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東京23区の古い同じマンション内で、1200万円で成約した住戸と3200万円の住戸に遭遇した最近の経験をお話しします。
いわゆるファミリータイプのマンションで築40年近い古いマンションですが、これほどの差が付く例は珍しいと思ったのです。
具体の物件名は控えます。どうして大差がついたのか、そこから私たちは何を学ぶべきなのかということについてお話しして行きます。
●リノベ済み物件と非リノベマンション
同じマンションの同じ大きさの住戸なのに、2000万円もの差がある理由は、リノベーション工事をしたか、しないかの差でした。しかし、それにしても差が2000万円とは大き過ぎるなあ。筆者は違和感を覚えました。スケルトン状態にしてからの完全リノベーションらしく、室内だけであれば、デザイナーズマンションとでも言えばよいか、お洒落な中身だったようです。グレード感も最近の中級の新築マンションに劣らない印象を持ちました。
とはいえ「ディスポーザー」は無論なく、オートロックでもありません。インターホンは音声だけのタイプでしたし、サッシ高も1800ミリあるかないかという低いもので、かつサッシの真ん中に横サンが入った形式のものです。
しかし、家具やカーテンのインテリアを加えた演出が上手だったか、それに惑わされてか買ってしまった人があったというわけです。3200万円という買いやすさが大きかったのかもしれません。
筆者にご相談して来られた人は3200万円の住戸も検討したそうで、希望者が多く買えなかったそうです。ご相談物件は、少し遅れて出て来た1200万円の住戸のことでした。安値に飛びつきかけたものの、あまりにも安いのでかえって心配になったようです。
筆者のレポートの結論は次のようになりました。
「この物件は耐震診断をしていないので、巨大地震が襲来したときの危険度がどのくらいか分かりません。2011年の東日本大震災のときの震度5では何ともなかったわけですが、震度6強が来たとき耐えられる保証はないのです。専門機関の診断を受け、補強工事の必要なしというお墨付きをもらわないと不安です」
「耐震性の問題がなければ1200万円という売り出し価格はなかったでしょうが、仮に1500万円でも、リノベーションは1000万円程度でできますから、合計2500万円なら、間違いなくお買い得と言えます。もしかしたら、これは(自殺者が出たなどの)事故物件ではないのかと思ったほどです」
「事故物件なら業者はその旨を告知するはずなので、事故物件ではないのでしょう。ともあれ、当職の調べでも、そのマンションの価値からみて1200万円~1500万円くらいが妥当のようでした。おそらく、あっと言う間に売れてしまうかもしれません」
(1200万円の住戸は買い手が数人重なったらしく本当に数日で決まってしまいました。筆者に相談下さった人は再び買いそびれてしまったのです)
「ところで、このような価格差はどう見たらいいのでしょうか?蛇足ですが今後のために付記します」
「3200万円の部屋の売主は不動産業者か、リフォーム業者のはずです。個人がリノベーション費用をかけてから売り出すということは考えにくいので。 業者は物件の価値を高めてから売る、つまりリノベーション物件にした方が儲かるので、それを専門にしている業者も最近は増えています。買い手から見れば、リフォームしないですぐに住むことができるメリットがありますが、うっかりすれば実際の価値以上の高値で買ってしまう危険もあるのです。3200万円の部屋を内覧したわけではないので断定はしかねますが、多額の業者利益が乗っていた可能性が高いですね」
●築40年マンションの余命
もし1200万円で購入してリフォーム代を1000万円かけたとしても、合計2200万円ですから、毎月の住宅ローンの返済額は家賃相場よりはるかに安いので、買った方が得だと考える人もあるでしょう。ところで、築40年マンションはあとどのくらい住めるものでしょうか?つまり余命は何年と考えればいいのでしょうか?
仮に20年住んでみて、建物に関する不具合が多数出てきたので買い替えたいと思ったとき、果たして売れるでしょうか?
劣化が進み病気ばかりしているようなマンションでは、借り手もつきにくいでしょう。
20年間、少ない住居費で暮らしてきたので貯金もたくさんできましたと自信たっぷり語れる人なら、20年後に僅かな借り入れで、若しくは全額キャッシュで終の棲家を買うことができるかもしれませんから、古いマンションを破格の安値で買うという選択はあるのかもしれません。
一般的には、住んでいた家が知らず知らずのうちに貯金になっていることを期待して、つまり、売却するときの換金価値の高さを期待してマンションは買うものですが、このような古い、かつ安値のマンションでは期待はできないでしょう。。
仮に住宅ローンの残債が500万円くらいまで減ったとしても、売値が1000万円だったら、売却後の手取りは500万円しかないわけで、その程度では老後の暮らしに役立ちません。500万円でも残ったらいい方で、残債割れの危険もあるでしょう。
40年マンションに30年くらい住んでも、まだ余命はたっぷりある上に、どこも悪くない健康体のマンションであるかどうか、そこが問題です。
●財政状態を点検しましょう
ところで、23区内で1200万円という価格は築40年にしても稀有な安さです。何故これほど安いのでしょうか?取引事例を調べてみると、その部屋だけが安いわけでもないのです。机上の調査では結局分かりませんでした。考えられることは、もともとグレードの高い建物ではなさそうなこと、駅からも徒歩13分と距離があること、交差点に建ち騒音問題がありそうなこと、環境も良いとは言えないこと、買い物便も良くないことなどでした。
修繕積立金は億を超える残高があるということでしたが、1戸あたりにすると潤沢とは言えないレベルでしたし、毎月の積立金も安いほうでした。
ここから推測すると、このマンションは将来起こりえる必須の修繕すらもタイムリーにできないかもしれない、その結果、きっと坂を転げるように劣化が進むかもしれない。そう思いました。
駅にも近くないし、エントランスや外観の雰囲気からも高級マンションからは遠いのは明らかで、仮に賃貸するにしても借り手を探すのに苦労するかもしれない。借り手が決まっても家賃はかなり安いことになりそうだ。そんなふうにも思いました。
●スラム化の方向
以下は、別のご相談者の話です。賃貸中のマンションをどう処分したらいいかというものでした。「郊外のマンションを長年賃貸してきました。高いときに買ったので、売ると損をすると思ったからです。しかし、10年くらい前から設備が故障続きで金銭的な負担も多く、何より手直しや交換などの差配が面倒で、ストレスが溜まる毎日でした。空き家になると、次の借り手が中々決まらないということも何度もありました。しばらくして、賃貸管理を業者に任せたので気苦労は減ったのですが、その代わり家賃の手取りが減りました。そのうち空き家が多いマンションという噂が立ち、ますます借り手がつかなくなりました。年間に空き家になる期間が半年もあるという状態になってしまったのです。ローンがなくなったので、売却をしようと考えました。買い取り業者に打診したところ、400万円なら買ってもいいと返事が来ましたが・・・」
このマンションは管理が悪いのでしょう。日常の管理はともかく、大規模修繕は必要最低限しか実施して来なかった可能性も高いようです。財政状態が良いとは思えないマンションです。
お金がなければ臨時徴収するか、早い段階から毎月の積立金を増額決議するか、どちらかの策を講じれば良いのですが、それが何故かできなかったようです。住人(オーナー)たちに当事者意識が足りなかったのかもしれません。
長く貧乏な暮らしをして来た管理組合なのです。ギリギリの生活をしながら、それでも貯金が増えず、修理を先送りし続けてきたということでしょう。
このようなマンションは劣化のスピードが速く、それが居住性の悪化につながって退去者が増え、さらに管理費や修繕積立金の滞納も増えて行きます。ますます居住性が悪化し空き家が増えるという悪循環を招くでしょう。賃貸している部屋には低所得者が住み着き、管理規約を守らない人も増えます。
もう誰も買ってくれない、借り手もまともな人は来てくれない。ローンの終わった所有者の中には、空き家のまま放置している人すらあります。そのうち、転居先不明のオーナーも出始めます。管理費の振り込みが止まってしまう人も。管理状態が一段と悪くなって荒れ、「先はスラムか?」という心配が現実になりつつあります。
ご相談があったマンションは、いつそんな状態に陥っても不思議ではないのかもしれない、そんな懸念を覚えました。近いうち、現地を見せてもらって助言を差し上げることにしています
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これは非現実的な話ではなく、そう遠くない将来、このような心配をしなければならないマンションが増えて来るのです。まあ、自分には無関係と思った読者もあるでしょうが、これからは新築マンションも築浅の中古も買えなくなるかもしれません。否応なく古いマンションを検討対象にしなければならないかもしれないのす。筆者に届く「物件の評価」依頼は、新築ばかりでは無論ありません。中古も多いのです。中古の中には20年を超え、30年、40年も最近は多くなりました。こうした現象から感じたことを交えて、取り留めなく綴ってしまいました。
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・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました。