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第41回(2017年1月5日)に「都心の1LDKに親子3人で住むという発想」という記事を書きましたが、本稿はその継続記事です。
その記事を少し再現してみます。
一般的には、「郊外の3LDKマンションはニューファミリーと呼ばれる階層が購入する」というトレンドができあがったのでしたが、2010年ごろからでしょうか、東京では新たな潮流が生まれました。3LDKではなく、1LDKや2LDKの比較的コンパクトな都心のマンションを購入する単身者ならぬニューファミリーが少しずつ目立つようになっているからです。
都心は高いので、広さや間取りを妥協するということになるわけですが、こうした需要がどのくらいに広がったかは今のところはっきりしないものの、少なくとも筆者に購入相談や物件評価のご依頼をお寄せ下さる人たちの中で目立つ存在になっているのは確かです。
このような選択をした人たちには、資産価値の高い物件を選んでおけばツブシが利くだろうという思惑があるのは間違いありません。いずれ手狭になったら広い家を探せばいい、当分は間に合う。このような考え方をしているのです
都心に購入すれば利便性を享受できるのは言うまでもないわけですが、東京都心には子育てにも悪くない環境が整っています。公園などの遊び場所だけでなく、保育所や託児所といった共働き世帯を応援する施設が多いことや幼稚園・小学校などの選択肢が広いことなど、教育環境の良さが後押しになっているようです。
この現象は、リーマンショック(2008年)以降、郊外で手ごろな3LDK以上の物件供給が大幅に減少したということとも無縁ではないでしょう。気にいったファミリー物件が見当たらず、あれこれ迷っているうちに都心のコンパクト物件に辿りついたという経緯があったのかもしれません。
2011年3月の大地震で帰宅難民になった人たちを見て、職住近接の住まいを求める潜在ニーズが加わったとも考えられます。
こうして、「ダウンサイジングで都心住まい」というトレンドが強まったのです。
●なぜ70㎡の声が多いのだろうか?
この記事を書いてからも、依然として70㎡を条件に挙げる買い手が圧倒的に多いことを気づかされます。何故70㎡というのか?何故70㎡にこだわるのか? これに対する明快な答えは見つかりません。デベロッパーも70㎡(3LDK)のニーズが多いと知っており、70㎡を多く作る傾向は強いのです。
ちなみに、2017年5月の首都圏全体の新規発売2603戸のうち、3LDKは1835戸、70%を占めています。地域別には23区が701戸/1206戸(58%)、都下は233戸/276戸(84%)、神奈川県が490戸/590戸(83%)、埼玉県は194戸/254戸(76%)、千葉県217戸/277戸(78%)です。
23区は都心5~6区も含みますから、シェアが下がるのも当然なのですが、それでも6割近いシェアを3LDKが持っているのです。
賃貸マンションの面積が50㎡台、40㎡台の2DK、2LDKが多いので、「どうせ買うなら60㎡以上、できたら70㎡あるといいな」という希望の声が代表的なものと認識しています。これは20年以上前のも同じだったと思います。
●広さを優先するのか? 立地を優先するのか?
インターネットで住宅探しができる時代になったせいで、首都圏のどのエリアでも3LDKとか70㎡以上とかの検索条件を入力、もしくはチェックマークすれば忽ち何百戸、何千戸という物件がヒットします。たくさんあるなあと感じる人も多いはずですが、その後に条件を絞ると希望エリから遠ざかったり、希望エリアが消えてしまったりします。
簡単に言えば、例えば都心・準都心で買いたいが70㎡以上で、5000万円以内などと入力しても「価格未定物件」を除くと、ヒットする物件は全くないのです。
そこで、23区全体に拡大させますが、そうするとヒットする物件は多数出てきます。しかし、希望エリアからは離れ過ぎになってしまったりします。
仕方なく、通勤のしやすさを考えて鉄道沿線を定め、東京都外に広げてみたりします。それも、使い慣れた沿線や同方向のエリアではなく、反対方向もチェックしてようやく予算にも通勤圏内という条件にも合致する物件にたどり着きます。
しかし、「やっと見つけた。理想の家に辿り着いた」という気分には遠いのです。もっと駅に近いマンションがいい。もっと都心に近いマンションがいい。本当は●●沿線か××沿線がいい。こんな風に思ったとき、そこには広くて設備が良くてウキウキとしている妻があり、それを見て納得している夫がいたりします。
セールスマンは「100点満点のマンションはありませんよ」など言う。慰めのつもりか。はたまた、覚悟を決めろという説得のつもりか。どちらかは分からないが、「これでいいのだ」と自分を言い聞かせる。
本当に良かったのか、後日何度も悩んだ過程を反芻する。
そんな人から筆者にメールが迷い込みます。まだ迷いが残っているからです。対話の中から、「70㎡」や「3LDK」という条件が邪魔をしていることに忽ち気付きます。家族は2人か3人、将来は4人かもしれないからです。その条件があるために立地条件の選定に大きな壁ができてしまうのです。勿論そうでない人もありますが、少なくともご相談者の8割はそうでした。
70㎡と3LDKのタガを外すと、購入可能な物件は一気に希望エリアに近づきます。
子供に個室を与えるのは何歳なのだろう、今一歳なら、8年かそこらは1LDKでも居住可能でしょう。今が1LDKだから、せめてもう一部屋ほしいと考える。そうであれば、2LDKが妥協範囲になるでしょう。今が45㎡の賃貸マンションや社宅というなら、10㎡(約6帖)広い55㎡でも満足度は低くないはずです。
2LDKを買って、3人で10年は住める。2人目が直ぐできて3LDKが必須になるまで数えても10年後のことだ。そうお考えになれるのであれば、10年後くをメドに買い替えればいいのです。
●買い替えに有利な物件を選ぶ
そうです。70㎡にこだわるばかりにバス便マンションを選んだり、通勤の便が悪いものを選ぶのではなく、郊外でも人気のある街の駅に近いマンション、人口の多い大きな街の大きな駅のマンション、需要の多い都心・準都心などのマンションを選んでおけば、買い替えもしやすくなるものです。マンション探しをしている人たちには、それぞれに条件や背景があります。他人の筆者にも、自分の経験からだけでなく、過去2500人を超えるご相談者とのやり取りから痛いほど分かります。
個々の事情に応じた助言をすることになるのであり、本稿で書いたような十羽ひとからげの単純なものばかりではないのですが、共通項として「条件の絞りすぎ」が満足度を高められない要因なのではないかと思うことがあります。
誤解のないように最後に付記します。
マンションの価値は「居住性の高さ・快適性」にあるのは言うまでもありません。しかし、いずれは買い替える時が来ます。早いか遅いかの差です。「長~く住む」というよりは「10年前後でステップアップ買い替えを図る」という概念を持った方が良いのです。そのための条件は立地だけではないものの、立地条件が最も大きな位置づけとなることを改めてお伝えしておきたいと思います。
・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます。
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