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分譲マンションを購入する際、隣家の発する生活音を気にする人が非常に多いようです。 賃貸マンション・アパートに較べれば遮音性が高いとされる分譲マンションですが、実際はどうなのでしょうか?
マンションと騒音の関係を整理してみました。
●騒音苦情の実例
以下は、マンションの騒音問題で悩んでいるユーザーからの相談事例です。◇ある騒音苦情・その1
購入時に、「当マンションはかなりの遮音性がある」という説明を受けました。その説明では、かなりのことをしても近隣には聞こえないと感じられました。ところが、実際に住んでみると、意外と近隣の音が聞こえます。寝られないほどの音ではありませんが、「コンコン」と、壁の向こう側から何かを叩いているような感じの振動音が頻繁に聞こえます。ほぼ毎日で、時間帯としては深夜以外に聞こえます。聞こえ出すと、しばらく連続して音がします。
音源の方角としては、同じ階の隣(または下の部屋)から壁を通して聞こえます。(最上階なので上には住人は居ません)。
販売会社は「近隣でよほど異常なことをしているとしか思えない」ということで、「販売時に説明したことは全く間違っていない」と主張します。
どこかの扉を閉めた時のような音にも聞こえますし、異常なことをしているというよりも、普通の生活音が聞こえてきているように私は思えます。
考えられることをまとめて販売会社に確認しましたが、いずれも私が考えるようなことでは音は聞こえないはずだと耳を貸さないのです。
そこまで強弁するなら、販売の前に試験をしたかと問うと、工事中だったから、試験はできようもないし、竣工時にも試験はやらないのが普通だと言い張るのです。つまり、壁の厚さ等からの理論値だけで言っているようです。
試験をしていないということであれば、例えば、壁のどこかに隙間や空洞が出来ていて、それが原因で音が聞こえてしまっているとか、いわゆる「欠陥」が原因ということもゼロではないと思います。
◇ある騒音苦情・その2
築10年のマンションに住んでおります。フローリングLL-40ですが、音はかなり伝わります。話し声が聞こえることもあります。先日、上階の方が入れ替わり、新しい家族が引っ越してきました。前の居住者は、音が響いた際に主人が話しに行ったところ、「敷物を敷いて出来る限りのことは気をつけます」とおっしゃり、静かになりました。
小学生女児1人と幼児1人でしたが、日常的にさほど気になる音はありませんでした。新入居者は、引越し日の真夜中から床をゴリゴリ掃除する音がし、主人が話に行きました。
その後も、音がかなり下に伝わることに気づいていない気配で、主人が先方のご主人と話しました。夫婦と小1女児、「LL-40を過信していた。子供がアトピーでカーペットが敷けない。走らせないようにする。構造上、音が伝わるのは理解している。気をつけます」というようなことを言われたそうです。
私は物音が気になるほうです。聴覚が良く、主人よりもよく聞こえます。でも、マンションではお互い様で、小さい子供なら多少音がしても仕方なく、たびたび注意して先方に精神的苦痛は与えたくないという気持ちもあります。
アトピーでも、コルク等の物を敷くなど手はあると思いますが、こちらが要求するのもどうかと躊躇してしまいます。
一方で、朝はたいてい子供が走る音で目覚め、休日は荒っぽい掃除の音(ドスン、ガツン、ゴリゴリ)が聞こえます。また、夕食時やゆっくりTVを見ているときに衝撃音も結構聞こえます。
主人は気に障るらしく、就寝時は以前から耳栓をしているのですが、それでも「朝からうるさい。また言いに行く」といきまいています。
長時間ではなく断続的ではあるものの、概して音に無神経なひとたち(親)なのではとも感じます。私は胸中で文句を言いつつも、主人をなだめながら我慢している状態です。
主人からすると、奥さんは常識的に見えるが、ご主人は理屈っぽく言い返すタイプだとのこと。その場ではお互い丸く収めたようですが。
私としては、例えば管理組合などの第三者を巻き込みたくないことと、主人がまた話に行くことにも不安を感じます。
◇ある騒音苦情・その3
築8年の分譲マンションの2階に住んでおりますが、上の住人がお湯を使うと我が家の寝室でウイーンという音がなります。ハイヒールでコツコツと歩いている音が我が家の全部の部屋に響きます。
上下階のコンクリートではない壁に少しでも物が当たると、ものすごく響きます。
上の人工大理石の玄関の音が我が家中に聞こえます。
引き戸が重いのかガラガラとよその家の引き戸の音がします。
夜になるのが怖い毎日で、5才の息子に少しの音も出させないくらいの勢いで怒ってしまう自分がとても嫌になります。
◇ある騒音苦情・その4
14階建て新築マンションを購入したばかりです。上や特に下階の襖を強く閉められていると思える音がよく聞えます。11時すぎでしょうか、コツンという音やタンスを強く閉めるガンというような音がよく聞こえます。たまに上階から天井が揺れるようなドンドンという音、体操でもしているのでしょうか。新築でも、マンションとはこんなにも音がするものでしょうか? 欠陥は考えられないのでしょうか。
売主は、一流と言われるデベロッパーです。担当者は生活音だと言います。当方の洋服タンスの扉も力強く閉めると下階にはビシビシよく聞こえるそうで、文句を言われました。
◇ある騒音苦情・その5.
2階に住んでいます。上の階には小さな子がいるので、走り回る音がかなりうるさい。真下がエントランスなので、自動ドアのモーター音が聞こえて来る。夜は周りが静かなだけにうるさい。1階や隣の子どもの声が前の建物に反響して聞こえて来る。まさかこんな現象が起きるとは。◇ある騒音苦情・その6
床が直貼りではなく二重になっているので遮音性が高いと聞いて買ったのに、住んでみると上の階の音は伝わってきます。夫婦喧嘩らしき怒鳴り声まで聞こえて来ることがあるのです。二重床は遮音性が高いというのはウソですか?それとも手抜き工事なのでしょうか?以上、6例をご紹介しましたが、マンションの騒音問題は当事者にとって深刻です。
コンクリートのマンションは騒音が発生しない、聴こえないというのは迷信であり、音は上からだけでなく、どこからでも回り込み、振動音などは完全に防ぐことなど出来ないのです。
防音室のような防音工事を行えば完璧な遮音は可能ですが、相当なコストがかかりますから、現実的ではありません。
効果のないような防音材を購入することも注意したほうが良いようです。
壁に遮音シートを張り、その上から石膏ボードを重ねて張り、クロスで仕上げるという提案をする業者や建築士もいるそうですが、殆ど遮音効果は体感できなかったという声も聞かれます。
●音源のいろいろ
騒音を発生する「音源」にはどのようなものがあるのでしょうか。整理すると以下のようになります。1. エレベーター
日本製の優秀な製品でも、エレベーターは走行の際、かすかに音を発します。間取りによっては、エレベーターシャフトが隣接している例があり、その場合は室内に音が届くことがあります。勿論、壁を二重にしたり、防音材を張ったりして音が入り込まないように対策はされていますが、稀に漏れてくることがあるのです。
2. 自動ドア
共用玄関のドアは荷物で両手がふさがっている人への配慮から、自動開閉式になっているマンションが普通です。そのドアを開閉するエンジンが音の発生源となってしまい、ドアの真上の住戸などに伝わることがあります。勿論、これも対策は講じているのですが、稀に漏れてしまうことがあるようです。
3. 排水管
トイレや風呂、キッチンの排水音は大きな生活音として問題になりがちの場所であるため、二重三重の対策を講じていますが、稀に漏れてしまうことがあるようです。4.給湯システム
給湯器の騒音に関する苦情も、無視できない問題です。地方の戸建て住宅などのように、隣家や自宅の寝室と給湯システムまでの距離が十分にとれればよいのですが、マンションなど集合住宅ではそういうわけにはいきません。
エコジョーズやエコキュートはお湯を作るときのエネルギーが非常に少なくてすみ、優れたシステムですが、残念ながら騒音に関しては全く問題がないわけではありません。
過去にエコキュートを導入した住宅が夜中の騒音のため睡眠不足から体調を崩してしまった人もいたということもあり、導入以来この騒音防止にメーカーは改良を重ねてきた経緯があります。
エコキュートの場合、電気を用いた給湯を行うわけですが、構造的に夜中の安い電力を使って貯水タンク内の水を循環させるため、夜の時間帯に多少の音がするのは仕方ないという事情もあります。
エアコンや冷蔵庫の騒音とだいたい同じようなものですが、マンションの高層階など比較的夜間の音が静かな部屋では、気になる人にはとても気になる音らしく、トラブルが起こることがあるようです。
一方、エコジョーズはどうかというと、こちらはお湯を作るために必要に応じてガスに着火されることからお湯を出すたびに着火音がするということになります。
ただしエコキュートのように長い時間をかけて循環させるようなことはないので、着火さえしなければ無音ということになります。
ただし隣の建物や部屋と距離が近い場合には深夜の時間帯に頻繁にお湯を出したりすると、それが騒音のもとになってしまうことがあるかもしれません。
マンションでは、エコジョーズの本体装置がバルコニーか外廊下側か、どちらかになりますが、廊下側の場合、隣戸の寝室が近いせいでしょうか、騒音苦情が出やすいと言われます。
ただ生活時間帯がまったく逆ということでもないかぎり、常識的な範囲での使用なら着火音が特に問題となることはないでしょう。
5.隣人の生活音
子供の走り回る音や楽器、ステレオなどの音楽、扉の開け閉め、その他の物音が上下左右、ときには数軒先の住戸が音源になっていることもあります。音源の中では、これが最も多く問題になるようで、しばしばトラブルの原因になってしまうのです。
●マンションの遮音対策
様々な音の発生源があることが分かりましたが、では遮音性を高めるためにマンションメーカーはどのような工夫をしているのでしょうか。
・床の工法
床の場合、基盤となるコンクリートスラブ(床板)の上に直接カーペットやフローリング材などの仕上げ材を貼りつける「直床工法」や、根太(ねだ)と呼ばれる渡し材を置いてから、その上に木製の床材を乗せ、更に仕上げ材を敷く「根太床工法」、コンクリートスラブの上に複数の細い鉄製ポール(脚)を立て、その上に木製床材を乗せた「置き床工法」、置き床の場合で、コンクリートと木製の床材との空間にグラスウールを充填したタイプ、更に、コンクリートスラブの上にグラスウールなどの緩衝材を敷き、更にその上に再度コンクリートを打った「湿式・浮き床工法」、コンクリートの代わりに、発砲スチロールや合板その他の木材などをサンドイッチにした「乾式・浮き床工法」などがあります。緩衝材を入れたり、コンクリートを二重打ちしたりした方が、当然遮音性は高まります。
パンフレットや広告で「二重床」と記載されるのは、直床以外のものすべての総称です。しかし、二重床でも上記のように様々な形・工法があります。また、施工精度の良し悪しによって効果も違って来るとも言われます。
・天井
天井は、上階のコンクリートスラブから吊り下げる形で形成されます。天井裏には空間ができます。その空間を電線が通っています。給排気管が通っている箇所もあります。これを「二重天井」と称し、「二重床」と合わせて、「だから遮音性も大丈夫」と、マンション広告は強調することが多いのですが、二重天井が、遮音性を高めることに効果があるかどうかは不明です。・床スラブの厚み
床のコンクリート板(スラブ)の厚さは、分譲マンションの場合、20~25㎝が一般的ですが、「スラブが厚い=遮音性が高い」と考えるのは短絡的と言わざるを得ません。確かにスラブ厚は、上階からの重量衝撃音(人が跳びはねた時のドスンという音など)の遮音性(LH)と関係が深いのですが、実際には梁で囲まれたスラブの面積をはじめ、多くの要素が複雑にからんでいます。
梁で囲まれたスラブ面積が広いとスラブがたわみ、音が伝わりやすくなるため、厚さを増す必要があるのです。
また、室内に小梁の出っ張りをなくす工法として「ボイド(中空)スラブ」を用いる場合、そのスラブは厚いものでなければなりません。
つまり、工法や条件によっては、厚くしても普通の性能に過ぎないことが多いのです。
一般のマンションの場合、コンクリートスラブの厚みは、遮音性にはあまり関係ないと考えた方がよさそうです。
・床仕上げ材の遮音性
最近のマンションの床は、殆どがフローリング材で仕上げられています。高級な絨毯仕上げは、ごく一部の高級マンション(3億ション)に見られる程度になっています。フローリングの人気が高いのは、掃除のしやすさやダニが発生しにくい清潔さにあるのでしょう。
フローリング材の欠点は、音が出やすいことにあります。施工が悪くてギシギシと音が鳴るのは論外にしても、物を落とすと響きます。スリッパを擦るようにパタパタと音を立てて歩く人は、気付かないうちに下の居住者に迷惑をかけている可能性があります。
但し、フローリング材の遮音性には差があります。上質な物は、比較的音が伝わりにくいのです。その等級を表わしたのが、下表です。
LHとは、重量衝撃音といって、子供がドンドン飛び跳ねたりする音や人の歩行音のレベルを表わす記号。LLとは、スプーンのような固くても軽いものを落とした時の音(軽量衝撃音)を指す記号です。
マンションでは、LH(重量衝撃音)が問題となることが多く、パンフレットでは、LHの値に注目しましょう。
衝撃音を、単にL値としか表現していないパンフレットや、LL値でしか表示していない物件もあります。
L値にせよ、LHにせよ、最高ランクの素材を採用しているマンションで騒音トラブルが起きるとしたら、考えられる原因は、音源が非常識な生活者であるか、施工上の欠陥かのどちらかということになりそうです。
ただ、「音の問題は実際に施工してみないと分からない点が多い」「同じ音でも周りが静かなほど気になりやすい」などといった点も念頭に置いておくことが大事です。
実は、一戸建の方が音はよく伝わります。2階の足音は容赦なく響きますし、声も聞こえて来ます。身内だから気にならないだけなのです。さらに、道路と接しているために、車のエンジン音や通行人の足音が聞こえて来たり、隣家の話し声が聞こえて来たりすることも多いのです。
結局、マンション住まいの場合は、顔見知りであるとか、子供同士が仲良しであるとかといったことが音をうるさいと感じるかどうかに関係してくるということでもあります。
親しく付き合いをしないまでも、入居のときに挨拶くらいはしておくことが大事かもしれませね。
もちろん、同じ屋根の下に住む者同士、隣近所への気遣いがより大事です。
・壁の遮音性
隣の家との境の壁は、分譲マンションの場合、どうなっているのでしょうか?実際は、コンクリートの壁の厚みや、コンクリートに貼るボード及び、その施工方法などにレベル差があるのです。
勿論、賃貸マンションや木造アパートのように薄い壁ではなく、十分に遮音性が高い構造になっているものが多いと考えてよいでしょう。
マンションの住戸と住戸の境となる壁を戸境壁(こざかいかべ)と呼びます。
マンションの戸境壁の厚さは、一般的に18~20cm程度です。厚さが厚いほど頑丈で、遮音性も高くなります。
戸境壁にそのままクロスを張った「直張り」よりも、防音のため緩衝材を間に入れた「二重打ち」の方が遮音性に優れています。
ただし、戸境壁の表面に石膏ボード(プラスターボード)が貼ってある場合は注意が必要です。コンクリートの上に胴縁という下地の桟を横に渡し、その上に石膏ボードを貼る工法ですが、戸境壁コンクリートの表面にできやすい凹凸を隠すためのものである場合が多く、その場合は石膏ボードと戸境壁の間に隙間ができるため、稀に音が共鳴し、騒音トラブルの原因になることがあります。
建築家の中には、直貼りの方が良いという意見も少なくありませんが、胴縁がある方が手すりを増設したり、家具の転倒防止用金具を取り付けたりするのに都合がよい面もあるのです。
・窓とサッシ
ガラス窓は、遮音性を高めた「エアタイトサッシ」や「二重サッシ」など、いわゆる防音サッシにするマンションがあります。外の道路の交通量が多い場合には、必須の設計です。あくまで外部環境によっての選択ですから、静かな環境にあれば、その必要はないことになります。
防音サッシを使わなければならない場所は、あまり窓を開けられないということになり、好ましくはないことになります。特に二重サッシの窓は、殆ど開けられないと思った方がよいでしょう。
・排水管の遮音
マンションの室内を通る排水管がパイプシャフト(PS)という形で寝室の際(きわ)にあるケースがあります。その場合、夜中に排水音が寝室に響き、安眠を妨害される恐れがあります。そこで、遮音対策として、排水管にグラスウールや遮音シートを巻きつけたり、パイプシャフトの壁そのものを二重張り(分厚い壁)にしたりします。具体的な工法はマンションによって差がありますから、確認しておきましょう。
●騒音苦情の背景「分譲に抱く高い期待感」
賃貸マンションに住んでいた人が、分譲マンションに期待することのひとつ。それは「遮音性能」にあると言われます。賃貸マンションや木造アパートでは、隣の家の話し声やくしゃみ、携帯電話の着信音まで聞こえて来るため、逆にこちらの声や生活音が隣の家に聞こえるのではないかと気にしながら、声を潜めて暮らしてきた人が多いことの裏返しです。
現実はどうかと言えば、賃貸マンションよりは、はるかに遮音性が高いものの、度を越した音を出す隣人が稀には居るのでしょう。音のトラブルが一番多いという現実が、国土交通省の調査などでも明らかになっています。
分譲マンションに住んだら、普通の大きさの声で会話ができる。夜中に風呂に入っても気兼ねが要らない。きっと、伸び伸びとした生活ができる。恐らく、そのような期待をして購入し、入居してくるのでしょう。それゆえに、期待が外れたときの失望感や憤りが大きくなるのです。
つまり、少々非常識な住人の前では、現在の分譲マンションの遮音性能も完璧ではないと言わざるをえません。
マンションを購入するときは、こうした予備知識を持っておくこと、運が悪ければトラブルに巻きこまれることがあるという覚悟も必要です。筆者なら「事前に確かめることはできないので」運を天に任せます。
・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。
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