ちょっと得するマンション選び(第19回)周辺供給事例による歪み②

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前回の続きで「周辺供給事例による歪み」について述べていきますが、まず前回を簡単に振り返ってみましょう。

ちょっと得するマンション選び(第18回)周辺供給事例による歪み①

前回は、以下のようなケースにおいては「価格の歪み」が発生しやすいことを述べ、①の点についてご説明しました。


① 近年、周辺で新築分譲マンションがあまり供給されていない
② 立地、階建、スケールなどのいずれかに特長がある反面、ネガティブ要因(ウェブ等で叩かれやすいもの)もありそれらを定量的に価格に盛り込むのが難解


というわけで、今回は②のケースについてご説明して行きたいと思います。

最近でこそ物件の階建やスケールによるリセールバリューのデータが広く公開されるようになってきており、主にタワーなどの階建のある物件やスケールある物件が資産価値を維持するために有利であることが知られるようになってきてはいますが、ひと昔前はそういったデータを目にすることは限られていましたし、デベロッパーにとってもそういった物件属性の違いをどの程度付加価値として認識すべきか???という定量的で明確な判断材料はなかったのです(今でも簡単ではないでしょう)。

周辺供給事例に比べ駅に何分近い(遠い)とかならばある程度定量的な価格設定を行うことも可能ではあるのですが、例えば、長所で言うと駅直結、公園(緑)に隣接、エリア内最高層、短所で言うと、大通りに面している、嫌悪施設が近くにある、などというようなケースにおいては周辺の過去供給事例からこれから分譲しようとする物件の妥当な価格設定を定量的に見積もるのは難解で、その価格設定はある程度顧客の顔色を見ての判断となることが避けられないのです。

長所(良い材料)しかない物件であればそういった差別化要素を武器に強気な価格設定が通用することもありますが(特に市況が良い時)、長所だけでなく短所も内包した物件の場合は余計にそういうわけには行かないというのが今回の記事で私が最も述べたい点となります。

非常に顕著な2つのネガティブ要素を持っていて分かりやすいので再度富久クロスを例として挙げますが、富久クロスには「駅近物件が少なくないタワマンとしては最寄駅まで少々駅距離のあるポジション」、さらに「大半がウナギ過ぎる間取り」という2つの大きな短所があります。
また、クロスエアタワーの「ジャンクション隣接」なんかも代表的な事例として適切でしょう。

富久クロスはもちろんのこと、クロスエアタワーも売れ行き上々のマンションでしたが、こういった悪目立ちしやすい話題性のある大規模物件というのは一歩間違えると「ドツボ(売れ行き不振)」にハマってしまうわけでデベロッパーもそのあたりには最大限の配慮をするものなのです(富久クロスの場合はだったらもう少し間取りをなんとかしておけよって話でもあるのですが(笑))。

クロスエアの場合は同再開発の先輩物件であるプリズムタワーよりも2割以上も安い単価で分譲されているわけでプリズムタワーの販売不振もクロスエアタワーの価格設定に少なからず影響しているのは否定しませんが(むろん販売時期の市況もね)、プリズムタワーは27階建219戸の小ぶりなタワーであり、クロスエアの価格設定においては42階建総戸数697戸+公共施設下駄ばき(図書館や区役所出張所など)と言うプリズムに似て非なるパフォーマンスを持っていることがあまりに価格に反映されていないなぁ…と当時思ったものです。

つまり、悪い材料を打ち消すほどの明確な特長(差別化要素)が価格にほとんど反映されていなかったと考えるべきであり、そういった長所・短所が入り混じる物件こそ歪みに出会うチャンスが多く存在していると言っても過言ではないと私は思っています。

なお、現実問題そんな土地は存在しませんが、仮にジャンクション付近に似た物件が供給されることになったら、クロスエアタワーが中古市場で凄まじい価格上昇率(都心相場の上昇率以上の水準で評価されているため、個別要因が強く影響していると思われます)で評価されているという事例が出来てしまった以上、安くなることは当然ながら期待出来ません。

クロスエアの時は、プリズムタワーの400万円超で売れ行きが芳しくなかったという分譲事例が悪目立ちすることになりましたが、仮に次の物件があるとするならばプリズムタワーの400万円超は「クロスエアのミスプライスを後押しするだけ」であってむしろプリズムタワーの価格がメルクマールとなるのではないでしょうか。

ここいらへんは前回述べた①の点にも関係が深いところであり、周辺分譲事例が少なければ少ないほどチャンス(ミスプライス)が生まれやすいのは言うまでもありません。デベロッパーにとって判断しづらいということは消費者にとっても難しい判断を強いられることになるわけで、経験の少ない方にとっては決断にかなりの勇気が必要なケースもあるかと思いますが、お買い得物件に出会いたい方はぜひともそういったプラス要素とマイナス要素の強弱に着目していただきたいと思います。

周辺分譲事例の少なさに加え、「大きな長所」と「それに比べると小さい短所」が入り混じることでよりお宝物件(ミスプライス・歪み)に出会いやすくなる。前回・今回はそんなお話でした。

あ、恒例のおまけ画像忘れてました。
今回は、4か月ぐらい前の写真なんですけど、建設中のパークコート赤坂檜町ザ・タワーです。


やっぱりラウンドサッシの角住戸って室内から見ても外から見ても素敵ですね。


隈氏デザインの檜フィンも申し分ない!
本当にカッコいい物件です。

こちらもどーぞ。

間取りだけでなく、価格の傾向や価格の歪みを記述し、累計2,250棟4,900室超。
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「マンションの間取りや価格を言いたい放題!」管理人。利害関係のない第三者的な視点を徹底し、間取りや価格等について毎日記事を更新。これまでに扱った部屋数は6,300室を超える。 不動産業界の人間ではないものの、自己居住用及び投資用としてのマンション購入件数は10室を超えるプチ投資家という顔を持ち、猫とマンションをこよなく愛する。

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