションでも安くなるのは当然ですが、一戸建ては建物価値が評価しにくいこともあって、20年以上はゼロ(つまり土地代のみ)で売買されるケースが圧倒的に多いとされます。

 

としたら、安い中古戸建の選択もあっていいとは言えないでしょうか?

 

自分一人の意思でどうにでもなる「古い一戸建て」を購入し、メンテナンスやリノベーションを趣味のひとつにするくらいのつもりで移り住むといった道を選択することも考えてもいいわけです。特に老後の住まいはマンションだと決めつけなくてもいいでしょう。研究してもいいのではないでしょうか?

 

たとえば、築後30年以上の家を買って楽しむという発想です。リフォームまたはリノベーションしながら、それを楽しみながら住むのです。

 

例えば、外壁のサイディングを交換する、キッチンを最新のシステムキッチンに交換する。

太陽光発電装置を取り付ける、住まいの顔に当たる玄関ドアを交換する、トイレを拡張して車椅子で入れる大きさにするなどのほか、後期高齢者になったら、1人になったとき近隣のお世話になるかもしれないので、非常用の警報装置をつけるのも一考です。

 

万一のとき、ボタンさえ押せば外を通りがかった人が駆けつけつけてくれるし、事前に近隣の協力者を探して、そのお宅に信号が届くというようにできるからです。

 

一戸建てはマンションと比べて手入れが面倒だと言われます。大規模な修繕は、マンションなら管理組合が進めてくれますが、一戸建ては何から何まで自分で計画し実施しなければならないからです。

 

しかし、それが魅力でもあります。手を加えることを楽しむという、逆転の発想です。日曜大工の教室に通って技術を学び、間仕切り壁を兼ねた収納家具や庭の花台などを製作したりする男性もいます。自分で修理したり色を変えてみたりするのが趣味だと語る人もいます。

 

うっかり中古を買うと、運悪く修繕費用が嵩んで高い買い物になったとぼやく人もいると聞きますが、趣味の一環で大工仕事をしたり、改造計画を図面に描いたりするのだとしたら、その費用は娯楽費であり、生きがいになって気にならない出費になるかもしれません。

 

 

●一戸建てに住んで不安に思ったこと

一戸建ての場合、古くなると家は傾き、雨漏りが発生し、建具の変形がおき、すき間風が入り込むものという常識があります。そこで、あちこち修繕しながら建て替えを先延ばしして50年くらい住み続けるわけです。しかし、たびたび修繕のための出費が起こります。時には多額の費用がかかります。

 

これは、マンションでも同じです。木造と違って、すき間風は入らないでしょうし、よほど強い地震に何度も遭遇しなければ傾くこともないでしょう。しかし、給排水管や建具、床材、壁紙などに詰まりや変形、破損などが同じように起きます。

 

いずれにせよ、必ず修理費用がかかる。それが家というものです。しかし、一戸建てにはないエレベーターや共用玄関のエンジンドア、パーキングシステムなどの機械の故障などはマンションならではのものです。

 

もっとも、一戸建ても2階建ての場合(大抵そうですが)、階段の昇り降りが困難になったらホームエレベーターや階段の手すりに取り付けるホームエスカレーターの新設に多額の費用がかかったり、維持費を要したりすることもあります。

 

●マンションがいいと思うところ

①近所づきあいがなくラク。濃密な近所付き合いや冠婚葬祭・自警団とか消防団・大掃除等の束縛・煩わしさが無い。

 

②ゴミ出しが24時間可能なのが嬉しい(そうでないマンションも多いが)

 

③光熱費が安い(冷暖房の効果が良く、省エネだ)

 

④外から覗かれないのがいい(1階や半地下住戸を除く)

 

⑤シアタールームやゲストルームなどの共用スペースを安価で使用できるのが嬉しい(大型マンションの場合)

 

⑥水平移動のみで平屋感覚、狭いので行動範囲が必要最低限になり、何をするのもラク(特に掃除)

 

⑦蚊やハエの来襲が少なく、アリも侵入して来ない(高層の場合)

 

⑧近所の犬(遠吠え)や猫(発情期の声)による迷惑が無い

 

⑨管理人・コンシェルジュがいるので諸事相談ができる(物件による)

 

⑩引越し挨拶は殆ど慣例にない=上下両隣戸の住人を知らない(見方によっては、デメリットでもある)

 

●マンションの良くない点

①地下駐車場・機械駐車場からクルマを出すのに時間がかかる(屋外平置きのマンションもある)

 

②庭が無いので緑が乏しい(プランターでは制約・限度がある)

 

③閉塞感がある(開放感がなく、蟄居させられているような感じ)

 

④風通しが悪く、熱や空気がこもる(通風のために玄関を半開きにしたいが、廊下を歩く人の視線が気になる。最新の物件には配慮が行き届いたものもある)

 

⑤昼間でも北側の部屋は暗いので電気が必要(東西向きならそうでもいない)

 

⑥上下階・左右の音が気になる

 

⑦階段にしてもエレベーターにしても外出が面倒

 

⑧一戸建てと比較すると部屋数、間取り、収納場所に制限があり、スペースに余

裕が無い(その方がよくてマンションに移る人もある)

 

⑨防犯、火災予防、子供の問題その他の相談相手や助け合いの絆が無い(3.11地震以降、見直される傾向がある)

 

 

●マンションか一戸建てか

マンションは、築40年を過ぎたあたりから補修、補修の連続で、住みづらい状態が続いたりします。

 

修繕積立金が毎月重くのしかかるかもしれません。新築マンションを購入した場合、最初は安い修繕積立金も、5年毎に値上げし、15年目からは管理費の1.5倍ほど(80㎡クラスなら管理費との合計で毎月50,000円)にもなってしまうという例が少なくありません。

 

新築マンションを販売するとき、「長期修繕計画書」が用意されるのが一般化しており、大抵の場合、30年先まで見越して金額が明示されています。しかし、その先は分かりません。50年先には、一体いくらになってしまうのでしょうか?

 

60歳で新築マンションを購入したような場合、90歳でも築後30年ですから問題はないでしょうが、40歳くらいで築20年の物件を永住目的で購入したような場合、70歳のとき我が家は築50年を迎えます。としたら、既に管理費の1.5倍か2.0.倍になった修繕費の更なる高額積み立てを覚悟する必要があるかもしれません。せめて管理費だけでも負担が消えないかと感じるのではないでしょうか。

 

そうなると、晩年はマンションなら「比較的新しい物件に買い替える」という策が必要になるかもしれません。

 

また、古いマンションに住み続けるより「一戸建てが良い」という考え方も浮かんで来ます。

 

一戸建ては管理費も駐車料金も払わなくていいから、マンションより得なのではないかという意見をたまに耳にします。確かに、一戸建てにないマンションの出費はと言えば、駐車料と管理人の人件費、エレベーターの維持費などでしょうか。この分は余分と言えないこともありません。

 

しかし、一概にはそうとも言い切れません。確かに、一面的に見れば、その通りですが、一戸建てにない魅力、例えば高層階から見える景色や、一戸建てには装備しにくい防犯機能、あるいは、木造住宅との比較では、火災に強いというメリットもありますね。耐久性の違いもあるでしょう。

 

こうしたマンションのメリットは、一戸建てのメリットを凌ぐものです。別の言い方をすると、マンションと一戸建ては、それぞれに長所、短所があるということでしょう。経済的な損得では測れないものがあり、結論はその人の人生観によるとしか言いようがありません。

 

一戸建てにも維持管理費はかかります。ただ、手入れや改装を放置する自由が一戸建てにはありますね。

 

一戸建ての所有者が手入れや改装を放置したために建物が傷み、老朽化が進んだとして、困るのは所有者だけですが、マンションではそういうわけにいきません。

 

いずれにせよ、本来マンションと一戸建てを同一レベルで比較し、どちらがトクかなどと論議すること自体がナンセンスとも言えるでしょう。

 

 

●老後も都心?それとも郊外に住むか?で分かれる

マンションと一戸建ては、それぞれに長所、短所があります。従って、経済的な損得では測れないものがあり、結論は既述の通り、その人の人生観によるとしか言いようがないのです。

 

高齢者ほど、都心に住んだ方が何かと利点が多いということも明らかです。都心なら否応なくマンション住まいだという常識があるようですが、それは一戸建ての価格が高過ぎるからです。

 

しかし、広い庭付き一戸建てを望まなければ、敷地は狭くても、土地代だけと言ってよい格安の中古住宅を選択する道もあるのです。もちろん、郊外なら庭も手に入るかもしれません。

 

でも、火事が発生すると、延焼と逆の類焼の心配があるから、やっぱり耐火建築のマンションが安全だ。そんな声もあります。

 

 

・・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました

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