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間取りに関する寸評をお送りする仕事が毎日何件もあるので、中古に関しては住みやすいものが多い反面、新築に関しては残念な間取りが多いので業界OBとしては哀しい気持ちに襲われます。
言わずもがな「田の字型」の間取りばかりと言って過言ではないからです。タワーマンションに限れば、幸いワイドスパンの開放的なプランが多いのですが、それでも問題間取りは少なくありません。
さて、今日は間取り選びで注意すべき点と、田の字間取りを選ぶしかない場合の快適な部屋作りについて考えてみようと思います。
●ダブルベッドが収まらない主寝室
間取り図を見ると、洋室7畳とか6畳とか書いてあります。賃貸マンションに住んでいる人から見れば。7畳は「広い」と感じることでしょう。分譲でもいま住んでいる部屋がコンパクトなら同様の感想を漏らすかもしれません。この何畳というのは中々の曲者で、たとえ8畳でも縦横の寸法によっては使いにくいという場合があります。
ベッドを壁にピッタリつけて置けば置けないことはないのですが、壁にピッタリつけて設置すると掛け布団が収まらず、寝ている間に逆側からずり落ちてしまう事もあるので、壁面から10cmほど間隔を空けるようにしなければなりません。
問題はWベッドの場合に起こります。想像してみてください。壁側が10㎝しか空いていないということでは、ベッドに入るときどうするのでしょう。足元から這って行くのでしょうか?
Wベッドの場合、両脇に少なくとも40㎝の空間がなければなりません。つまり、どちら側にも歩くスペースが必要なのです。
●廊下が短いマンション
廊下が短いマンションは、その分が収納の拡張や居室の大きさにつながるので良さそうですが、現実はそうとも限りません。なぜなら、リビングルームを経由しないと個室に入れないからで、小さな子供のうちは学校から帰ったとき必ず「お母さんただいま」を言うことになるので長所かもしれませんが、反面、廊下が狭いと寸詰まりの家を象徴するようで嫌だという声も多いのです。
筆者は、個人的には「廊下の長い家」がいいなと思っています。しかも、できたら玄関ドアを開けた瞬間に奥が覗かれてしまうストレートな廊下でないことが望ましいと。
これを無駄という考え方もありますが、廊下・ホールが狭いと貧相な家に見えてしまうので、ある程度の広さ(長さ)があった方がいいのです。「ちょっとした贅沢、リッチな気分に浸れるからです。
●玄関を開けると、そこはセカンドリビングだった
コスモスイニシア社が面白い間取りを発表しました。「イニシアクラブ渋谷笹塚」という物件のHPを偶然見て発見したのですが、それは玄関側にある二つの寝室を分けている廊下(玄関ホール)の壁をはずして(引き戸をスライドさせて)大空間を作り出すというアイディアです。当然、廊下面積が部屋に加わるので、5畳と5畳の10畳が12畳くらいに広がるイメージです。そこは、子供たちが勉強する空間であり、家族全員で楽しむシアタールームという想定で同社は紹介していましたが、さだめし「セカンドリビング」ということでしょうか?
確か、外国の集合住宅を視察に行ったときに見たような記憶があるのですが、そこは、リビングルームというよりは広い玄関ホールだったと思うのです。
このアイディアも、あと少しの工夫をすれば受け入れられる日が来るかもしれない。そんな印象を持ちました。
●寸胴型の廊下かくびれた廊下か
廊下ついでに、日ごろ感じていることですが、家は富の象徴であり、ステイタスシンボルの一面があります。夫婦が懸命に、そして誠実に仕事をし、子育てしながら作り上げた家庭の延長上に快適な住まい、そして生活の基盤としてのマイホームを持つのです。
そのとき、「自分をほめたい」ではありませんが、それまでの努力の結晶が「この程度か」とは思いたくないはずです。
「どうだ!俺の家は」少なくとも男の筆者は、そう自慢したかったですね。もちろん、その前に妻や子に暮らしやすい快適な家をプレゼントすることで喜んで欲しいと思ったものです。
筆者のような考え方は時代錯誤かもしれませんが、多くのマンション購入者は高い満足を求めるはずで、その尺度は個人ごと違うにしても、狭いよりは広い家を、安っぽい家よりは高級な家・豪華な家をというように「より上」の家を求めているに違いありません。
その家を象徴するのは、マンションでは外観の格好の良さであり、エントランス周りの豪華さなど共用部にあるわけですが、各住戸に目を向ければ「玄関まわりのデザイン」です。
外側は、アルコーブやポーチがどんな形になっているか、ドアを開けた所がどんなカタチか、この部分はとても大事な点ではないかと思うのです。
スパンの狭い田の字間取りは、大抵二つの個室が両側にあって、それを分ける廊下が幅900か950かになっていて、まっすぐリビングルームにつながる形が圧倒的に多いのです。
しかし、どこまでがホールで、どこからが廊下かが分からない寸胴型になっているものが多いですね。できたら、幅の広い玄関の三和土(たたき)と同じ幅のホールがあり、その先に廊下があって各部屋に続くカタチが望ましいのです。
スパンが狭いからできないと反論する人もあるでしょうが、間取り作りのスタートから考えると可能になります。事実、できている例もあるのですから。
●洗面所って何? 広さは足りていますか?
洗面所は脱衣所を兼ねています。同時に洗濯する場所も兼ねています。洗濯室を分けているマンションもありますが、大概この形です。前にもどこかで書きましたが、洗面所はおしゃれする空間ではないのですか?女性の化粧室ではないのですか?いえ、私は寝室で化粧をします。そんな声も聞こえて来ますが、洗面化粧台と言うではありませんか。
3面鏡もあり、数々の化粧道具を収納するポケットや棚、引き出しが用意されています。やはり、洗面所は単に顔を洗うだけの場所ではないのです。
しかし、狭いマンションではそこが浴室の入口であり、洗濯室でもあるのは仕方ないところです。
そうであれば、洗面所に高い機能性を持たせることが必要になりませんか?リネン庫が一応は用意されますが、十分な機能性があるでしょうか?
現在のお住まいを思い出しましょう。洗面・脱衣・洗濯室の中はどうなっているでしょうか?洗剤、物干し道具、汚れもの、タオルなどが「所狭し」と置かれていないでしょうか?
また、着替えの下着やパジャマなどはどこにあるのでしょうか?ヘルスメーターだけは足元をくりぬいた場所をデベロッパーが用意してくれていますが、そのほかの雑多な道具類も着替えも、分別洗濯のための籠など、細やかに置場を考えられたマンションはあまり見かけません。
オプションになってしまうかもしれませんが、購入時に予め考えておいた方がよさそうです。
●トイレへのこだわり
客を招いたときを想像してみてください。客が女性なら「お化粧室を貸してください」と言ってトイレを借りるでしょう。そのお化粧室に鏡はあるでしょうか?ハンドバッグを持って入れるでしょうか?つまり、バッグが置けるだけのカウンターがあるでしょうか?
理想論かもしれませんが、家族同士の朝の重なりを解決するために、トイレには男の身支度に使える機能が欲しいものです。
つまり、トイレで顔を洗い、髭もそれる、整髪もできるのが良いと思います。男の支度は女性の化粧のようには長くないとしても、娘は「早くして」とせがむでしょうから、娘が先ずトイレを使い、そののち洗面所に行く。父は娘のあとにトイレに行き、そのまま洗面と髭剃りと整髪をそこで済ませる。
こう考えると、トイレは重要なスペースです。
●PP分離は夢の夢か
昔の間取りでPP分離を標榜したものがありました。客があっても、家人は気兼ねなく家の中を移動できるというカタチでした。客がリビングルームに居ても気付かれずにキッチンへ行くことができる動線が確保されている、玄関からまっすぐ自分の個室に向かうことができるというものでした。つまりプライベート空間とパブリックな空間の完全分離を謳ったプランです。
最近、そんな発想を具現化した間取りは少なくなりました。というより、その発想自体が日本では不要なのでしょうか?
●家具の要らないマンション
「なるべく家具を置かずに広々とした空間で暮らしたい」という発言をよく聞きます。確かに、インテリアとしての家具が映えるということはあるでしょうが、そうでないものはない方が良いのかもしれません。そうであれば、収納の充実が課題になってきます。しかし、持ち物の数も種類も居住者それぞれなので、作り手も想定には限度がありましょう。
ならば、収納方法は買い手が自分で考えるしかありません。壁面収納や隙間家具、天井収納その他、収納のアイディア集は書店に行くと山ほどあります。
●家具配置を考えて間取りを選びましょう
冒頭でWベッドが置けるか確認したいという話をしましたが、狭いマンションでは家具の配置に困ることが少なくありません。購入に当たっては、ベッド以外の家具もうまく収まるかどうか確認をしましょう。真四角のリビングダイニングより、長方形の方が配置しやすい場合もあるのです。畳数だけで判断しないことが大事です。
●良い間取りが欲しかったらリフォームするしかない
マンション選びの優先順位では、最初に立地条件が来るはずですが、間取りを優先する人もあるようです。特殊な事情にある人かもしれませんが、本末転倒ではないかと思うときがあります。快適に暮らすには間取りも大事な要素と言えますが、マンション選びは常に「あちら立てればこちらが立たず」なので、間取りは後順位にならざるを得ません。
しかし、間取りにこだわりたい人もあるのは確かです。その割合は結構多いのかもしれませんね。
理想の間取りを求めるなら、古いマンションを買ってリノベーションを選択するほかないかもしれません。
●最後に!「病院色の壁紙を張り替えたい」
これは間取りというよりはカラー選択の問題ですが、新築マンションでは様々なオプションが用意されています。設備のオプション、建具や床のカラーセレクトという範囲が一般的です。この中には何故か、壁紙のセレクトは少ないようです(ないことはないが、あってもお仕着せです)。マンションの設計では、最後が「色決め」という作業になるのですが、そこで必ずぶつかる壁が「設計者の個性」です。殆ど受け入れてもらえないのです。壁の色などは、無難な白になってしまいます。筆者は「病院色」と言っています。
そこで、買い手は完成後のオーダーで壁を変えることになります。しかも有料です。
しかし、たとえ有料でも壁紙を部分的に張り替えることで印象が全く違ったものになるので、お勧めしています。ホームセンターで材料を調達して来て、自分で張り替えるにしても、業者に依頼するにしても、何年かおきに張り替えると気分が一新できていいかもしれません。
入居前の方がやりやすいでしょうから、最初から思い切って張り替えてしまいましょう。中古物件なら、前所有者の臭いを消す意味でも張り替えるべきですが、その際、部屋ごとに、しかも全面同じ模様・同じ色とせずに一面だけ別のものにするとか、下半分を板張りにするといった方法も検討しましょう。
参考資料は書店かお近くの図書館で入手されるといいですね。
・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました。