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今日の記事は「そもそも論」かもしれません。
初めてマンションを買おうとしている読者のために書き下ろしてみましたが、買い替えを考えている人に役立つこともあるでしょう。
長くなるので2回に分けてお送りしようと思います。
1)なぜマイホームを買うのか
家は賃貸住宅でもいいではありませんか?そう考える「賃貸派」もいないことはないようですが、そう言っていた人も何年か後には「持家派」に鞍替えしてしまうという例がたくさんあります。その理由は、家賃が勿体ない。どぶに捨てるだけだ。今なら低金利なので、月々の負担額と家賃を天秤にかけると、買った方がずっと得だ。このように思うのです。
それまでは、「マイホームは家に縛り付けられるだけだ。自由な生き方ができない」と考えていたと言います。
確かにそういう一面もありますね。いざというとき売るに売れない。隣人が気に入らないと言っても直ちに越すこともできない。行きたい学校に子供をやれない、といったデメリットがあるでしょう。
しかし、デメリットを上回るメリットがマイホーム購入にはある、そう考える人が8割はいると言われています。
自分の家だから、壁紙を貼りかえるのも自由、古くなったキッチンを最新式に交換するのも可能、洋室を和室にしたり、2室を1室にしたりしてゆったり暮らすもよしです。
賃貸マンションは採算優先で建てたものが多いので、隣室の生活音はよく聞こえるし、設備も最低レベル。設備がよく騒音も気にならない分譲マンションの方が快適です。分譲賃貸というレベルの高い分譲マンションも無論ありますが、家賃が高過ぎるのです。
男なら家を持つのは当たり前。いつまでも賃貸マンション暮らしでは世間は半人前にしか見てくれない。
何より、老後の安心を得るために、毎月の家賃負担だけはなくしておきたいと思う人も多いはずです。
住宅ローンを利用してマイホームを手に入れ、そのローンがまだ完済できていないとき、自分に万一のことがあっても、家族に無借金のマイホームを残してあげることができる。住宅ローンは生命保険付きだから。
2)なぜ独身女性がマンションを買うのか
マンションを買う人はファミリーだけとは限りません。独身男女もマンションを買っています。その事実を知っている人でも、男子が買うのは分かるが女子は何故か分からないと言います。そう思う人は古い常識のようなものが残っている人かもしれません。自分の両親の姿を見て得た常識でしょうか?
筆者もそうでしたが、男たる者は家族のために家を用意するのは当然、予算の関係で、職場の近くが無理なら通勤の犠牲を払っても家を求めるべきだ、そう考える男子は今も大勢います。だから、結婚予定はまだないが、そのときに備えてマンションを買っておこうと考えても不思議はありません。
しかし、女性は昔の従属的な考え方なら家を買うなんて浮かばないものです。なのに、最近の女性はなぜマイホームを求めるのでしょう。確かに、不思議です。
結婚相手を探すのにマンション保有が必須とも思えません。むしろ、できすぎた女と思われて逆効果ではないかとも思えます。
ある女性は言いました。もはや男性を頼って生きて行く時代ではありません。結婚したくないわけではないけど、女子も老後のことを単独で考えておくべきではないかしら。もし出会いがあって男性の用意した家に移り住むことになっても、買った家は賃貸にすればいいいのだしと。
別の女性は、「勤務先の用意した独身寮から脱出したかったのです。はじめは賃貸と思いましたが、不動産屋さんが買った方がとくと教えてくれたので購入を選びました」と語ってくれました。
「老後のために資産形成をしたい」と考えましたが、プロの投資家のような真似は怖いので、住んで満足のマイホームが老後の資産として残ってくれれば一石二鳥と思って、少しコンパクトですが、住宅ローンも無理できない年でもあるので、都心に50㎡くらいのマンションを買おうと思います・・・このような女性にもお目にかかりました。
3)なぜマイホーム以外のマンションを買う人がいるのか
みなさんの周囲に、自宅以外にマンションを持っているという先輩・上司がいると思います。彼らは、なぜそうしているのでしょうか?そう、投資目的であることは確かです。定年後の資産形成という目的ですね。ローンが多額に残っているうちは正味の資産はないも同然ですが、いつかローンがなくなれば資産になるわけです。短いローンが組めればスタート時期はいつでもいいですが、毎月の負担を最小限に抑えつつ買うべきとするならスタートを切るのは早い方がいいわけです。
平たく言えば、ローンが完済できた瞬間から家賃という収益がそっくり手許に残ります。つまり、いつか自宅以外のマンションは打ち出の小槌に化けるのです。
そんな夢を抱きつつ2軒目のマンションを持つのです。選ぶマンションによっては、打ち出の小槌どころか、重たい足かせになることも知らずに買う人もいるので注意が必要ですが、このニーズが膨らんでいるのは事実です。
4)なぜ東京の家賃は高いのか
家賃の多寡は、需要と供給の関係で決まります。高い家賃を嫌って、安アパートを選ぶ人が多ければ、家主は仕方なく家賃を下げるでしょうが、高くても高級マンション住みたい人も多いのが現実です。人間には上昇志向があるので、現代の生活水準では高い家賃も支払いに抵抗はないのでしょう。都心より郊外が安く、駅前より駅10分の家が安いのも、すべて需要と供給の関係です。
東京には、仕事を求めて人口が集まるので、住宅需要が基本的に旺盛です。だから家賃が高いのです。
もし、高い家賃を勤務先が一切補助せずに個人任せにしたら、負担できなくて郊外に逃げたり駅から距離のある安い住宅を探したりする人が増え、便利なマンションでも借り手が減って家賃は下がることでしょう。
しかし、現実には企業は優秀な人材を手放したくないので、家賃補助を中々止めようとしません。
東京には、種々さまざまな仕事があり、得体のしれない人がたくさんいます。賃金・所得の高い職業・職種があり、かつ遠くでは困るという人も多数あります。
会社の家賃補助がないという人でも、最近は正規職員どうしのカップルも増えています。家賃が下がる見通しはないと言えるかもしれません。
5)なぜ家があり余っているのに作り続けているのか
世帯数を大きく上回る住宅があると分かってから長い時間が経っています。その結果、住宅着工件数は随分減りました。過去一番多かった1980年代は年間180万戸も着工戸数がありましたが、最近はその時の半分です。
統計に出る住宅の種類は、持ち家(一戸建て)と分譲住宅(マンションと建売住宅)、給与住宅(官舎・社宅)、そして賃貸住宅ですが、賃貸にせよ非賃貸にせよ数だけは十分あるのです。中でも、賃貸住宅(アパート・賃貸マンション)は作り過ぎという声も聞こえます。
ともあれ、古い家から新しい家に移りたいというニーズがありますし、日本国民には新築を好む文化が根付いているためもあるのです。古い家を改造して住むのが当たり前の欧米とは考え方が基本的に違います。しかし、そうなると古い家はいつか誰も住まないことになって放置される運命にあると言えます。
6)なぜ一戸建てでなくマンションなのか
一戸建てにはマンションにない利点・長所があります。それでもマンションが良いとするのはどんな点にあるのでしょうか。同じ予算で選べる一戸建てとマンションの差という見方が前提になりますが、たとえば以下のような違いがあると考えられます。
*一戸建ては駅から遠いがマンションは近い
*一戸建ては3階までの上り下りを要するが、マンションはフラット住宅である
*一戸建てに眺望価値はほぼないが、マンションには眺望価値の高いものが多い
*一戸建てでは得られない留守中の荷物の受け取りなどがマンションでは可能
*一戸建ての防犯よりマンションの防犯システムは高い。玄関の鍵一か所だけで外出ができる。
*一戸建ては火事が怖いが、マンションなら延焼も類焼もない
*一戸建てにはない共用施設がマンションには多数あってシェアできる便利さがある(雨の日に子供を安全に遊ばせられるスペース・来客と気兼ねなく会話や打ち合わせをするミーティングルームやラウンジなど)
7)なぜマンションの価格は上がるのか
建物が老朽化すれば価格が安くなって当然ですが、なぜ古いマンションが新築購入時より高くなることがあるのでしょうか?中古マンションをオークションにかける。そのイメージを浮かべてみましょう。出品者があり、買いたい人が手を挙げます。すると、もっと高い値で買いたい人が現われます。そうして最後の買い手が付けた値が落札価格となり、品は売り手から買い手に渡ります。
中古マンションの価格もこれと同じで、売りたい人があって、買いたい人が大勢いれば価格は競りあがるのです。つまり、需要と供給の関係で価格は落ち着くべきところに落ち着きます。
そのマンションがいくらで手に入れたものかは全く無関係です。たとえ、昔1000万円で買ったものでも、1億円で買いたい人があれば1億円になるのです。
よく地価が上がるからだと答える人がいますが、それも間接的な原因ですが的確な答えではありません。
新築マンションの価格が中古マンションに影響を与える側面が大きいのです。ある駅の徒歩5分の似たような環境のマンションが1億円としたとき、同じ広さの中古マンションを2000万円で売り出したら、たちまち買い手が殺到することでしょう。古くても5分の1はいかにも安過ぎると判断するからです。
それでは2分の1の5000万円に値札を付け替えたとしましょう。そうしたら買い手は大幅に減りますが、それでも買いたい人が複数残りました。
売主は強気になって、価格を6000万円にしました。途端に買い手はゼロになりました。妥当な価格はいくらだったのでしょう。まあ、多分5500万円だったら売買は成立したでしょうね。
中古マンションの価格を判定する買い手は、新築価格を横目で見ているのです。
中には、新築が1億円というとき1億5000万円の値が付く中古もあります。その新築より、こちらの中古の方が50%積み増ししてもいいと判断する買い手があるということです。
新築より価値あると判断した理由は、建物の豪華さやスケール感、格調の高さ、植栽の豊かさ、管理サービスの充実ぶりなどが群を抜いているほか、借景がすばらしいといった格別な条件が備わっているからでしょう。
大体において、そのような優れたマンションは分譲価格もそれなりに高かったはずですが、何年か経て新築相場が地価上昇(用地費の高騰)と建築物価の上昇(建築費の高騰)によって上がったときは、高かったマンションも振り返ってみると安かったということになるものです。つまり、高く分譲されたマンションでも中古市場では購入時より高く売れるということが実現するのです。
8)なぜマンションの価格は下がるのか
新築相場が上がって、中古相場も上がるのは確かですが、マンションは個別要因が強く影響します。あるものは、100で買って何年か先に120で売れ、あるものは同時期に80で買ったのに60でしか売れないといったことがあります。
もうお分かりのように、需要が多いエリアは前者、需要の少ないエリアでは後者の現象が起こります。
同じエリアで、Aマンションを100で買ったら売るとき120になったが、Bマンションを80で買ったのに、60でしか売れなかったということが起こるのですが、その原因は価値あるマンションに需要が殺到し、安く売られた価値の低いマンションは中古になったときも不人気で結果的に安くなってしまったのです。
同じ年数の経過で、同じような管理をしたとしても、一律で上下するわけではありません。平均が10%上昇でも、その構成物件をひとつずつ比較すると価値に差があって、10%上がるものもあれば逆に10%下がるものもあるのです。
非常に良い物件があって、中古市場では高く評価され、周辺の物件の20%高といった高値に驚く優ことがあります。ところが、そのマンションは購入価格と比較すると実は値下がりしているというのです。
理由解明は簡単です。分譲価格が高過ぎたのです。新築価格というものは、中古のように需要との関係で決まるものではなく、売り手の一方的な押し付け価格だからです。筆者なりの表現では「メーカー希望小売価格」なのです。高ければ売れ残るはずですが、新築マンションは中古と違って販売促進に大掛かりな策を講じるので高くとも何とか時間をかければ売れてしまうのです。
高いなと感じつつもそれを受け入れてしまう買い手も多く、結果的に期待は裏切られるのです。
9)なぜ建築費は上がったのか
新築マンションの価格構成要素は大きく分けると用地費+建築費+利益となっています。この中で一番大きいのは都心なら用地費ですが、郊外は逆に建築費です。利益は粗利ベースで20%(そこから広告費その他の販売経費を引いた残りが利益)となります。マンション業者の利益率はたかが知れています。
その建築費が2013年以降上がって、マンション価格の高騰につながったとされます。なぜ建築費は上がったのでしょうか? その答えは、東日本大震災とアベノミクスにあるのです。
東日本大震災はいうまでもなく、未曽有の被害をもたらしたため、その復旧・復興工事に建設会社が多数駆り出されました。震災は2011年ですが、第2次安倍政権は2012年に誕生し、アベノミクスを公約に掲げました。
ご存知、アベノミクスは3本の矢と言っていますが、その2本柱である金融再策と公共工事(国土強靭化政策)は、ゆるやかながら今日の景気拡大をもたらしました。
経済を政策の根幹に掲げる安倍政権は、ゼネコン優遇策を採っているとも言えるのですが、東日本大震災の工事と重なりました。その後も、熊本地震や九州豪雨などが起こったので、ゼネコンは大忙しになりました。
建設業は人手が肝心です。建築資材の価格上昇などは影響が少なく、建築費の45%を占めると言われる人件費の高騰が犯人です。仕事が増えて人手が足りなくなり、全国から経験者を集めるために賃金を上げざるを得なくなったのです。
その後、東京オリンピックも決定しました。都心の再開発、リニア新幹線とその関連工事などもあって繁忙を極めるゼネコンです。
10)なぜ地価は上昇するのか
マンションの原価に占める用地費の比重も大きく、建築費の上昇で始まった価格高騰は、その後用地の仕入れ価格上昇(地価高騰)が拍車をかけたようです。地価はなぜ上がるのでしょう。中古マンションの価格は需要と供給の関係にあると述べましたが、地価も同じです。土地を買って、そこで何か事業をやりたいという需要が多ければ、その土地は高くなりますし、誰も買ってくれない土地は値下がりする、若しくは値が付かないことになりましょう。
高度経済成長時代のある時期、工場を建てたい企業が多かったので工業用地は値上がりしました。今は、そんな需要はなく、工業団地として自治体が造成した土地は今も多くが売れ残っています。
最近多い需要は、ネット通販の急拡大で伸びている物流施設です。また、訪日客の増加を見込んで増えているのがホテルです。都心ではビジネスの国際化、外国企業の日本進出を当て込んで近代的なビル建設需要も旺盛です。
こうした需要が特定地域に集中し、その地域の地価を押し上げています。
マンション用地も都心に近いエリアで探しますが、他の用途、中でもホテルと競合になり、入札価格を思い切って高く設定しないと買えない状況にあると聞きます。
郊外の住宅地は、駅前を除くとビジネス用地と競争になることはないので、マンション業者どうしの競争になりますが、マンション適地はそもそも少ないので、結局競り上がるのです。
11)なぜ完成から何年も経ったマンションが存在するのか
一部の業者の物件で長く売れ残っているものがあります。長いものでは10年を超えるものもあります。普通は、売れなければ値下げして早期の完売を図るものですが、当該マンションに関しては販売促進の情熱はないようです。売れなくてもいいのでしょうか?マンション分譲を商売としてやっている以上、売れなければ困るはずです。
ある大手業者は、売れないというのは商品企画の失敗か、価格が高過ぎるかのどちらかである。もし、後者なら安くしても売り切りなさい。もしくは、高くても価値があると買ってくれた人がいるという事実がそれまでにあるのだから、同様の買い手を探しなさい。
そのための広告宣伝費が足りないのなら予算を増やしてもいい・・・このように語り、ありとあらゆる策を講じて建物が完成するまでには完売させることを常に念頭に置いているのです。
売れ残りに平気でいられる業者の神経は筆者には理解できませんが、今は金利も低いので、仮に資金が不足しても負担は小さいのでしょうし、値引きするよりは定価販売の方が、多少の経費と時間がかかっても儲かるからと聞いたことがあります。
12)なぜマンションは未完成のうちから販売するのか
早く完売させ、入居開始もできるだけ足並みをそろえたいのです。たとえ一人でも入居者がいればエレベーターを動かす必要がありますし、管理人も早く勤務に就かせる必要があります。建物完成と同時に一斉に入居してもらい、管理費もいただいて電気代、清掃費、管理人人件費その他の費用に充てたいですね。
そのためには竣工時期の何か月か前から販売を開始することが必須です。マンションはデパートに行って、その日のうちに買って品物を受け取るような安易な買い物ではありませんから、検討時間も長くなります。戸数との関係もあって、逆算式に販売開始はいつからが望ましいかを業者なりに計画するのです。
また、建物が完成すると施工業者に代金を支払う必要があります。その資金は、マンション購入者の住宅ローン部分(手付金以外の残代金)を当て込みたいのが本音です。
一時的に借入金で賄う業者もありますが、できたら自己資金からキャッシュで払ってしまいたいのです。そのためには、少なくとも7割くらい買い手が決まっていて住宅ローンの手続き中という状況を作りたいのです。
中小の売主の中には、現金が万一揃わないと危険だからと3か月~6か月の手形払い契約をゼネコンと交わす例もありますが、その条件はゼネコンにとって歓迎できないので、契約先が絞られてしまうとか、ネゴシエーションがしにくいとかの弊害があるので、少なくとも大手は現金払いにします。
そのためにも竣工完売の目処を早くつけたいのです。竣工してから半年も経っているマンションが値引きに割あい簡単に応じるのは以上のような理由・背景があるのです。
・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次回は以下のような項目を予定しています。
◆なぜ新築マンションは分割販売という方法を採るのか
◆なぜ完成してから販売するマンションがあるのか
◆なぜ地下室マンションが誕生するのか
◆なぜ新築ばかりが好まれるのか
◆なぜサラリーマンが1億円のマンションを買えてしまうのか
◆なぜ北向きマンションが売れるのか
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◆なぜタワーマンションが高く売れるのか
◆なぜ大規模マンションが小規模マンションより高く売れるのか
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◆なぜタワーマンションは管理費や修繕積立金が高いのか
◆なぜタワーマンションは人気があるのか
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◆なぜマンションの建て替えは難しいのか
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◆なぜ築40年のマンションが売買できるのか