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筆者にご依頼くださる「マンション評価レポート」、つい2日前に延べ3000件を突破しました。
そんな中、リノベーション済み中古の評価依頼が非常に目立つ昨今です。今日は、リノベーション物件に関する注意点をお話ししようと思います。
●リノベーション物件の売主は個人でなく業者
リノベーション物件は、ほぼ例外なく個人ではなく業者が売主です。中には大手仲介業者も含まれますが、大半は無名の不動産業者です。リノベーション物件の築年数は30年を超え、中には40年超えもあります。このような、古い物件は中々買い手が付かないので、個人の売主は業者に買い取ってもらう道を選択する場合があります。
買い取り業者から見ると、安く仕入れ、リノベーションを施して販売するわけですが、そのとき信じられないような利潤を加えたと見られる例にたびたび遭遇します。
売主直販なので当然なのですが、仲介手数料が無料であることを強調し、いかにもお得感がありそうに見せる手法で販売に当たっているものも見かけます。
ご承知のようにマンションの仲介業は、手数料を最大で6%余しか受け取ることができません。3%になることも多いのです。
これに対し、リノベーション物件を自社物として販売する場合は、仲介でなく売主としての売り上げ100%と利益20%以上を取ることが可能です。
仕入れ価格3000万円+リフォーム工事代1000万円、販売価格5000万円、利益1000万円という構成も都心では普通に見られます。
ご存知のように、リノベーション物件は1棟丸ごと買い取った物件と、個別(戸別)買い取り物件があります。
後者が圧倒的で、1棟タイプは多くありません。1棟タイプは企業社宅を買い取ったもので、共用部にも手を入れてから販売するタイプです。
後者の個別リノベーション物件は、分譲マンションの区分所有権を買い取って再販するタイプなので、共用部には一切手を加えることはできません。
従って、旧・耐震基準(1981年以前)の古いマンションの場合は、耐震性に疑問を残したままで販売されることになりますが、1棟リノベーション物件はその心配を解消しています。
●個別リノベーション二つの商品タイプ
上記の分類とは別に、リノベーション物件には二つの商品タイプがあるようです。ひとつは、旧・耐震の年代物をスケルトン状態にしてから、個性的な間取りと、お洒落な内装で飾ったタイプのものです。どちらかと言えば派手な造りで、見学者を夢の世界に引き入れ冷静な判断をなくさせてしまうものです。
下手な新築マンションのモデルルームより奇麗でお洒落な演出を施し、初めてマンションを見学する若い世代のカップルを酔わせるには十分です。
「デザインの良さが素敵で気に入りました」というコメントを何度見たことでしょう。
「痘痕も笑窪」と言いますが、まるで魔法にかかったかのように購買意欲が高まり、ふらふらと買ってしまう。そんな姿が筆者には浮かんできます。
筆者に評価依頼を寄せてくださる冷静な人でも、レポートを読むまでは実は酔っていたらしいと分かります。なぜなら、「頭をが~んと殴られた気がしました」とか「ショックでした」、「クールダウンできてよかったです」というメールを下さるからです。
もうひとつのタイプは、比較的新しい、もちろん新耐震の建物で、価格さえ欲張らなければ売れそうな物件でありながら業者が買い取ってリノベーションしたタイプです。
こちらは、リノベーションといっても元の間仕切りはそのままに設備を全て交換し、床と壁も張り替えた「フルリノベーション」ですが、どちらかと言えば地味な内装です。
新築同様にはなっていても、グレード感に乏しい内装です。そのせいか、見学者を酔わせるような効果はないようです。
後者のタイプを数多く扱っている大手業者にヒヤリングしてみると、「少しは安く仕入れができますが、築40年クラスの中古物件ほど安く仕入れるのは無理なので、リノベーション費用も多額に掛けることはできません」という説明でした。
さらに、「ときどきコストを掛け過ぎて高値になって売れず、最後は値引きして売るということもありました。利益が飛んでしまうこともあります。目の肥えた買い手さんには通用しない価格の壁があるのです。ですから、仕入れが難しいのです。急ぎで売らなければならない事情のある持ち主さんや、近所の人に知られないように売ってしまいたい持ち主さんもいるので、売り物は結構見つかりますが、市価の7掛け8掛けでは売ってくれませんから」と答えてくれました。
●本来のリノベーション物件と名前だけのリノベーション物件
リノベーションとは、英語でrenovation と書き、本来の意味は「改革・刷新・改修」。壁紙や床の材料を貼り替える程度の「リフォーム」と区別し、設備の刷新や間仕切り変更を伴う住宅改修のことを意味します。元の中古マンションにはなかった設備を付け加えることで、新しい機能を持つマンションに生まれ変わるということになります。
例えば、食器洗浄乾燥機付きのシステムキッチンや床暖房、暖房便座・洗浄機能付き便器といった、30年以前には普及率が低かった設備を含めて装備し、さらに間仕切りを大きく変えるような工事をリノベーションと定義しているのです。
工事は、一旦スケルトン(骨組み)状態にしてから作りあげる大掛かりなものです。
一方、名前だけのリノベーション物件もありますが、説明の必要がないと思います。
●満足度が高いリノベーション
洋服に例えると、マンションは言うまでもなく既製服です。個性的なマンションもありますが、どこを見ても同じような間取りが多いのが実態です。好みの間取りを見つけても場所が気に入らないとか、場所もいいが、今度は建物全体が貧相で好きになれないなど、なかなか思い通りにはならないものです。そんな葛藤から辿りついた選択が大胆なスケルトンからのリノベーションであるわけです。
マンションですから、排水管(竪管=上下階を貫く配管)の位置によってトイレの位置も変えられないといった制約はあるものの、ある種、注文建築を実践するような楽しみを味わいながらリノベ―ションする人も少なくありません。
制約が様々あってパズルを解くような計画ですが、それも楽しみと言えるようで、その結果でき上がった自宅マンションは満足度100%といったところでしょうか?
また、業者が工事を完了させた「リノベーション物件」も満足度は高いようです。筆者に届くメールにも、次のような感想を添えて来られます。
「マンション全体は古いので、それなりのレトロ感もあるのですが、管理状態は良さそうでした。室内は、すごくお洒落で、色使いも自分の趣味にぴったり。設備も最新のものがついていて、とても気に入りました」
しかし、慎重なご性格の方なのかもしれませんが、どこかに落とし穴はないかと思うのでしょう。「この物件は買っても大丈夫でしょうか?価格は高くありませんか?」などと付記しています。
●リノベーション物件の共通点
筆者が提供する「マンション評価サービス」のご依頼の中に占める、リノベーション物件の割合は少ないものの、結構な数が来るようになりました。それらの物件の共通点は、次のようなものです。
①何しろ古いので、このままでは売れそうにない
・・・天井が低い、梁が出ている、サッシ高が低い、バルコニーが狭いといったレベルの低いマンション。立地条件は悪くない。共用部は仕方ないものの、室内だけでも手を入れれば住める。そう考えたプロは見事に生き返らせて、そのまま住みたいという欲求を起こさせています。
②小規模マンションで、外観はまるでアパートだから内装に凝らないとだめ
・・・40年も前のマンションの中には、「えっ、これが分譲マンションなの」と言いたくなる貧相な外観、小規模でお洒落な印象を受けないものも少なくありません。アパートとの違いは、高さが5階か6階という点と外壁にタイルが張っていたりするくらいで、管理人はいない、エントランスのすぐ横にごみステーションがあったりします。元オーナーは中々売れないので、半ばやけ気味に手放したのでしょう。それでも室内を変身させれば売れると学習した業者もあるようです。
③高級住宅地だが駅から遠いので売りづらい
・・・環境は良い、外観も良い、立地から見て昔は高級マンションだったのだろう。しかし、管理が良くなかったのか、劣化が進み輝きがすっかり薄らいだ。もともと駅から距離のある物件なので、それだけでも売りづらい。ゆえに魅力をプラスしなければ売れない。年配の元オーナーは、ローンも残っていないし、安くても買ってくれる人があれば売りたいと考え、業者を選んだのでしょう。
●高くても値打ちあるリノベーション
耐震補強工事が完了しているマンションにお目にかかることが1年に1件くらいあります。補強工事済みのマンションで、リノベーションまで完了していたら、買い手は安心も得られ、かつ新築マンションと見まがう室内に大きく購買意欲を掻き立てられることでしょう。
そのようなマンションなら、たとえ高くても買い手にとってメリットがあるかもしれません。なぜなら、リフォーム工事の手間が要らないからです。
リフォームプランを自ら立案し、工事業者を選択し、打ち合わせ、見積り検討、プラン見直し、工事契約といった一連の作業は相当のエネルギーを要します。
それが無用というのは、随分楽なものです。価格が高いとしても、「世話無しで良い。すぐ入居可能」は、魅力があるのかもしれません。
●見落してはならない耐震性
1981年6月から施行の「現行・耐震基準」によって建てられたマンションは基本的に安全とされます。それ以前のマンションは「旧・耐震基準」なので安全性に不安が残ります。旧・耐震基準のマンションでも専門機関に診断してもらうと、安全性に問題ないと回答のあるものも存在しますから、旧・耐震基準のマンションは全部が危険というわけではないのですが、「耐震診断」をしてもらわなければ安心はできません。
マンションの耐震診断は管理組合(居住者全体)から発注されるもので、個人ではできないため、耐震診断を実施したかどうかと、結果はどうだったかを調べることが必要です。現実は、耐震診断を行っていない管理組合が旧耐震のマンションの70%もあると言われています(国土交通省調べ)。
つまり、1981年5月以前に着工した古いマンションは耐震性に疑問を残したまま売り出しているわけです。仲介業者、もしくはリノベーション業者に「耐震診断はどうなっていますか?」と尋ねることが重要です。
●価値判断が難しいリノベーション物件
個性的で派手な内装のリノベーション物件にせよ、地味なリノベーション物件にせよ、価格が適正かどうかの判断は難しいもののようです。新築マンションと同等、もしくはそれ以上にお洒落で快適そうなリノベーション物件を見てしまうと、たとえ地味なタイプでも、買った後に自分でリフォームの手配をする必要がないリノベーション物件は世話なしでいいわけですから、商品価値としては、それなりのものです。
しかし、中古相場がよく分からない一般の人は、高いと思わずに買ってしまいがちです。
その点に十分な注意を払うべきなのです。前の方で述べたように、業者利益が不当にONされているものも多いからです。
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