なかなか物件を決められない人のために(最適停止問題)

スポンサードリンク

何件も物件を見て回っているうちに、目も肥えてきて、どの物件を選んでいいのか決められなくなってしまっている人はいないだろうか。そんな人のために、「最適停止問題」を応用する作戦を紹介したい。

最適停止問題とは

最適停止問題とは、秘書問題とか、結婚問題とも呼ばれ、意思決定する最適なタイミングを選択的に決定できる数学的問題のこと。

最適停止問題(秘書問題)は、n人の候補者の中から最高の人物を1人だけ選ぶという問題。この問題では、候補者1人ずつ順番に面接を行い、面接後には採用するか否かを即座に決定する必要がある。一度不採用とした候補者を再び採用することはできない。

これって、秘書や結婚相手を選ぶときのプロセスだけでなく、物件を選ぶときにも通じるところがありますよね。

まず、基本を理解するために、最適停止問題を応用し、4つの物件を内見する場合に最適な物件を選ぶ方法を紹介したい。

※詳しい説明は無用で、手っ取り早く結論を知りたいという方は、以下を飛ばして「まとめ」をご覧ください。

4つの物件を内見する場合、最適な物件を選ぶ方法

あなたは4つの物件を順番に内見することはできるが、物件を見終わった都度、その物件にするか否か決定する必要がある。一度見送った物件を遡って選ぶことはできない。

どうすれば、最適な物件を選ぶ確率を上げることができるのか。以下数学的な考察を行う。

(1)1件目で決断する場合

4つの物件のなかから最適な物件を選ぶことができるのは、最初の物件に最適な物件が含まれていた場合だけ(番号1。以下、番号が小さいほど優れている物件であることを表す)。24通りのなかの6件となる(次図)。このときの確率は、6/24⇒25%

1件目で決断する場合2
(2)1件目を必ず見送り、2件目以降で決断する場合

1件目を必ず見送り、2件目以降で最初に現れた、それまでの物件よりも優れた物件を選ぶ作戦を取る。以下、このときの確率を計算する。

たとえば、1件目が最も優れた物件だったとすると、6通りの選択肢が描ける(次図)。

1件目見送り、2件目以降で判断(1)
2件目の物件が2とすれば、1件目の物件より見劣りするので採用せず。さらに3件目の物件が3とすれば、2番目の物件より見劣りするので採用せず。さらに4件目の物件が4とすれば、3番目の物件より見劣りするが、4件目の物件しか選択する余地はない結果となる(次図)。

1件目見送り、2件目以降で判断(2)
同様にして、2番目の物件が3、4の選択肢を辿っていくと、6通りの結果が得られる(次図)。

1件目見送り、2件目以降で判断(3)
同様にして、1件目が2・3・4番目に優れた選択肢も追加したのが次図。

全部で24通りあり、最終的に最も優れた物件1が選ばれるのは11通り(赤色)。このときの確率は、11/24⇒45.8%

1位が決定されるのは11通り
(3)2件目まで必ず見送り、3件目以降で決断する場合

詳細を省くと、最終的に最も優れた物件1が選ばれるのは10通りとなり、このときの確率は、10/24⇒41.7%

(4)3件目まで必ず見送り、4件目で決断する場合

最も優れた物件1が選ばれる確率は、1/4⇒25%

(1)~(4)の確率を比較すると、(2)が最も優れた物件が選ばれる確率(45.8%)が高い。
  • (1)1件目で決断する場合:25%
  • (2)1件目を必ず見送り、2件目以降で決断する場合:45.8%
  • (3)2件目まで必ず見送り、3件目以降で決断する場合:41.7%
  • (4)3件目まで必ず見送り、4件目で決断する場合:25%
つまり、4つの物件から最適な物件を選ぼうとした場合、1件目を必ず見送り、2件目以降で、それまでの物件よりも優れた物件を選ぶ作戦が最も有効であるというのが結論。

内見したい物件が多数ある場合、最適な物件を選ぶ方法

では、5つ以上の物件のなかから最適な物件を選ぶにはどうしたらいいのか。最初から内見する物件数が決まっていることは稀だろうから、次表が参考になる。

詳しい計算過程は省くが、「物件数」5件、6件、7件、・・・、に対して、「最も優れた物件が選ばれる確率」が高くなるような「見送る件数」との関係を次表に示す。

「物件数」「見送る件数」「最も優れた物件が選ばれる確率」の関係
上表から得られる知見は次のとおりだ。
  • あなたが4件しか物件を内見しないつもりならば、最初の2件は「見るだけ」にして、必ずスルーする。3件目以降で、それまで見た物件よりも気にいった物件であれば即決するというのが最も優れた物件が選ばれる確率が高い。
  • もし、あなたが「いやいや、自分は時間的余裕があるから、5~7件程度は内見するつもりだ」という人ならば最初の3件は「見るだけ」にして、必ずスルーする。4件目以降で、それまで見た物件よりも気にいった物件であれば即決するというのが最も優れた物件が選ばれる確率が高い。
  • もし、あなたが8~10件内見するつもりがあるならば、最初の4件は「見るだけ」にして、必ずスルーする。5件目以降で、それまで見た物件よりも気にいった物件であれば即決するというのが最も優れた物件が選ばれる確率が高い。

まとめ

「最適停止問題」という数学的な手法を応用し、内見する物件のなかから最適な物件を選ぼうとした場合、次のルールに従うと、最も優れた物件が選ばれる確率が高くなる。
  • 4件しか内見しないつもりならば、最初の2件は「見るだけ」にして、必ずスルーする。3件目以降で、それまで見た物件よりも気にいった物件であれば即決する。
  • 「自分は時間的余裕があるから、5~7件程度は内見するつもりだ」という人ならば、最初の3件は「見るだけ」にして、必ずスルーする。4件目以降で、それまで見た物件よりも気にいった物件であれば即決する。
  • 8~10件内見するつもりがあるならば、最初の4件は「見るだけ」にして、必ずスルーする。5件目以降で、それまで見た物件よりも気にいった物件であれば即決する。
マン点
本記事の記載内容にかかわらず、物件決めるのは自己責任でお願いします

あわせて読みたい

物件AとB、どちらを選べばいいのか) | スムログ
何を優先したらいいのか、あなたの深層心理を定量化し、物件Aと物件Bの優劣を数値化する「物件選択支援システム」(無料)を開発した。

ABOUTこの記事をかいた人

一級建築士/マンションアナリスト/長寿ブロガー(19年超)

コメントを残す

「コメント」と「名前」は必須項目となります。


※個別物件への質問コメントは他の読者様の参考のためマンションコミュニティの「スムログ出張所」に転載させて頂く場合があります。
※日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)