今国立のマンション中止がアツい!ということで国立の話をしましょう。
まず国立とはどんな街か、というのは昔書いたコラムがありますのでご覧ください。文教都市・国立を例に学ぶ「住む街の選び方」
戦後、米軍立川基地の影響で国立にもホテルや旅館の建設が進んだため、閑静な住宅街を守ろうと住民たちが文教地区指定を求める運動を起こし、学園都市エリア全域が文教地区に指定されました。
そのため、駅周辺にパチンコ店もホテルも風俗店もない、安心して子育てできる街になっています。
明確な街づくりをしていくことでミスマッチを防ぐ、これも大事なことです。遊びに行くなら立川まで出ればいいのです。
遊びと住む場所の分離(よその女を家庭に持ちこまない・笑)、大事なことですね。
元々が大学都市として成立し、予定調和の街の青写真があり、それが妨げられるようなことがあれば(国立マンションや駅舎の撤去)、住民たちの力で取り戻すという主体的な近代的市民の姿です。
国立は住環境や景観を大事にして、商業や娯楽は立川に任せるミニマリストのような街であり、大学通りの桜並木・銀杏並木、富士見通りから見える富士山、旧国立駅舎といった国立の象徴を大事にする街だと理解してもらえばいいかと思います。
1.何が起きたか、事の次第
積水ハウスが分譲していた「グランドメゾン国立富士見通り」(総戸数18戸)が事業中止となり、解体されることになりました。
プレスリリースはこちら。
2024 年 6 月 11 日
積水ハウス株式会社
分譲マンション「グランドメゾン国立富士見通り」の事業中止について
既に多くのメディアで報道されている通り、弊社の分譲マンション「グランドメゾン国立富士見通り」の
事業(以下「本事業」)中止により、マンションのご契約者様及び周辺住民の皆様をはじめ、多くの関係者の
皆様にご迷惑とご心配をおかけいたしておりますことを謹んでお詫び申し上げます。
本事業につきましては、計画当初より日本を代表する山である富士山の富士見通りからの眺望に対しても
多くの声をいただき、地域住民の皆様及び国立市とも十分な協議を重ねてまいりました。その中で二回に渡
る設計変更を行い、弊社としても地域の皆様に配慮した設計を目指しました。しかし、完成が近づき、建物
の富士山に対する影響が現実的になり建物が実際の富士見通りからの富士山の眺望に与える影響を再認識し、
改めて本社各部門を交えた広範囲な協議を行いました。その結果、現況は景観に著しい影響があると言わざ
るを得ず、富士見通りからの眺望を優先するという判断に至り、本事業の中止を自主的に決定いたしました。
本事業は適法に手続きを進め、法令上の不備はございませんが、富士見通り、特に遠景からの富士山の眺
望に関する検討が不足していたことが引き起こした事態であり、ご契約者様及び地域の皆様にさらにご迷惑
をおかけすることを避けるべく、建物竣工直前ではありましたが、中止を判断いたしたものです。
建物竣工直前の本事業中止により、本マンションのご契約者様には多大なるご迷惑をおかけいたしました
ことを改めて心よりお詫び申し上げます。
弊社は、今回の事案の経緯を重く受け止め、同様の事案の再発防止に取り組んでまいる所存でございます
ので、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
なお、本マンション用地の今後の利用計画は未定でございます。
以上
多摩建築事務所で確認したところ、本件について建築確認が令和5年1月18日にBCJ22本建確173号として日本建築センターより下りており、計画変更で令和6年5月9日にBCJ22本建確173変1号として再度下りています。なお完了検査は未了です。概要書を確認しましたが軽微な変更しかなく(建築面積、敷地面積、最高高さなど変更なし)、この変更が致命的なようには見えませんでした。
中高層の届け出は6月7日付で取り下げられていました。
つまり少なくとも令和6年5月9日までは積水ハウスは事業を遂行する意思があったが、それから1か月あまりの間に何らかの事象が起こり、事業中止を選択せざるを得なくなったということになります。
では、この土地がどういう土地だったかというのを多面的に追っていきましょう。
この土地は以前は個人の自宅で、平成24年に相続が発生し、令和2年に世田谷区の不動産業者が購入しています。
いかにも国立といった佇まいの三角屋根の立派な邸宅が建っていたようです。
さて、令和2年に購入した不動産業者はリムテラスという新築テラスハウスを分譲する会社です。この業者が新築テラスハウスを建ててればよかったのですが、令和3年1月に川口土木に売却しました。川口土木は新築マンション探している人なら割となじみのあるゼネコンですね。昔は郊外が多かったですが今は都心のマンションでも名前を見ます。そして同月に積水ハウスに転売。長谷工の特命受注のような自社施工条件での売買なのでしょうか。
都市計画図によると富士見通りの道路端から20mの区域は近隣商業地域で建ぺい率80%、容積率400%で最高高さ限度はありませんが、富士見通りの道路端から20mを超える部分は第1種低層住居専用地域で建ぺい率50%、容積率100%、最高高さ限度は10mとなります。
南側で幅員10.9mの富士見通り(1項1号)と15.11m接道、西側で幅員4mの位置指定道路(1項5号)と14.12m接道していますが位置指定道路からは出入りできないと取り決められたようです。
少し長くなってきたので以降は次回。このマンションに関してどういう議論が交わされてきたかを再構成し、中止の理由を推理します。
続編
これからの国立の話をしようその2(グランドメゾン国立富士見通り)
富士山の展望とは言うもののあれ程通りの上空に電線が連なっているのを見ると、その方をどうにかするのが先決だと思います。
それとこれは話が別です
マンションによる富士山眺望阻害よりも電線だらけのなんの情緒もない通りのほうが問題。デベロッパーの問題というより国の杜撰な都市景観のほうが問題。地中化の方が災害には有利だし余程のことがないと切断されることは無い。しかし地上の電線は台風や地震ですぐに影響を受けるし景観上も最悪。崖地や低地の河川敷に住宅建設を許可できる日本の問題です。
今回の敷地を取り巻くさまざまな情報ー国立の歴史、住民の気風に始まり、登記簿や10年前の写真、用途地域情報などーを、的確にまとめられていて、この土地の背負っている状況を知ることができました。
ありがとうございます。