前回のあらすじ:二度の調整会は双方の主張の隔たりが大きく不調、条例に基づいたまちづくり審議会も二度開催され、高さに関する再考を求めたものの、積水ハウスは11階⇒10階の変更と軽微な修正のみで建築を進めようとしていた。また、第1回まちづくり審議会で積水ハウス・現代綜合設計が出した富士山眺望の資料は「この建物によっ
て大きく阻害されるというものではない」と解釈される資料だった。
これからの国立の話をしようその2(グランドメゾン国立富士見通り)
3.市民による陳情と議会・市長の対応
2度の調整会と2度目のまちづくり審議会開催の間にあたる令和4年5月27日、「中の会」を中心とする近隣住民から市議会議長あてに「中2丁目マンション新築工事に関する陳情」が出されました。(令和4年陳情16号)
内容としては近隣の環境や住民生活を破壊する、国立市のまちづくりの文化にそぐわない建物の建築を積水ハウスは強行しようとしており、数度の住民説明会で出た要望に対して持ち帰って検討すると言ったものの、11階(36.9m)から10階(33.12m)の変更とバルコニーの縮小他小規模変更しかされなかったので、「商店街との連続性に配慮した高さ」「景観確保にふさわしいより一層の見直し」「北側及び近隣住民に対する日照、風、プライバシー」並びに日常生活に及ぼす影響の軽減」を陳情しました。建設反対の署名は760名です。
この陳情を受けて令和4年6月16日に建設環境委員会で会議が開かれました。
3-A 建設環境委員会での会議(記録)
陳情者による改善要望の理由は以下です。
①本物件用地はもともと個人住宅として長年にわたって住まわれていた2階建ての建物が建ってい
た場所であり、当該用地面積は僅か464.42平方メートル、約140坪という狭い土地であります。
②本物件の北側は第一種低層住居専用地域に隣接し、さらに西側の市道との境界は一部僅か50セン
チの位置に建設しようとしているため、既述の恐ろしい生活上の日照権侵害、激しい風害、圧迫感に
よる生活環境の破壊におののいているのが、中の会住民のほとんどでございます。
③なおかつ、本物件に連なる富士見通り北側商店街、住宅は主として2階から3階の建物で構成さ
れており、本物件が建設されたときは非常に高い建物、10階建ての建物になることは自明であります。
昨年6月23日に開催の国立市まちづくり審議会でも、出席有識者の10人中、半数以上が高さについ
て同様の指摘があり、中には6階ぐらいが適当との意見もありました。
④また、富士見通りは東京都富士見百景の1つに選ばれた市民の貴重な財産でもあり、これへの影
響も問題です。
⑤私どもが言うまでもなく、国立市は著名な故佐野善作学長と故堤康次郎氏が共に学園都市を発案
し、今日まで何代にもわたって培ってきたまちづくりの文化があります。
このことにより、都心はもとより、近郊から国立に住みたいという移住をもたらし、市民の大きな
誇りになっております。
⑥しかし、事業主は去る2022年1月29日の第3回住民説明会において、建物の高さは11階建てから
10階建てへの変更のみ、36.9メートルから33.12メートルへの変更及びプライバシーの観点からバル
コニーの縮小ほか小規模変更を示すのみで、これ以上の変更は受け入れられないとの回答に及びまし
た。
(記録4ページより引用)
かなり整理されて理路整然としています。要求の出し方も戦い慣れた洗練さを感じます。国立の近隣住民はこのレベルだと認識して事業をやらないと秒で返り討ちにされてしまうでしょう。
1番の西側の私道(本文では市道表記)がわかる写真です。50㎝かどうかはわかりませんがかなり近い感じはします。
4番で挙げられている国土交通省による関東の富士見百景62の円形公園が富士見通りの眺望です。
繰り返しになりますが陳情事項について。陳情者から。
陳情事項。①当該物件に連なる商店街との連続性に配慮した高さ並びに景観確保にふさわしい、よ
り一層の見直しを事業者に要望することを願います。
②北側及び近隣住民に対する日照、風、プライバシー並びに日常生活に及ぼす影響の軽減が実現で
きるよう事業者に要望することを願います。
(記録5ページより引用)
署名の集め方について陳情者より。
協力者がいまして、協力者の方々と1軒1軒回ってポスターをお見せして御
理解いただいて、署名を頂いたり、あと国立市内であったり、それ以外でも内容を確認していただい
て、それに反対していただく方も多いので、それで署名を頂いています。
(記録7ページより引用)
760の署名(陳情提出後この委員会の時までに831に増加)は近隣にしては多いとは思っていましたが、市内他地域の人はともかく、市外の人までカウントするのはどうなんでしょうか…。
青木健委員の質疑。
この陳情書を拝見させていただいて、端的に陳
情事項の①、②でいいますと、景観確保ということで申し上げられているのと、それと②ではより具
体的、生活権の問題がうたわれているんです。皆様としてはこれは景観の問題と捉えられているのか、
それとも近隣住民の生活権の侵害の問題というふうに捉えられているのか、それはどちらのほうがウ
エートが大きいと考えたらよろしいんでしょうか。
(記録8ページより引用)
陳情者の回答。
もちろん両方、思いはあるんですが、一番の気持ちとしては、やっぱり直接
的に被害が及ぶということで、そちらのほうを事業者に変更してもらいたいという願いが一番です。
(記録8ページより引用)
生活権が主で景観が従。なぜそんなことを聞いたかというと。青木健委員の答弁。
単に景観の問題だけで争っていきますと、実は国立市には、皆さんも御承知だと思いますけど、明
和による大変不毛な紛争があったんですよね。そういうことにこの問題がなってはいけないというの
が私の一番の思いでありますので、しっかりと住民の皆さんの生活権が守られる変更がなされるため
には不必要な争い、それからこれは質疑ですけど、今回、議会に陳情をされたわけですけど、これか
ら特定の政治勢力や何かを皆様方がのみ込んでいって、反対の活動をされていくというお考えでこの
陳情を出されているのか、それとも純粋に自分たちの生活権の問題というところに力点を置いてこの
陳情を出されているのか、そのことを最後に聞かせていただきたいと思います。
(記録8ページより引用)
明和地所との国立マンション訴訟の二の舞にならないように、「特定の政治勢力」とは共産党を念頭に置いているのでしょうか?特定の勢力の意向を受けてはいないかと。青木健議員は自民党会派所属です。対して陳情者の回答。
まず、政治的なというような、そんなのは全く思ってなくて、紛争ももちろ
ん求めていませんし、とにかく困っているので、事業者に対して変更、こちらの要望することに応じ
てほしいという願いだけです。
(記録8ページより引用)
中に誰もいませんよ。
元市長で現在市議の関口博委員から高さ変更についてのコメント。
私の記憶がもし間違ってなければ、33メートル以上だとスプリンクラーが必要にな
ってくるので、いろんな紛争があったときに11階にしておいて、10階に下げて33メートル以下にして、
スプリンクラーをなくすということで、事業者のほうは事業費を抑えるということがあったように記
憶していたので、そのことについて皆さんに確認する必要はないかなと、行政のほうに確認すればい
いかなと思うんですけども、そのような情報は何かありますか。
(記録8-9ページより引用)
つまり11階建で立会い強く当たって10階になっても事業としてはいけるようにバッファーとしておけば要求には答えたことになるし、事業としては遂行できるしWIN-WINだったはずが、10階では全く納得を得られなかったために積水ハウスの目論見が狂った、という見立てです。これに対して陳情者のコメント。
私も仕事が建築関係なので、もちろん知っているんですけど、業者としては
初めから10階建てで設計をして1回出して、もちろん10階建てのつもりでやっていて、下げたよとい
うアピールをしたいだけかなというのは思いました。もちろん10階建てになると、スプリンクラーや
ら何やらいろいろ法律が変わってきますので、初めから含んで計画していたんじゃないかなという印
象は受けました。
(記録9ページより引用)
建築関係の人が近隣でガチで出てくる国立市、端的に強い。積水ハウスにも危機管理能力があればこんなことには…海喜館事件もそうでしたがガバナンスとリスク管理に難ありな気がします。
次は石塚委員の質疑です。
まず、行政当局としては、建築基準法や市のまちづくり条例などの諸基準にのっとって申請された
ものについての対応としては、建築主と近隣市民の皆様による話合いをお願いするという基本的な考
え方は理解いたしますけれども、それ以外の道は何か考えられるんでしょうか。
(記録9ページより引用)
都市計画課長の回答。
まちづくり条例の手続等、事業者の方には引き続き手続等を行っていただ
いております。今、委員さんのおっしゃられますとおり、建築主さんと近隣住民さんとの話合い、そ
れ以外に何か道はということでございますけれども、この段階におきましては、市としましてはその
お話合いを丁寧に続けてお願いしていっていただけるというところが、スタンスかなと思っておりま
す。
(記録9ページより引用)
前回記事の2回目のまちづくり審議会でも指摘された、最終的にはお願いベースしかできないという話ですね。
石塚委員ダメ押しの質疑。
そうなりますと、建築物件に隣接する近隣地域に生活する市民
の皆さん方の取るべき施策はないということで理解してよろしいでしょうか。
(記録9ページより引用)
町田都市計画課長。
今回の案件につきましては、各種基準、都市計画、建築基準法と合致して
いるものと認識しておりますので、あとは双方での丁寧なお話合いになるかと考えております。
(記録9ページより引用)
法的に合致しているから事業者がパワープレイ始めたら止められないよと。
順番前後しますが石塚委員。
例えば過去にあった、さっきほかの委員の方もお話し
しておりましたけど、マンション建築時に話題になった景観問題や今回の立地を考慮した場合のマン
ション建築に伴う用途地域の見直しを考慮するような機会はなかったかどうかお尋ねいたします。
(記録9ページより引用)
問題の用途地域の話です。審議会でもたびたび問題視されていました。町田都市計画課長の回答。
こちらの用途地域は、現在、近隣商業地域となっておりますけれども、こ
ちらにつきましては平成元年の用途一斉見直しのときに、多くの市民の御要望を受けて、このような
形になってきた経過がございます。確かに委員さんがおっしゃられますとおり、そのような過去はご
ざいましたけれども、現在までそのようなことには至ってないところでございます。
(記録9ページより引用)
このエリアが近隣商業地域・容積率400%になった経緯はわかりました。じゃあ高さ制限はなぜ導入されなかったのか?という疑問が浮かびます。
以前の経緯に詳しいのはやはり元市長の関口委員。
ここをたしか25メートルぐらいの高さ制限をしようというふうにしたときに、容積率が400%のと
ころについては駄目ですよという東京都からの指導があったかなと思うんです。それは認識は正しい
ですか。
(記録25ページより引用)
都の横やりでした。マジですか。
続いて町田都市計画課長の回答。
よくお話に出るかと思うんですけど、400%の容積率をクリアできる高さ
でないとダブルスタンダードになってしまいますので、それが説明がつかないといいますか、400の
容積率がクリアできない高さにするということはできないという流れで、ここについてはしてないと
いう考えでございます。
(記録25ページより引用)
容積率を食いきれない高さ制限はダメと。そうしたらもう用途指定を改めるしかないですね。
用途指定の変更について青木健委員のコメント。
この用途を変えるということについて、高さの問題だけで単純に考えてしまって、もしも近商、こ
の地域外しますよということになると、これは個人の財産権の侵害になってしまいます。それこそ、
そこで生計を立てている方の話も聞かずにやってしまえみたいな乱暴な意見があるかのようにも思い
ますので、そのようなことは絶対ないようにお願いをしたい。
(記録29ページより引用)
確かに容積率400%だった土地が用途指定の変更で200%になったら土地の価値は単純計算で半額になってしまうし、既存不適格の建物も生まれてしまいます。しかしだからといって現状の用途指定を変えず、高さ制限も導入しないとなると、国立市民は400%相当の値段で国立市に理解のない業者に土地を売り、業者は容積を消化しようとすると近隣からポカポカ殴られて事業を遂行できないという今回のような事態が続いていくことになります。住環境を維持するために誰かが損しなければいけない、だけれども同じ国立市民の中で相争うことは避けたい、じゃあ事情の分かってないデベが損しとけばいい、実態・運用としてはそういう形になっているのかなと。ちょっと罠とかハメ技っぽいですよね。
国立市民の景観・住環境への思いを甘く見ると怪我をするという話ですね。藤田委員のコメントが国立市の景観への思いを表現しています。
大学通りでマンション紛争が起きたとき、事業
者が国立市を訴えたその控訴審の裁判の中で、大学通りというのは長年にわたって市民が守り続けて
きたいろいろな歴史があると。歩道橋事件なり、一種住専の闘争ですとか、そういうことを考えれば、
高い建物を建てようとしたら当然激しい反対運動がある、それは業者は予測できたでしょ。そういう
中で国立市に対する損害賠償、最初は4億円だったと思いますけども、それが2,500万円まで減じら
れる。そういうことがありました。
これは景観を愛する国立市ですから、大学通りだけの話じゃないです。当然、私は富士見通りも入
ってくるだろうと思っていますので、業者の方も国立市というのはみんな景観を守る、そういう思い
の住民なんですよ。そのことを十分理解していただきたいと思いますし、2階建ての建物のところへ
大きいマンションを建てる、それはどういうことなのか、ぜひ真剣に考えていただきたいと思います。
採択します。
(記録28ページより引用)
海喜館事件と同じで他のデベがリスクがあると考えて買わないと見送ったものを、国立に係るリスクを考えずに「安くね?11階でめちゃ儲かるじゃん!」と購入していたとしたら、積水ハウスには企業風土としてリスク軽視の傾向があるのではないでしょうか。
住民の意見に寄り添いたい、まちづくり条例が機能していないのではないか、容積率の見直しを図るべきではないか、といった委員の意見が出る中、本陳情は委員全員賛成で採択されました。
3-B 国立市議会での議論
建設環境委員会での採択を受けて6月24日に国立市議会で本陳情についての議論が行われました。
石井めぐみ議員のコメント。
、国立市が景観を大切にしてきた歴史があること、JR国立駅前の良好な環境を守るために、JR東日本の御協力の下、国立市とまちづくり推進四団体をはじめとする市民の皆様が協議を重ねながら丁寧なまちづくりを行ってきたということを考えれば、中2丁目に建設されるマンションは、どのような環境の地域に建設をしようとしているのかということをもう一度しっかりと検討していただく必要があるものと思われます。陳情事項は、もともとこの地域に住んでいらっしゃった方がこれからも良好な環境で暮らしたいという当たり前の願いを要請するものであり、採択すべきと考えます。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 331より引用)
国立市で事業をやるなら国立の理念や考え方をリスペクトすべき、ということですね。積水ハウスは関西の会社なので理解がなかったのでしょうか。(そんなことある?)
高原議員のコメント。
陳情の中でも言われているとおり、現状事業者は聞く耳を持たないとの雰囲気が察せられ、ただ単に法的手続のみで暴走しかねないとの観点から、この陳情提出に至ったという説明がされております。この陳情の中でも言っているように、国立市のまちづくりの基本理念、すなわち歴史的に育まれてきた町並みと環境を守り育て、後世に引き継いでいくことを基本理念としなければならないというふうにうたっていると。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 332より引用)
国立市には街並みと環境を守る基本理念があるのだから、国立市における事業はただ単に法を守るのみならず、そういった基本理念を尊重しなければならないということですね。楽天内定者が三木谷さんの本を読んで感想文を書くように、国立で開発をするデベロッパーは国立市まちづくり条例と国立市都市景観形成条例をしっかり読み込んで国立市の理念を理解した上で臨んだ方がいいかもしれません。
次は重松議員。
ちょうど15年前の2007年の12月議会にも、当該計画の富士見通りを挟んで、反対側の高層マンション計画、14階建ての計画について建築見直しを求める陳情が出され、委員会では5時間にわたる審査があり、全会一致で採択をされています。当時、まだ景観審議会にかける前で、事務局の判断では、市として、大規模行為景観形成基準に適合していないという判断をしておりました。その結果、当初14階だったものが、陳情が出るときには13階に、そして陳情者は、富士見通り中商店会の総意で建築物は9階建てとするように求めております。陳情が採択されたことを受けて、副市長と建設部長、長嶋元副市長と当時は田辺建設部長だと思いますけれども、本社に行って要望書を基に取締役と交渉をしております。関口元市長も本社に対してのアプローチをされていたと聞いております。
結果的には、さらに下げて10階建てに変更されて、残念ながら商店は入らず、その他何点かの修正を経て建物が建ったわけですけれども、これは別に10階でいいというわけではありません。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 334より引用)
グランドメゾンと反対側(富士見通り南側)の10階建てのクラッシィハウスの話が出ています。積水ハウスがクラッシィハウスを見て「うちも10階なら行けるやろ!」とGOした可能性はありますね。実際はかなり議論があって14階から10階に下げられたと。しかもクラッシィハウスは敷地面積500㎡に満たないグランドメゾンと違って1200㎡以上で広く、住居地域の北側に位置する(日照に影響が小さい)のと南側に位置する(日照に影響が大きい)という違いがあります。
重松議員のコメントが続きます。
最終本会議では、当時は当局に対しても質疑ができましたので、複数の議員から関口元市長が責められておりまして、中川前議員からは、大学通りのマンション紛争があったのに、なぜ絶対高さ制限を、法的に可能になった2004年から今まで何していたのか。高さ制限をかけておけばよかったではないかと相当責められておりました。前市長の怠慢とまで──そのときの前市長は関口元市長ではなく──関口元市長の前市長の怠慢とまで言われておりました。
この絶対高さの高度地区、国立市は後ればせながら2008年から検討を開始して、佐藤前市長の当時の2013年頃に断念するんですけれども、その間、今亡くなられた長嶋元副市長、佐藤前市長、それから小沢宏康元都市振興部長まで、当該の近隣商業地域、容積率400%のところについては高さ25メートル、これは8階建ての高さ制限をかけようとしておりました。これができなかったのは東京都の協議と同意が必要で、東京都のほうから容積率を消化できる高さでないと認められないと、かなり強い横やりが入ったからであります。
当時の国立市は容積率の範囲内であっても、上乗せで絶対高さの制限を駅前の商業地も近隣商業地もかけようとしていたわけです。東京都はかなり容積率を消化することを優先しているわけですけれども、近隣の神奈川県や千葉県ですと、容積率400%の商業地域で、横浜市などで最高20メートルの絶対高さ制限をかけています。「母になるなら、流山市。」のキャッチコピーで有名な千葉県流山市でも2014年に絶対高さ制限を導入しておりますけれども、そこを見ますと、同じように容積率400%のところであっても20メートルの高さ制限をかけようとしています。その結果、既存不適格となる建築物がどれぐらい出てくるのか、それが許容されるものなのかというような判断もしています。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 334より引用)
国立マンション訴訟があったのに高さ制限をなぜ入れなかったのかという議論、そして委員会でもあった25mの高さ制限が東京都の横やりでできなくなった話ですね。しかし都外の流山市や横浜市では絶対高さ制限を導入しているようです。
続きます。
今回の陳情審査で、建設環境委員会で担当課長の口から容積率をクリアできない高さにすることはできないというような発言が何回かありました。これは流山市とも、あるいは15年前の国立市の当時の市長、副市長、職員との違いを感じました。国立市は絶対高さ制限、東京都の言わば横やりで断念したわけですけれども、その代わりに東京都が介入しない、国立市独自でまちづくり条例の中に高さ基準を入れ込むことができました。これは非常に評価してよいことだと思うんですけれども、そのとき容積率400%以上の商業地、近隣商業地にはなぜか高さ基準を入れませんでした。このとき断念した25メートルの基準を入れておけば、今回11階建て、もしくは10階建ての計画構想という形で事業者は出してこなかったのではないかと思います。ここまでもめることはなかったのではないかと思います。これも隣の神奈川県の逗子市で、まちづくり条例で駅前の容積率400%用途地域に、ここは高さ20メートルという、かなり厳しい6階建ての高さ制限をかけています。つまり、市がその気になればできるのに、またしてもしなかったということです。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 334より引用)
東京都の横やりで断念した後、国立市でまちづくり条例を作ったが近隣商業地域の高さに関しては基準・制限を入れなかったと。課長は日和ってるけど、25m制限入れられたんじゃないんですか、事実逗子市でも容積率400%の地域に20mの高さ制限入れてるでしょと。ただ、これも他県の話なので結局東京都の運用だと課長の言う通り、難しいのかもしれません。
さらに続きます。
委員会の中でも課長のほうから、1989年の用途地域の一括見直しの際に、多くの市民から要望を受けて大規模規制緩和をしたような答弁がありましたけれども、30年前の用途地域の一括見直しの件についても、2008年の12月議会で板谷元議員がかなり詳細に田辺元都市振興部長に対して質問をしております。田辺元都市振興部長は、恐らく当時の89年のことも経験されておりますし、まだその当時の資料もあったので、確かに市民から規制緩和を求める声のほうが多かったということはあるんだけれども、土地所有者の方におきましては、指定されている容積率を全て使い切るという建築計画、そういうことは考えていないんだという方もいらっしゃったという旨が答弁されています。実際、90年代にマンション紛争が大学通りや国立駅前で頻発した当時、大学通り周辺の商店会や地権者は、高さ31メートル、10階建てという自主的なガイドラインを持っていましたし、それから富士見通りの高層マンションの陳情が出た際も商店会は9階建てとするよう求めておりました。
委員会の中では、用途地域そのものを見直して、もっと規制を強化するようにというような討論もありましたけれども、現実的には用途地域を強化したり、容積率を強化したり、絶対高さの高度地区を、東京都を無視して導入することは難しいものと思います。ならば、まちづくり条例の別表を改正して、容積率400%以上の商業地、近隣商業地にも、長嶋元副市長や小沢元都市振興部長が制限を目指した高さ基準を入れ込むなり、あるいは法的拘束力のある地区計画や、穏やかな地区まちづくり計画の策定に向けて市民の中に入っていくなり、いろいろとやりようがあろうかと思います。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 334より引用)
市民の声を受けて通り沿いの用途地域と容積率を緩和したけれども、土地所有者は使い切るつもりではなかったと。(なら容積率をもう少し厳しめにすればよかったのにロボになってしまいます)用途地域、容積率、絶対高さの高度地区の変更・導入といった都市計画の変更は難しいので、まちづくり条例改正による高さ基準の導入や地区計画、地区まちづくり計画でルールを作っていこうという話ですね。ボーイケンと同意見です。
重松議員の最後です。
大学通りの高層マンション紛争、東京海上跡地のマンション紛争を不毛な紛争だと考えていらっしゃる方はいるかもしれませんけれども、この高層マンションをめぐる裁判で初めて確定したのが、法的に保護するに値する景観利益という概念です。これは良好な景観に恵まれた地域に居住する住民が自ら規制して、その地域の景観をつくってきたんだから、その景観を生活環境として享受する利益があると。景観権、権利ではないけれども、法的に保護に値する利益を初めて最高裁判所が判決で確定しました。当該の富士見通りの沿道についても、まさにそこの地権者の方が高い建物を建てられるんだけれども、建てないできた。何十年もの間、地域でまとまって良好な町並みの景観をつくってきた。その地域でありますから、なおさらそれに反するような、突出したような建物というのは事業者自ら自粛してもらうように、市長、先頭に立ってしっかりと交渉をしていっていただきたいと思います。以上の理由から、本陳情はぜひ採択した上で、強力な交渉を市長自ら行っていただきたいということを求めます。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 334より引用)
景観に関するトップリーダーたる国立市においてはその景観をぶっ壊すようなやり方や建物は自粛してもらうように行政が率先し、市民の利益を守るべき。国立市の議員さんは市民との意思疎通がしっかりできていて二人三脚というふうに感じます。
高柳議員。
この陳情に地域住民が込めている思い、最優先の課題は、地域住民の生活環境を守るということです。そのために提出された地域住民の気持ちの籠もった純粋な陳情であると私は考えています。また、この地域の問題は景観紛争ではありません。暗礁に乗り上げたとも私は思っていません。まだまだ話合いの余地が残されていると思っています。そうでなければ、このような陳情を提出するに至らなかったと私は考えています。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 335より引用)
まだあきらめず話し合っていきたいという主旨です。
高柳議員続きます。
陳情者は、建設環境委員会において陳情の趣旨説明をする際に水色と黄色のウクライナの国旗の色のネクタイを締めてこられました。あくまでも事業者と争うのではなしに、未来志向で話合いを続けたいという意思の表れでもあると私は考えています。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 335より引用)
これですよ。陳情者の側の方が国立ではどうすれば議論が受け入れられるのかを分かっています。積水ハウスは国立の理念やルールに無頓着で、どうやれば受け入れられるかを等閑視して最後は法律で通そうとした、これが敗因かもしれません。確かに法令上、大丈夫かもしれないけれども、まちづくり条例に基づく調整会や審議会の提言をほとんど無視して進めていくとなると、形式論として印象はあまりよくないと言わざるを得ません。審議会の最後の方であった議論でも、最後やるなら法的な瑕疵がないから止められないけど、どうにかなりませんか?みたいな展開だったので、こうなってくると反対する市民全員が法令上のあら捜しを始めてしまいます。(なぜなら法的瑕疵があれば建築ができなくなるので)
もう一点、まちづくりに関して、私の意見を申し上げたいと思います。この陳情審査に関して、容積率や高さ制限、用途地域に関する意見が各委員から出ていました。国立市主導で行わないのは行政の怠慢といった御意見もあったかと思います。それに関して、私は行政の怠慢だとは考えていません。むしろ行政は地域住民それぞれの思いをしっかり反映したまちづくりを応援すべきであると考えています。一方的に行政がまちづくりを押しつけるべきではありません。そこで日々暮らしている当事者である地域住民を抜きに進めることがあってはなりません。
(令和4年第2回定例会(第6日) 本文 2022-06-24 335より引用)
クラッシィハウスから10年以上経っているのだからさすがに何とかした方がいいのでは?と思ってしまいます。行政が押し付けるべきではないのはもちろんですが、個別のマンションにひとつひとつ反対していくよりは法的な枠組みでルールを作っていく方が住民としても事業者としてもクリアーで紛争が減らせると思うのですが……。
同日、市議会で全員一致で陳情が採択され、6月29日に市長あてに送付され、7月22日に副市長から事業者にまちづくり審議会の答申を踏まえた上で下記内容を付け加えた指導書が手渡されました。
陳情の全会一致での採択を鑑み、当該物件に連なる商店街との連続性に配慮した高さ、並びに景観確保にふさわしい、より一層の見直しを行うこと、北側及び近隣住民に対する日照、風、プライバシー、並びに日常生活に及ぼす影響の軽減が実現できるようにすることを要請します。
(令和4年 採択された請願(陳情)の処理状況について より引用)
その後の流れと国立におけるマンション紛争の事例を次回以降やりたいと思います。それではまた。
考察も深く、大変興味深く拝読しております。続編を楽しみにしています。
貴重な情報、ありがとうございます。国立シリーズは、1回目から精読させていただいております。
私は国立市に住むものとして、次の勘違いが大きかったのではないかと考えています。
・「富士山は、富士見通りの正面(センターラインの延長線上)にある」← 勘違い。
・「富士山は、富士見通りの右側=北側にズレている」← これが正解ですが、2019年6月のまちづくり審議会の出席者は、積水も含め、誰も気が付いていません。その後の(駅前から写真を撮ってみれば誰でも気が付くことなのに)。令和4年6月16日の建設環境委員会でも、「通りの南側と北側では、富士山の眺望に及ぼす影響が全く異なる」ということに気が付いている様子はありません。
下記の画像は、Google Mapの航空写真を元に3D機能で作ったものです。富士山が北側にズレているのがお分かりいただけると思います。今回の物件の着工前の撮影なので、赤で加筆しました。もっと低い角度(視点)からの画像は、Google Mapでは作れないのですが、今の視点からエレベーターで地上に降りたらどうなるか、想像してみてください。富士山の右半分が隠れますね?
結局、まちづくり審議会は「冨士見通りがよく見える」よう検討しただけで、「富士山が良く見える」ことは見落してしまいました。一つには、2012年竣工の「クラッシィハウス国立(10階建)」が、ほぼ今回の物件の真向かいにあることから、油断したのではないでしょうか。クラッシイハウスは冨士見通りの南側なので、北にズレている富士山に影響を及ぼさなかったのは、当然です。ところが今回は、通りの北側ですので、モロに富士山に重なり、右半分を隠してしまったわけです。
<画像を登録したGoogle フォトアルバムのURLです>
https://photos.google.com/share/AF1QipPdwH84BQ06Sqh8H4EkxkoleWZDXXAr62sIXcSzkNQBVlWQ0dBWiKqNOVF-6rprdw?key=YW1ESFVwcGxENDJTaVRjQ3VnYVBsQW1oOEpWLUh3
連載ありがとうございます。
審議会や市議会の読み解きが大変おもしろく、読み応えもたっぷりで毎回楽しみにしております。
その深い考察に感心しつつ、「なるほどそういうことか…」と思うことばかりです。
ほんとにそのとおりです。
マスコミの報道は適当すぎて辟易します、