このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
バス便で現在販売中の新築マンションがあります。環境は素晴らしいのですが、300戸余の大型マンションで、昨年夏頃に竣工していて、今日現在まだ10%以上の売れ残りを抱えているようです。
平均坪単価は@190万円台で、最寄り駅の徒歩物件の相場は@280万円もするだけに非常に安い感じがします。しかし、安くてもバスは嫌だという人が多いのでしょう。販売が長期化しています。
第1期の販売開始が2015年7月ですが、広告を開始したのは同年4月頃だったはずで、もう2年も販売活動をしていることになります。300戸余と戸数が多いためとある程度時間がかかるのは仕方ないのですが、それにしても長いなあ、これだけ価格を抑えたのに、と感じている物件です。
新築マンションは、品不足と価格上昇が続いて来た過去4年の経過を見ると、とうに完売しても良さそうなものですが、やはり「バス便だから」か、「高くなって手が出ない。仕方ないから郊外の安い物件を買おうという志向の買い手が少ないから」なのか。
こんな疑問が、ずっと続いています。
とまれ、今日は、バス便マンションを検討する際の、「適正価格の判断基準」について書こうと思います。
●マンションは立地条件で選べ
マンション選びに当たって重要なことは、永住のつもりで買うとしても、いつ売却して住み替えることになるか分からないので、将来価値という視点を軽視しない方が良い。これが筆者の持論です。これまで幾度となく、マンションの資産価値について述べて来ましたが、特に「立地条件」がいかに大切かという点を強調して来ました。立地条件は、マンションの価値に占める比率が最も高いからです。
その主張の延長上として、「バス便だけは避けるべき」と書いたときもあります。 バス便マンションは何故避けるべきかという理由を「価格」の観点で補足したいと思います。
どのような条件で探していくとしても、理想的なマンションに巡り合うことはありません。必ずどこかを妥協して選択することになるものです。
立地条件を優先すれば、広さが足りないことになりましょうし、広さと価格の安さを優先すれば立地の良い物件を手にすることはできないので、この葛藤に悩むことも多いはずです。
しかし、立地条件だけは妥協しない方がいいと考えます。なかんずく、バス便はできたら避けたい条件です。中古物件として売却するとき、それが分かります。
同時期に分譲された新築マンションの駅前物件とバス便物件のそれぞれ10年後を比較したとき、その売却価格の変動率で明らかな差異が表われるからです。
駅前マンション5000万円が10年後も5000万円と値下がりせずに売れたが、バス便マンションは2割安の4000万円で分譲されたものの、10年後は3500万円にしかならなかったといった差が出るのです。
価格維持率という指標を用いると、駅前マンションは100%でバス便マンションは87%くらいなのです。これは、東京カンテイ社が2014年に公表したデータで明らかにしたものです。
2003年に分譲された新築マンションが10年後の2013年にいくらで取引されたかという膨大な調査データの分析結果が証明しているのです。
さて、バス便マンションは例外なく駅近マンションよりかなり安く分譲されます。大雑把に言えば20%くらいは安いのです。 駅近マンションが5000万円のとき、バス便マンションは同じ広さで4000万円です。
バス便マンションは駅近マンションより優れた要素を備えているものです。自然環境に恵まれており、大型開発である場合が多いことから、敷地内に緑地ゾーンや公園、プレイロットなどが設けられ、子育て世帯にとって魅力たっぷりの企画になっているからです。室内の共用施設も豊富に用意されていて、駅近マンションの中小規模物件に比べたら圧倒的な差ができているものです。
マンション選びの希望条件は言うまでもなく個人差があります。 利便性は劣っても自然環境の良さを優先したい人もあるでしょうし、予算が限られるなかで広さを妥協できず、結果的にバス便となる人もあることでしょう。
その上に上述のような魅力がある物件に出会えば、大いに購買意欲が増して決断に至るのも理解できます。
しかし、それでも可能ならバス便は避けたいものです。
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バス便マンションは値下がり確率が高い?
ところが、そう単純ではないわけです。 価格維持率で比較すれば、駅近マンションが100であるとき、バス便マンションの維持率は80とか85とかと低いのが実態です。
駅近マンションは何故100、すなわち値下がりがないでしょうか? それは経過期間中に新築相場が上がってしまい、例えば10年前の100から120とかになっているからです。
つまり、その時の築10年の中古は分譲時と変わらない100でも、10年後の時点で販売中の新築に比べれば20%ほど安いので、買い手から見たら「中古なのに高い」という実感はないのです。
(実際は、年数の差を除くと全く同一条件のマンションはあり得ないので、中古の方が高いことも少なくないのです)
新築ならバス便マンションでも10年前の100から、10年後は110とか120とかになっているはずです。建築費や地価は無縁というわけではないのですから。
そうであれば、バス便の中古は駅近マンションのように100~120にならないとしても、90くらいには留まるのではないのでしょうか?何故、80とか85まで下がってしまうのでしょうか?
答は簡単です。そもそも新築時の価格が高かったからです。
駅近マンションが100であるとき、バス便マンションを80で買ったから、言い換えれば「高値掴み」したからです。
駅近マンションであっても、高値掴みしたら将来価格は期待外れになるものですが、バス便マンションは、一見安いようで、新築時にそも価値に見合わない高値で分譲されたことを意味するのです。
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バス便マンションは割高?
マンションデベロッパーは、実はこのことを知っています。しかし、現実問題として、そこまで安くは造れないのです。
新築マンションの原価構成は、土地代+建築費ですが、建築費はどこで建てても大体同じなので、違いは土地代です。簡単に言えば土地代の差が100対80の差となるわけで、70までは下がらないのです。
バス便マンションで70まで下がっている例は、「パークホームズ調布桜堤通り」のように全くないわけではありません。ただ、建物品質は標準以下、付加価値は何もなし、おまけにバス停から徒歩10分も歩くような場所で、かつ自然環境も良いとは言えない、そんな物件だったりします。「パークホームズ調布桜堤通り」は、建物付加価値も環境の良さも併せ持つ物件ですから、例外的なものです。
バス便マンションは、販売が長期化し、最終的には大幅な値下げを断行します。そのときの値下げ後の価格が実は妥当であったという場合が多いようです。
しかし、中には値下げ幅が十分でないものもあります。バス便マンションは価格に十分に気を付けなければなりません。
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中古のバス便マンションは適正価格
新築マンションは、大々的なキャンペーンを展開し、圧倒的な展示法・販売ツール等によって販売を行いますから、その販売・広告戦略によって買い手は一定期間に集中的、かつ大量に動員されます。
その方法によって売り手は買い手の購買意欲を高め、一気に売買契約へと誘導します。当然ながら、初期の段階では定価販売です。ただ、それで一気に完売することはないものの、割高のまま多数が販売されてしまうのです。
これに対し、中古マンションはネット検索による反響を待つ、つまりは成り行き任せといった消極的・受動的な販売(仲介)活動になっていますし、価格交渉によって売り出し価格から5~10%下がります。その結果、中古のバス便マンションは妥当な価格で購入できることになるのです。
購入価格が妥当であれば、その後の価格維持率も標準的なレベルとなるはずです。
妥当な価格で購入しておけば、何年先か後に売却するときの価格は、「バス便だから安い」とは言えても、「値下り率はバス便だから低い」とはなりません。
筆者がバス便を論外とするのは、新築マンションを購入する人向けの警句なのです。 適正価格まで十分に下がった中古マンションには当てはまりません。
とはいえ、価格維持率が駅近マンションと変わらないと断定できるわけではありません。何故なら、需要量において元々の差があるためです。利便性を求める人の方が、「バス便でもいいから広くて安い」を希望する人を圧倒しているからです。
従って、駅近マンションには下方圧力がかかりにくく、新築購入時は少し高いかなと感じても、価格維持率はバス便マンションより高いものが多いのです。バス便マンションは「より慎重に」です。
・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます
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